大学受験を失敗して、浪人生活を送っていた頃の僕。
戦後日本の価値観を支配していた、いい大学に行き、いい会社に就職し、いいボーナスをもらう。そこそこの家柄の奥さんと結婚する。それが人生の目的だと教えられていたあの頃。
６０年代JAZZ界に、ジョン・コルトレーンの歴史的コンボを劇的に鼓舞し続けたエルビンの来日ドラム・ワークショップがあった。
パンフのコメントにあったように、エルビンのドラムはなぜか｢大自然」を想起させるダイナミズムをもっている。
そしてあの人なつこい笑顔。舌足らずに少しどもりながらしゃべる癖。
そして大阪で久しぶりに彼のワークショップが開かれた。あれから２０年以上たつが、エルビンは全然変わらない。
ダイナミックなドラム。あの人なつこい笑顔。
エルビンが大好きで、そのシンバルレガート一つ一つですら、乾いた人が喉に流し込む一滴の水のように、大事に聞き込んでいた。
エルビンが関西に来るときにはかならずライブに行き、彼が出没しそうなところには、わずかな情報をたよりに夜の大阪を探しまわったものだ。
間違いだらけの英語で書いた手紙を握り締め、ライブ後のエルビンに個人レッスンを申し込んだりした。
あのときのエルビン。おかしかった。
僕が名前の綴りを間違って書いて渡したので「U・MA・GA・KI・SA〜N!!」(俺は馬ガキじゃな〜い！）とこっちの手が壊れそうな力で握手してくる。
僕の母の作った和紙ダンスをプレゼントする。喜んでくれた。
僕の書いた楽譜をチェックしてくれるので、シャーペンを渡すと、芯をボキ！と折ってしまう。
また芯を出して渡すとまたボキ！出して渡すとまたボキ！
このおっさん。字を書いたことナインか？と思えるほど、エルビンはまるで子供のようだった。
日本人奥さんのケイコさんが、エルビンはドラムは人間国宝だけど、中身は３歳児だ(笑）と言っていたことを思い出した。(笑）
彼のセットはそれに反してまったく広大だった。座ってみると椅子が高い。手足の長さを駆使して叩くので、楽器があっちとこっちに離れているといった感じ。ここで彼の唯一無比のドラミングが展開されるのだ。。
あるファンがエルビンに質問した。
「エルビン、ドラムをしてこられた中でどんな苦労がありましたか？」
それにエルビンではなく、通訳していたケイコさんが答えた。「エルビンには、ミスターとつけてください。尊敬をこめて。そして黒人が差別を受けるアメリカの社会で彼がどんな苦労をしてきたかなんて、聞かないでください。・・・それは当たり前のことです、苦労するなんて。言葉で説明できることではないんです。・・・」
エルビンは何も言わず、ただニコニコ笑顔だった。でも彼も分かっていた。質問の内容を。
一緒に苦楽を共にしてきたケイコさんに対する配慮もあったのだろう。彼がドラッグとアルコールの魔力に苦しんでいた頃、彼を献身的に支えたのはケイコさんだったから。
(お金がなかったから、ケイコさんはドラムセットを地下鉄で運んで、ライブハウスにセットし、チューニングまでしていた。そしてボロボロのエルビンを迎えに行ってた。・・・と某スイング○○に書いてあった。）
そんな人生をかいくぐってきた、彼の目つきにはある高みに到達した風格と自信がにじみ出ているような鋭さがあった。
あのエルビン。誰からも愛され、尊敬されたエルビンが昨年急遽した。
数ヶ月前までステージに立っていた。誰も亡くなるなんて考えもしなかった。
もうあの大自然を思い起こさせるダイナミックな唯一無比のドラミングは聞けない。
彼は日本を愛し、日本に愛と平和のメッセージを発信するJAZZ学校をつくりたいとも 考えていた。・・・
２年前の大阪のWS会場。彼の前にはサインを求める多くのファンが並んでいた。でも僕はそこに行かなかった。なぜだろう？
なにか僕の中でエルビンは特別なんだ。僕は彼にとって単なる一ファンでありたくないという気持ちがどこかにあったのだ。
それが彼との最後だった。
エルビンはこれからも後世のドラマーに多大な影響を与え続けるだろう。
そしてエルビンと出逢った僕の人生も、いい学校、いい会社、そして結婚というお決まりのコースはたどらなかったけど。・・・彼は自分が愛した人々の間に、あの笑顔と、舌足らずなかわいさ。手の壊れる握手。と共に思い出に残り続けるんだろうなぁ。・・・
