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仏陀の世界(総合仏教)コミュの「ミラレ―パ」

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 ミラレーパはお金持ちのお坊ちゃんとしてチベットに生まれました。幼名をトゥーパガといいました。
 父と母と妹との四人家族で、その地方で名の知れた大富豪でしたが、ミラレーパが七歳のころ、父が他界しました。
 父は遺言を残していたにもかかわらず、貪りの強い叔父と叔母が、一家の財産をすべて奪い取りました。そしてそれのみならず、残されたミラレーパの一家を、奴隷のように扱ったのです。
 昨日まで良い服を着て良い暮らしをしていたミラレーパ一家は、今やぼろをまとい、奴隷のように働き、物乞いによって食を得るという暮らしになってしまったのです。
 復讐を誓ったミラレーパの母は、ミラレーパに魔術を習いに行かせました。ミラレーパは母の望みどおりに魔術を習得し、魔術によって叔父叔母の子供や親戚や仲間たち三十五人を殺し、復讐を果たしたのでした。叔父と叔母だけは見せしめのために生かしておきました。

 しかしこの復讐成功の後、ミラレーパの中に、悪業を犯してしまった後悔の念と、真理を求める強い思いがわきあがってきました。そして魔術の師匠の紹介で、ミラレーパはまず、ゾクチェンの師匠であるロントン・ラガのもとに弟子入りしました。
 ロントン・ラガは、ゾクチェンの教えを説明する際、「恵まれたカルマを持つ者は、この教えを聞くだけで成就を得る。瞑想の必要さえない」という表現を使いました。これには深い意味があったのですが、まだ教えを理解していなかったミラレーパはこの言葉を文字通り受け取ってしまい、
「恵まれたカルマの私は、瞑想しなくても成就できるのだ!」
とうぬぼれてしまい、瞑想もせずにただ寝て時を過ごしました。 
 見かねたロントン・ラガは、ついにミラレーパにこう言いました。
「お前はここに来たとき、自分を大罪人だと言ったが、それは正しかったようだな。私にはお前を成就させることはできない。
 さて、ロタクという地にマルパという偉大な師が住んでいる。その方の下へ行け。お前は彼とカルマ的な縁があるのだ。」

 マルパという名前を聞いた瞬間、ミラレーパの髪の毛は逆立ち、戦慄が走り、目から自然に涙が溢れ出しました。前世からの縁がよみがえったのです。 
 こうしてミラレーパはマルパのもとへ行きました。マルパも、実は夢の予兆で、ミラレーパが自分に約束された偉大な弟子であることがわかっていました。しかし同時にミラレーパが積んでしまった悪業の重さもわかっていたので、マルパはミラレーパにわざと冷たくつらく当たり、ミラレーパの悪いカルマを落とそうとしました。 
 マルパは教えを求めてきたミラレーパに、教えを与えることなく、過酷な建築作業の重労働を命じました。たった一人で、巨大な建築物を建てさせ、それが完成間近というところでぶっ壊させ、また別のところでやり直させる、ということを繰り返しました。ミラレーパは肉体的にもボロボロになりましたが、精神的にも、達成感を味わう直前で壊させられるということで、ボロボロになっていきました。
 苦悩を感じ、挫折しそうになったミラレーパに対し、マルパは彼の師であるナーローの修行時代の話をしました。ナーローは師であるティローの過酷な指示をすべて忠実に守りぬき、解脱を得たのです。それは火の中に飛び込ませるとか、高い塔から飛び降りさせるとか、すべてが今ミラレーパが受けている試練よりも過酷なものでした。マルパはこの話をし、
「お前にはこの方法は難しいだろう」
と言いました。ミラレーパはこのナーローの話を聞いて信が増大し、涙を流し、これからマルパの指示にはすべて従おうと決意しました。

 マルパのミラレーパいじめは、それからもいっそうひどくなっていきました。建築作業の試練だけではなく、たとえば弟子たちが集まって教えを受ける場において、ミラレーパだけを排除し、みなの前でののしり、暴力を振るうなどして、ミラレーパを精神的に追い詰めました。
 あるときは過酷な重労働で、ミラレーパの背中に大きな傷ができました。それを見かねたマルパの妻ダクメーマは、マルパに懇願してミラレーパに休みを与えてくれるように頼みました。数日間、ミラレーパは休みを与えられ、その間、ダクメーマがおいしい食事でミラレーパを癒してくれました。数日後、傷が治りつつあるのを見て、マルパはミラレーパに、仕事に戻ることを指示しました。そしてミラレーパに布を渡して、「これを使って傷口に泥が入らないようにして、石や材料は体の前で運べ」と言いました。ミラレーパはこれを師の命令と考え、言われたとおりに、その布で傷口を守りつつ、重い石や材料を体の前で運びました。マルパはミラレーパに対して厳しい態度の演技をしていましたが、このミラレーパの姿を見て、「言われたことすべてにこのように忠実に従うとは、稀なことだ」と、密かに涙を流しました。

