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小説 「おろし」コミュの●鈎針婆の章 おろし!! #63 指示

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「もしかして、ここに痢煙さんが来ている可能性もある・・」

空怪は、バイクの後ろに差してあった鉄の杖を抜いた。

この鉄の杖は、伸縮自在の杖で、空怪の武器の一つである。

その杖に取り付けられた三つの鉄の輪が、シャン・・と鳴った。

「さあ行きましょう、アント。」

空怪が、まず、ゆっくりと階段に近づく。

アントは、何も言わず空怪の後に付いていく。


プルルルル・・・


「ア、電話デース。ミーノ携帯鳴ッテマース。」

ガチャ

「もしもし、アント?黒死よ。あのね、今フェスゲの前にいるよね?」

「ア、ハイ・・エ?」

「ふふふ、見えてるのよ、あなたたち。それよりも貴方は、横の"世界の温泉"に向かってちょうだい。」

「エエ?プリーズ、チョット待ッテクダサーイ。
・・空怪、ミス黒死カラ電話デ、世界ノ温泉?ニダッテ。」

「黒死殿がか?世界の温泉?痢煙さんがそこに?」

「ハニ・・イエ、ミス痢煙ハ、世界ノ温泉ニ居ルノデスカ?」

「え?痢煙さん?いない、いない。違うのよ。痢煙さんの事は気にしなくていいから。」

「エエ!! Why?」

「痢煙さんは、大丈夫だから、それよりも仕事、仕事。久しぶりに大儲け出来るわよ!
貴方にだって、たんまり報酬あげられるわよ!だから頑張りなさい。」

「デモ・・ミー、ダメナンデース。全然、自信ナインデース・・」

「あーら、どうしたの、落ち込んじゃって。貴方らしくないわね。」

「ダッテ、ミー、赤神ニモ、空怪ニモ、勝テマセンデシタ。Todayノ決闘・・グスン。」

「あはは、何言ってるのもう。そんなの今度勝てばいいじゃない。
ふふふ、今夜は、そんな事どうでもよくなるわよ。」

「・・本当デスカ?」

「ええ、本当よ。ほら、見なさい。貴方のすぐそばにある看板を」

「ハイ・・見マシタ。」

「なんて書いてる?」

「セ、カ、イ、ノ・・・」

「そう、あなたは、今夜、"世界の救世主"になるわよ!」

「エエエ!!ミー、ミーガデスカ!!」

「今夜の任務は、"世界の温泉"に宿泊している人たちを救うこと。
そして、ここが重要、間違えてはいけないわ!良く聞きなさい!」

「ハイ・・」

「浦尾(うらお)市長の娘さんを探し出し、彼女を優先して守る事!
少しでも怪我、最悪、死亡なんてさせたら、報酬は、無いからね!」

「ハイ・・」

「じゃあ、早く行って救いなさい。」

「・・・ミー、世界ノ救世主ニナルーッ!!イエッサー!!」

アントは、銃を2丁とも抜き、
フェスティバルゲートに隣接する"世界の温泉"の中へ走って行った。

空怪は、ひとりポツンと階段の前に立ち、

「よくわからん・・」

と、言った。



「やれやれだわ。」
黒死は、携帯を折りたたみ、カップに紅茶を注いだ。

「ふふ、あの子、白桃の弟子だったわよね。ふふふ、これからね。」
緋威露は、そう言いながら、ノートをチェックする。

「だといいんですけどね。」
黒死は、苦笑いをし、紅茶を飲んだ。

「しかしまあ、浦尾市長のあの慌てようねえ。
俺の娘が"世界の温泉"に居るんだあ!助けてくれ!娘を助けてくれたら、報酬はいくらでも〜っ
て言うから、わたし、500万って思わず言っちゃったけど、それで良かった黒死さん?」

緋威露は、ノートを置き、バスケットに手を伸ばし、バターロールを2個ほど取った。
黒死が趣味で経営する "BELLY's Cafe" 自家製のパンだ。
バスケットには、まだ、たくさんのパンが入っている。

ティーセットといい、パンといい、これを通天閣の頂上に、
わざわざ持って来る黒死のパン好きには、"さすが"としか言いようがない。

「ええ。娘さんを助けて500万、市長のメンツで、なるべく宿泊者全員助けて300万。
合計800万でしたら、浦尾市長も、出せる金額でしょうしね。」

紅茶を、くるくると、スプーンでかき混ぜながら、夜景を楽しむ黒死。

「ふふふ、あなたも美味しい仕事してるわねえ。」
緋威露は、パンを黒死に見せ、ニヤリと笑った。

「仲介料だけで、100万取る、緋威露さんには、お見それしますよ。」
黒死は、ペロリとスプーンを舐めて、緋威露の顔を見た。

「ふふふ、さて、うちのバカ息子は、どうしてるかね・・と。」
緋威露は、すっと腰をあげ、双眼鏡を覗いた。



バキバキ!!
ドガッ!

『赤神様っ!』

「葛遊っ!掴まっておけ」

シュバッ!

ドゴッ!!

『凄い!かっこいい!!パンチ、パンチ!キャッ』

ゴキ!!

ドゴ!