戦後日本の価値観を支配していた、いい大学に行き、いい会社に就職し、いいボーナスをもらう。そこそこの家柄の奥さんと結婚する。それが人生の目的だと教えられていたあの頃。
６０年代JAZZ界に、ジョン・コルトレーンの歴史的コンボを劇的に鼓舞し続けたエルビンの来日ドラム・ワークショップがあった。
パンフのコメントにあったように、エルビンのドラムはなぜか｢大自然」を想起させるダイナミズムをもっている。
そしてあの人なつこい笑顔。舌足らずに少しどもりながらしゃべる癖。
そして大阪で久しぶりに彼のワークショップが開かれた。あれから２０年以上たつが、エルビンは全然変わらない。
ダイナミックなドラム。あの人なつこい笑顔。
エルビンが大好きで、そのシンバルレガート一つ一つですら、乾いた人が喉に流し込む一滴の水のように、大事に聞き込んでいた。
エルビンが関西に来るときにはかならずライブに行き、彼が出没しそうなところには、わずかな情報をたよりに夜の大阪を探しまわったものだ。
間違いだらけの英語で書いた手紙を握り締め、ライブ後のエルビンに個人レッスンを申し込んだりした。
あのときのエルビン。おかしかった。
僕が名前の綴りを間違って書いて渡したので「U・MA・GA・KI・SA〜N!!」(俺は馬ガキじゃな〜い！）とこっちの手が壊れそうな力で握手してくる。
僕の母の作った和紙ダンスをプレゼントする。喜んでくれた。
僕の書いた楽譜をチェックしてくれるので、シャーペンを渡すと、芯をボキ！と折ってしまう。
また芯を出して渡すとまたボキ！出して渡すとまたボキ！
このおっさん。字を書いたことナインか？と思えるほど、エルビンはまるで子供のようだった。
日本人奥さんのケイコさんが、エルビンはドラムは人間国宝だけど、中身は３歳児だ(笑）と言っていたことを思い出した。(笑）
彼のセットはそれに反してまったく広大だった。座ってみると椅子が高い。手足の長さを駆使して叩くので、楽器があっちとこっちに離れているといった感じ。ここで彼の唯一無比のドラミングが展開されるのだ。。
あるファンがエルビンに質問した。
「エルビン、ドラムをしてこられた中でどんな苦労がありましたか？」
それにエルビンではなく、通訳していたケイコさんが答えた。「エルビンには、ミスターとつけてください。尊敬をこめて。そして黒人が差別を受けるアメリカの社会で彼がどんな苦労をしてきたかなんて、聞かないでください。・・・それは当たり前のことです、苦労するなんて。言葉で説明できることではないんです。・・・」
エルビンは何も言わず、ただニコニコ笑顔だった。でも彼も分かっていた。質問の内容を。
一緒に苦楽を共にしてきたケイコさんに対する配慮もあったのだろう。彼がドラッグとアルコールの魔力に苦しんでいた頃、彼を献身的に支えたのはケイコさんだったから。
(お金がなかったから、ケイコさんはドラムセットを地下鉄で運んで、ライブハウスにセットし、チューニングまでしていた。そしてボロボロのエルビンを迎えに行ってた。・・・と某スイング○○に書いてあった。）
そんな人生をかいくぐってきた、彼の目つきにはある高みに到達した風格と自信がにじみ出ているような鋭さがあった。
あのエルビン。誰からも愛され、尊敬されたエルビンが昨年急遽した。
数ヶ月前までステージに立っていた。誰も亡くなるなんて考えもしなかった。
もうあの大自然を思い起こさせるダイナミックな唯一無比のドラミングは聞けない。
彼は日本を愛し、日本に愛と平和のメッセージを発信するJAZZ学校をつくりたいとも 考えていた。・・・
２年前の大阪のWS会場。彼の前にはサインを求める多くのファンが並んでいた。でも僕はそこに行かなかった。なぜだろう？
なにか僕の中でエルビンは特別なんだ。僕は彼にとって単なる一ファンでありたくないという気持ちがどこかにあったのだ。
それが彼との最後だった。
エルビンはこれからも後世のドラマーに多大な影響を与え続けるだろう。
そしてエルビンと出逢った僕の人生も、いい学校、いい会社、そして結婚というお決まりのコースはたどらなかったけど。・・・彼は自分が愛した人々の間に、あの笑顔と、舌足らずなかわいさ。手の壊れる握手。と共に思い出に残り続けるんだろうなぁ。・・・
|
|
|
|
コメント(21)
数年前に知り合いの楽器メーカーの方がエルビンと仲がよいとの事で、その関係から、渋谷の某楽器店で開催されましたセミナーに出させていただきました。