 しかしマルパが与える試練がどんどん厳しくなり、ついに耐え切れなくなったミラレーパは、密かにマルパのもとを去っていきました。
 行く当てもなく放浪しているとき、ある老人に、文字が読めるなら、報酬をあげるから、仏典を読んでほしいと頼まれました。それはアシュタサーハスリカー・プラジュニャー・パーラミターでした。その中に出てくるサダープラルディタの物語を読んで、ミラレーパは心を動かされました。サダープラルディタは、師に供養する供物を集めるために、自分の肉を切って売ろうとまでした菩薩でした。ミラレーパは、「サダープラルディタなら、教えを受けるために、自分の心臓さえも差し出しただろう。しかし私は、何も差し出していない」と考え、マルパの下へ戻る決心をしました。

 戻ってきたミラレーパを見て、マルパは内心喜びましたが、また冷たい態度で接しました。ミラレーパは再び絶望に陥りますが、ミラレーパを哀れに思っていたダクメーマが、ミラレーパに秘策を授けます。それはマルパの手紙を捏造して、マルパの弟子であるゴクパのもとに送り込み、ゴクパから教えを授けてもらうという案でした。ダクメーマは、マルパがなぜミラレーパに試練を与えているかという深い意味が理解できなかったので、人間的な哀れみから、ミラレーパに助け舟を出してしまったのです。
 こうしてミラレーパは再びマルパのもとを去り、ゴクパのもとをたずねて、ダクメーマが捏造したマルパの手紙を見せ、ゴクパに教えを請いました。ゴクパはその手紙を信じてミラレーパに秘密の瞑想法を授け、ミラレーパは瞑想修行に入るのですが、マルパの祝福がなかったために、その瞑想は全く効果を生みませんでした。
 そしてそのころ、マルパの息子のために建てられた塔の完成記念の宴が開かれることになり、ゴクパのもとにも招待状が来ました。そしてそこには、「私のものである悪人も一緒に連れてくるように」と書いてありました。そこでミラレーパも一緒にマルパのもとへと向かいました。
 宴の席において、マルパは、なぜ許可なくミラレーパに秘密の瞑想法を教えたのかと、ゴクパをしかりました。そしてそれがダクメーマの仕業であることがわかると、マルパは怒り狂い、ダクメーマを叩こうと立ち上がりました。ダクメーマは部屋に逃げ、鍵をかけて隠れました。
 この一連の騒ぎの間中、ミラレーパは心臓が張り裂けそうでした。
「自分は悪業多く、教えを受ける良いカルマがない。それどころか、自分の存在によって、ダクメーマやゴクパにまで迷惑をかけている。私のようなものは死んだほうがましだ。来世こそは、信仰に値する者として生まれ変わりますように!」
 こうしてミラレーパは、刃物で自分の喉を切り、自殺しようとしました。しかしゴクパが間一髪それを止め、言いました。
「時が来ていないのに自ら命を断つのは、大きな罪になる。この試練を耐えれば、必ずマルパは教えを与えてくれる。マルパが与えてくれなかったら、私が与えることもできる。だから死ぬなどということは考えるな。」
 このように涙ながらにミラレーパの自殺を押しとどめました。

 しばらくすると、マルパの心は穏やかに静まっていました。そしてゴクパがいかにミラレーパを勇気づけたかの話を聞くと、マルパは涙を流し、「秘密の道を行く者たちはこのようでなければならぬ。まさに彼らはそのような者たちだ」と言い、ミラレーパやゴクパや他の弟子たちを集めました。
 そしてその席で、ついにマルパはすべての種明かしをしたのでした。ミラレーパがここにやってくる前から、夢の予兆により、ミラレーパが偉大な約束された弟子であることはわかっていたこと、しかしその悪業を落とすために様々な試練を与えたこと。そしてマルパはミラレーパに九つの塔を建てる試練を与えたのですが、ミラレーパは八つの塔を建て、九つ目は完成させることなくゴクパのもとに逃げてしまったわけですが、もしミラレーパが九つの塔を完成させていたら、その時点で、完全にミラレーパの汚れは消え、完全な解脱を果たしたであろうこと、よってほとんどの罪は消し去られたが、最後で逃げてしまったために、わずかながら汚れが残ったことなどを説明しました。
 そしてここにおいてついにマルパはミラレーパを正式に弟子として受け入れ、
「教えを授けよう。望み通り瞑想させ、幸福にしてあげよう」
と言いました。
 ミラレーパは夢ではないかと疑うほど喜んだのでした。