「ん?あのバカ、刀持って来てないじゃない!!ずっと素手で殴ってるわ!!」

「ええ!?・・まあ・・本当ですね。」

「前からあのバカ、まず化け物は、ボコボコにしてから斬るという変な趣味、信念?
持ってたのは知ってるけど・・本当にバカになったのかしら?
刀を持たずに、やり合うなんて、変態だわ。」

「ん?あれれ?」
黒死は、緋威露の方を見て・・

「緋威露さん、たしか、丞の刀って、緋威露さんの刀を貸してあげてたんでしたよね?」

「ええ、そうよ。あの子、自分の刀持ってないわ。昔に、折れてからずっと。
買いなさいと言ってるんだけど、あれはデザインが悪いとか、あれは、切れ味が良くないとか、
つべこべ言ってなかなか買わないから仕方なくね・・うわ、痛そう!今のパンチ・・・
だからね、私の内刀を貸してたのよ。」

黒死は、緋威露の横に立て掛けてある黒い刀を見て、指を差した。

「緋威露さん・・それ」

緋威露は、自分の横に立て掛けてある刀を見て、
「ああ、この刀?私の刀よ。さっき、ここに登る時使ったじゃない?
通天閣登るのに、刀が必要だから、あの子らの家に寄って来たの。
そしたら、私の刀が、三方の上に、ごたいそうに置いてあったので、ダンナア、分かってるう!
と思って、そのまま持って来ちゃった。オホホホ。」

「そ・・それ・って・・」

「黒死さん? 私、間違っておりますか?私、間違った事しましたか?」

「い・・いえ・・」

「でしょう?・・ん、でも、仕方ない!母親らしい所、見せてやるか!」

「あ、今から、刀返しに?」

「黒死さん。刀返したら、ここにどうやって登るのですか?
それに、この刀は、わたしの刀ですよ。それよりも、良い方法があります。」

「え?」

「買います。」



ドゴーン!!

「ど、どうなってるんだ!?」
空怪は、階段を登りきった所で、立ち止まった。

目の前で繰り広げられている乱闘は、いったいなんなんだ!?

「赤神っ!?なんで此所にいる?」

空怪は、ひとり、化け物中、暴れ狂っている赤神を見つけた。
鉤針婆の巣といえば、電波塔だと、"奇々怪々"にも記されているのに、
なぜ、糸電話に釣られた赤神が、フェスティバルゲートにいるのか・・・
不思議に思ったその時!!

『おい、お前・・人間か?半分人間のニオイがする・・』
三つの顔を持つ猿人が、ヨダレを垂らして近づいてきた。

「向こうに行け。お前も、頭から下は、人間じゃないか」
空怪は、その猿人を睨んだ。

『ここにも、エサだ・・』
『エサがいるぞ・・』

今まで、仲間の"赤神狩り"を、ただ見ていただけの化け物たちが、
空怪のニオイに反応した。

ゾロゾロと、空怪の方へやって来る。

「ええいっ。やるか!」
空怪は、懐より、アルミパックを取り出し、
栄養ドリンクを飲んだ。

「うりゃああああああああああああっ」

ドスドスドス!!
ドスドスドス!!

『うがごげだばぐばごぎどばじぞッ』

三つの顔の猿人に、猛烈なパンチのラッシュを喰らわす空怪!

空缶娘、アントとの闘いの疲れは、もう解消されている!!

「ゴロデリエパースッ!!オラオラオラ!!」

ドゴドゴドゴドゴ!!
ドゴドゴドゴドゴ!!


「うわー、空怪さん、やるう。」
黒死は、パンを囓りながら、まるでテレビを見ているかのように楽しんでいる。

「赤神緋威露ですう。いつもどうも〜。あのですね、この前、言うてましたアレ。
アレまだ、おたく、置いてます〜?そう、アレですわ・・
うちの息子の護身刀に、"錐女"がどうのこうのって言うてた刀・・・
え!ありますか!良かった。じゃあ、それ買いますので、すいませんけど、今から・・
そう今からすぐ、持って来て欲しいんです。え?住所?・・・そんなんわかりません。
"フェスティバルゲート"と言えば、すぐ来れますって。はいはい、お願いします〜。」


ガチャ


「いけました?」

「もちろん!でも、どうも耳が遠いみたいで・なかなか話しが・・困った刀屋のオイボレよ。」

「錐女がどうのこうのって・・・」

「先日ね、その刀屋に行ったら、"凄い一振りが入荷!"って書いてあったから、
オイボレに聞いたら、錐女?息子が退治した化け物なんだけど、
その錐女の武器、"オクトパスピック"と、あのバカが、錐女に突き刺したという護身刀を、
二つ合わせて鍛えた刀だったのよ。
でもね、それってお金出して買うのバカらしいじゃない?
だって、ひとつは、元々あのバカの刀よ。地獄に忘れて来るから・・」

「ああ、それは、もったいないですね、お金。」

「まあ、仕方ないわ。でも・・」

「でも?」

「丞の報酬から、その分、頂きましょう。」

「は・・はい・・・」
黒死は、決して緋威露に、口が裂けても言うことは出来ないが、
心の中で、そっと囁いてみた・・

(いったい・・どごが、"母親らしい"事なんだろう・・・)と・・・

つづく・・・

終 無断転写・使用禁止  作者 人形首 s嬢

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