ピアノのエリックルイスさんとデュオで色々なプレイをして解説していただきました。
私はドラマーではないので、詳しい事はわかりませんが、彼のドラムが、一音一音、生き物の様に立体的に鳴っているのにシビレました。
当時彼は７０過ぎだったのですが、握手した時の握力にもビックリしました。スポーツ選手の様にガシっという感じでした。。。
２人共とてもフレンドリーで、セミナー後にはエリックルイスさんに個人的にピアノの技の伝授までしていただき、本当に有意義な一日でした。
今でも二人に書いていただいた譜面等は、たまに見ては、復習？しております。
ピアノのエリックルイスさんとデュオで色々なプレイをして解説していただきました。
私はドラマーではないので、詳しい事はわかりませんが、彼のドラムが、一音一音、生き物の様に立体的に鳴っているのにシビレました。
当時彼は７０過ぎだったのですが、握手した時の握力にもビックリしました。スポーツ選手の様にガシっという感じでした。。。
２人共とてもフレンドリーで、セミナー後にはエリックルイスさんに個人的にピアノの技の伝授までしていただき、本当に有意義な一日でした。
今でも二人に書いていただいた譜面等は、たまに見ては、復習？しております。
１９８４年のことです。
ライブの後、僕がドラマーであることを告げて
Mr,Elvinにメッセージをもらいました。
instrument be truth. always sinjitsu（真実）
try to be honest , do it yourself. is a Japanese man.
play also explain your soul.
that 's all right !
ケイコ夫人 の注釈
ドラムを叩く前に、あなたに日本人の男であってほしい。
とても多くの日本人がアメリカに来て、アメリカナイズされてしまう。
エルビンはそれをとても嫌がるのです。
あとは心を込めて楽器を演奏するようにと。
嬉しくて、泣きながら家まで帰りました。
ライブの後、僕がドラマーであることを告げて
Mr,Elvinにメッセージをもらいました。
instrument be truth. always sinjitsu（真実）
try to be honest , do it yourself. is a Japanese man.
play also explain your soul.
that 's all right !
ケイコ夫人 の注釈
ドラムを叩く前に、あなたに日本人の男であってほしい。
とても多くの日本人がアメリカに来て、アメリカナイズされてしまう。
エルビンはそれをとても嫌がるのです。
あとは心を込めて楽器を演奏するようにと。
嬉しくて、泣きながら家まで帰りました。
１５年位前の事ですが、白昼、名古屋市内の路上で、大柄な黒人男性と日本人女性のヒジョーに仲の良さそうなカップルとすれ違いました。その瞬間、『国際化社会だね〜、、』などと、のんきに思って通りすぎて、10秒位経過した後、『ありゃ〜エルヴィンさんじゃにゃ〜かね〜！？？』ということになって、しばし尾行したところ、どー見てもエルヴィン夫妻にまちぎゃ〜ない（間違いない）と判断し、失礼乍声を掛けさせていただいたところ、まさにエルヴィンさんでした。
エルヴィンさんもケイコさんも、この不躾な僕に対して、暖かく、優しく接してくださいました。 すっかり興奮しながらも、自分がエルヴィンさんの大ファンであることや、その熱い想いを伝えました。
みなさんのカキコミもありますように、エルヴィンさんの手は、とても大きく、力強く、あたたかい、あの握手の感触は今でも忘れられません。
エルヴィンさんもケイコさんも、この不躾な僕に対して、暖かく、優しく接してくださいました。 すっかり興奮しながらも、自分がエルヴィンさんの大ファンであることや、その熱い想いを伝えました。
みなさんのカキコミもありますように、エルヴィンさんの手は、とても大きく、力強く、あたたかい、あの握手の感触は今でも忘れられません。
- mixiユーザー
- ログインしてコメントしよう！
|
|
|
|
Elvin Jones 更新情報
-
最新のアンケート
-
まだ何もありません
-