 マルパに正式に受け入れられたミラレーパは、教えの伝授を受け、洞窟にこもって瞑想修行に明け暮れました。そこにおいてミラレーパの素質が開花し、悟りと解脱のプロセスをどんどんと進めていきました。
そんなあるとき、ミラレーパは、故郷に残してきた母や妹やその家が、悲惨な状態になっているという夢を見ました。いてもたってもいられなくなったミラレーパは、マルパのもとへ行き、少しだけ故郷に帰りたいという願いを告げました。
 マルパは、象徴によって真実を読み取る力に優れていたのですが、ミラレーパがこの願いを懇願しにやってきたときの様々な状況を読み取って、もし今ミラレーパを行かせたなら、マルパとミラレーパはもう一生会えなくなるが、その代わりこのカギュ派の系統の教えはチベット中にあまねく広まることになるだろう、ということを知りました。よってマルパは衆生のために、ミラレーパを行かせることにしました。マルパはミラレーパに、他の弟子には教えなかった秘密の教えを授け、「故郷には一週間以上いてはいけない。その後は洞窟から洞窟をさまよいながら修行せよ」と言って、ミラレーパを送り出したのです。

 ミラレーパが故郷に着くと、そこには夢で見たとおりの悲惨な状態がありました。母は貧困の中で死に、家はボロボロになり、妹は乞食となって放浪に出ていたのです。
 これを目の当たりにしたミラレーパは、この世の無常性についての確信をよりいっそう強め、瞑想修行に生涯をささげることを決意しました。「もしほんの少しでも現世的な思いが私にわいたなら、守護神よ、そのときは私の命を絶ってください」という恐ろしい誓いを何度も繰り返しながら。
 ある人は、ミラレーパがマルパのもとで教えを受けてきたと聞いて、ミラレーパもマルパと同じように、妻を持ち、家庭を持ち、多くの弟子と信者に囲まれながら教えを説いていく道を歩くといいでしょう、と助言しました。しかしミラレーパはそれに対して、
「それはライオンのしぐさをウサギがまねるようなもので、破滅をもたらす」
と答えました。ミラレーパはあくまでも、マルパの指示通り、生涯、何も持たずに洞窟から洞窟をさまよいながら修行していく道を選んだのです。

 食物をあえて探しに行くこともせずに洞窟で修行していたミラレーパの食事は、洞窟の周りに生えていた、食用に適さない草だけでした。そのため、ミラレーパの体はガリガリにやせ、体は緑色になったといいます。
あるとき、ミラレーパの婚約者だった女性と、ミラレーパの妹が、肉と酒を持って、ミラレーパの洞窟を訪ねてきました。ミラレーパは厳しい修行によって解脱寸前にあったのですが、厳しい食生活によるエネルギー不足により、「熱のヨーガ」の解脱に必要な心身のエネルギーが足りない状態でした。しかしこの肉と酒の供養を受けることにより、身体にエネルギーが生じ、気道は通り、一気に修行が進んだのでした。
 このようにしてミラレーパは、「熱のヨーガ」や「マハームドラー」の修行をひたすら進め、稀に見る大成就者となっていきました。そしてミラレーパの特徴は、なんと言ってもその美しい歌にありました。
もともとインドやチベットの密教では、悟りの境地を、即興の歌であらわす伝統がありましたが、ミラレーパはこの能力に非常に長けていました。ミラレーパの歌は真理の真髄を絶妙に表現し、人々の心を打ち、またその歌声も非常にきれいだったといいます。
 またミラレーパは大神通力者でもあり、弟子の前では、様々なものに変身したり、空を自由に飛んだり、いろいろな神通力を見せましたが、他の人にはそれを秘密にしておくようにと忠告していました。

 こうしてミラレーパは、チベットで知らない人はいない、高名な大成就者となっていきましたが、有名になっても歳をとっても、寺に安住したりすることはなく、山の洞窟で瞑想をし続けました。多くのチベット人がミラレーパの出家の弟子や在家の信者となり、多くの弟子が解脱と悟りを果たしました。

 ミラレーパが八三歳のころ、ミラレーパの人気をねたむ一人の高名なゲシェ(大学者僧)がいました。彼はミラレーパが自分に挨拶を返さなかったことに腹を立て、恥をかかせてやろうと、みなの前でミラレーパに論争を挑みました。しかしミラレーパは観念的な言葉を重ねて論争をすることの無意味さを説き、次のような歌を歌いました。


栄光あるマルパ訳経法師の御足に礼拝いたします。
願わくば教義や教条の論議から除きおかれますよう。

我が師の祝福は私の心に染み通ります。
心は決してもろもろの気晴らしを求めて横道に逸れはしませんでした。

愛と哀れみについて瞑想したので、
自他の間の一切の区別を忘れてしまいました。

我が師について瞑想したので、
勢力と権力を有する者たちのことは忘れてしまいました。

己から分かちがたいものとして、守護神を瞑想したので、
粗雑な感覚の世界のことは忘れてしまいました。

口伝の最勝の真理を瞑想したので、
弁証法の書物のことは忘れてしまいました。

純粋な意識を保ち続けたので、
過ちを犯す無明の知識は忘れてしまいました。

心の本質的な性質が三つのカーヤであると瞑想したので、
希望と恐れの思いを忘れてしまいました。

この生と来世について瞑想したので、
生と死の恐怖を忘れてしまいました。

独居の喜びを味わったので、
友や親族の意見を探し求める必要を忘れてしまいました。

己の意識の流れへと一つ一つの新しい体験をあてがったので
教義の論争に係わることは忘れてしまいました。

不生、不滅、無住を瞑想したので、
個別の目標のこれやあれやの一切の定義を忘れてしまいました。

現象の認知はダルマカーヤであると瞑想したので、
すべての心の作り出した瞑想を忘れてしまいました。

自由にして創出されざる境地(ダルマカーヤの心の状態)に心を保ったので、
偽善の慣習を忘れてしまいました。

体と心において謙虚に生きたので、
強者の尊大さと傲慢さを忘れてしまいました。

この身の内側に僧院を作ったので、
外側の僧院のことは忘れてしまいました。

言葉を超えたものの意味を受け入れたので、
言葉で遊ぶ方法は忘れてしまいました。



 この歌を聴いてもゲシェは納得せず、ミラレーパを非難しましたが、聴衆は皆ミラレーパの側につき、逆にゲシェが恥をかかされました。
 この一件によりゲシェはいっそうミラレーパを恨むようになり、こう考えました。
「この無学なミラレーパという男は、ブッダの教えにそむいた風変わりな言行をし、虚言によって人々から多くの布施や供物を奪っている。それに対して私は正統な仏教の教えに通じており、一番の金持ちで勢力を持っているにかかわらず、ミラレーパは私の宗教的学識を認めず、私のことを犬よりも価値のない者のように見ている。これをやめさせるために、何か一計を案じなければならない。」
 そしてゲシェはなんと、ミラレーパの暗殺を計画したのです。
 ゲシェは自分の愛人に、成功したらトルコ石をプレゼントし、正式に結婚しよう、と約束をし、ミラレーパに毒入りのヨーグルトを持っていかせました。ミラレーパは彼女からヨーグルトを受け取ると、こう言いました。
「それで、報酬のトルコ石は首尾よく手に入れたかね?」
 ミラレーパが本当にすべてを見抜く力を持っていることを知った彼女は、ミラレーパに懺悔し、自己の罪を後悔しました。しかしミラレーパはあえてその毒入りヨーグルトを飲みました。その毒を飲もうと飲むまいと、すでに自分に臨終のときが迫っているのをミラレーパは知っていたのです。そしてこの縁によって、このゲシェを救済しようとミラレーパは考えたのです。
 ゲシェは最後までミラレーパの神通力を疑っていましたが、最後は実際にミラレーパが神通力と深い悟りを持っていることを悟り、そしてひどい病の苦しみをミラレーパに与えてしまったことを後悔し、ミラレーパに懺悔し、彼の信者となりました。今後は邪な行いをやめ、死ぬまで帰依に専念することを誓ったのでした。

 この出来事のしばらく後、ミラレーパはこの世を去りました。ミラレーパには「太陽のような弟子」といわれたガンポパと、「月のような弟子」といわれたレーチュンパという二大弟子がいましたが、二人ともミラレーパの臨終に立ち会うことはできませんでした。レーチュンパがそこに到着すると、すでにミラレーパの遺体は荼毘に付されていました。レーチュンパは悲しみにもだえ苦しみ、祈りの詩を唱えました。その帰依の力は大変強かったので、ミラレーパは再び生前のような姿でそこに現われ、レーチュンパに最後の教えを説いた後、再び消えていきました。

 ガンポパはミラレーパの死を知りませんでしたが、レーチュンパがミラレーパの形見を渡すためにガンポパを探し出し、ミラレーパの死を告げました。ガンポパはそれを聞くとショックのあまり気絶してしまったといいます。その後、ガンポパはミラレーパから受けた教えとカダム派の教えをミックスし、カギュ派の教えを体系化し、チベットに広く広めていきました。

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