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モスキートエンジンコミュの不可解な夜の雨宿り 〜第11話〜 その?

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クラゲは進みました。

来る日も、来る日も。。
雨の日も、風の日も変わらずに。。。

海の中をブクブクと探し回りました。
最初、クラゲくんは楽しくもありました。
とうとう、オレァ『奇跡の青』を探す旅に出たんだ、と。
それを追っている自分がなんとも嬉しくて仕方ありませんでした。

とうとうオレの風は動き出したんだ。。
オレァもう1人でプカプカ夢見てるクラゲじゃねぇ。。
無宿渡世の旅烏、誰も目にしたことがねぇ『奇跡の青』を
探す冒険野郎ってとこだ!!

クラゲはなんとも愉快な気持ちになりました。
隣の海にでかけ、そのまたさらに奥の海にもいきました。

そして色々と情報を収集して回りました。
しかし、一向に『奇跡の青』の情報を入手することができません。

クラゲくんはそういう日が続くとだんだんと不安になってきました。
まだ旅に出て2週間しかたっていないのにもう不安との戦いでした。

夜になれば家に置いてきた両親が心配で心配で涙がでました。
妹や弟がいてくれるじゃねぇか、と自分に言い聞かせますが
それでもおっかぁが泣いているんじゃねぇかと心配でたまりません。

朝になればまた違う海にでかけ情報収集です。

フグにきいても、鯨にきいても
誰も『奇跡の青』の情報を持っていません。

クラゲは来る日も来る日も、
色んなところを探しました。
岩場の影、深い海底、汚れた海辺、人間の巣。。。
どこにも『奇跡の青』と思えるものはありませんでした。

海はただ広く、あまりに広く、どこへいっても新しい場所です。
こんな広い海でこのちっぽけなクラゲ一匹、『奇跡の青』を見つけよう
なんざぁ狂気の沙汰だ。。
クラゲは時折気弱になり、そんなことを考えたりしました。
それはイカくんやカニくんが忠告し、クラゲも先刻承知のはずでした。
だからクラゲはそういう事を考えることをなるべくしないようにしていました。

「いや、いつの日か、オラァ辿り着いてみせるぜ。。奇跡の青をこの目で見るんでござんすよぅ。。
だから諦めちゃならねぇ。。」

ある日の午後です。とうとうクラゲは有力な情報を手に入れました。
それはサバの群れに出くわした時のことです。
長老サバがいいました。
「物知りアンコウ爺さんなら知ってるかもしれねぇな。
ここから東に300泳ぎの海底に居られるぞ。」

クラゲは丁重に礼を言うと一目散に急ぎました。
ようやく掴んだ貴重な足がかりです。
焦らずにはいられません。
300泳いだ後、海底に潜りました。
そしてイソギンチャクにたむろしている小さい小魚に聞きました。

「失礼さんにござんす。あっしは無宿渡世のヘドロクラゲというケチな野郎にござんす。
この辺りに物知りアンコウ爺さんという御仁がおられると聞いてお伺いしている次第にござんす。
ご存知でしたら教えていただけねぇでしょうか。。」

「こりゃこりゃ。。ご丁寧にどうも。。アンコウ爺さんならつい先日亡くなったわよ。
残念でしたねぇ。。」

「左様で。。どうもありがとうござんす。。」

呆然としました。
ヘドロ海を飛び出してはや2ヶ月。。
もうまったく八方塞がりでした。
クラゲはどこにいっても何も手がかりがなく、
どこにいけばいいのかさえ見失っていました。

もう故郷に帰ろう、と思いました。
少し恥ずかしいけど、、まぁ、色んな経験になったし。。
2ヶ月も頑張ったんだ。。
もう帰ろう。。
そう思いました。
しかし、タコ先生は3年は帰るな、と言っていました。
3年。。
つまりあと34ヶ月は帰れない、という事です。

クラゲはタコ先生を怨みました。
そんな約束しなければよかった。。

そうだ、一度帰ってちゃんと情報を整えてから出直すべきだ。
旅支度も中途半端だったし。
おっとぉもおっかぁも心配だし。。
安心させてやりてぇしな。。

タコ先生はあぁいったけどきっとわかってくれる。

そうだ、そうしよう!!
もう帰ろう!!
これほど無謀なことはない。
空手で出て行くなんて無謀すぎる!!
一度帰って準備を整えよう!!

いやぁ〜、、なんとも恥ずかしい。。
とかなんとか言って帰ってしまおう!!

みんな許してくれるに違いない。

クラゲは気持ちが楽になりました。
そして一息ついて波に揺られました。
そしてポッカリと空を眺めました。

空を眺めていると。。

あっ!!

クラゲは驚きました。。

あの時の、あの空虚な日々の空と同じ空がそこにはあったのです。。。

雲はただ白く、空はただむしょうに青い。。。
そしてあの頃と同じにオレはダメな奴のまま。。
ただ浮かんでる。。

故郷の人々を誤魔化せても、、こりゃ、、ダメだ。。。

そんな気持ちだったら、、家を飛び出すんじゃなかった。。

こんなことで帰るくらいなら、孤独のポーズを取るんじゃなかった。。

たった2ヶ月だぜ、、どうかしているぜ。。

たった2ヶ月で、、どうにかなると思っていやがったのか。。。

タコ先生はきっとこうなることを見越していたんだ。。。

だから3年は帰るなと言ってくれたんだ。。。

ありがてぇ。。。ありがてぇじゃねぇか。。。

タコ先生に赤っ恥をかかせるところだった。。。

この間抜け野郎、、言うに事欠いてタコ先生と約束なんてするんじゃなかったと
ぬかしやがった。。

バカ野郎。。

クラゲは涙を流しました。。
その涙は故郷を想う涙であり、ここまでクラゲを心配し、配慮してくれた
タコ先生への涙であり、愚かでどうしようもない自分への口惜し涙でした。。。

こういう旅ってぇのは帰りたくても帰れない、って事を見失うんじゃねぇぜ。。。
寂しくなったから帰ります、不安になったからしばらく止めます、って気持ちで
どうするんだ!!
畜生め!!
おっかぁの涙を無駄にするんじゃねぇぜ!!
バカ野郎、、、きっと、、きっと泣いてるに違いねぇ。。。
バカ野郎、、、バカ野郎、、バカ野郎!!!

クラゲは泣き続けました。
不安でした。
寂しさで潰れそうでした。
タコ先生やおっかぁに会いたくて仕方ありませんでした。

クラゲは延々と泣き続けました。
その時です。
クラゲの涙は体をつたい、体中のヘドロが次第にポロリ、ポロリと剥がれていきました。
クラゲはまったく気付きません。
空に向かい声をあげ、延々と自分を罵り、そして泣きつづけているうちに
ヘドロまみれのクラゲはいつしか透明に近い水色の綺麗なクラゲになったのです。

周囲の魚達はあまりの綺麗さに驚きました。

涙が体を伝う時、光に反射してキラキラ光るのです。
そして薄い水色の体は空の青を見事に映し、キラキラしていました。

きっとその涙は特殊な涙だったのでしょう。
きっとその涙こそ『奇跡の青』だったのかもしれません。
その涙が体のヘドロを溶かし、彼はピカピカで美しいクラゲになったのでした。

しばらく泣いた後、クラゲは涙を拭い改めて痛感したのです。
もう帰れない、そんなに甘くない、とようやく気付いたのでした。
そしてクラゲはグズりながらも再び旅に出たのです。

クラゲはその後も何度も挫けそうになりましたが、
何度も何度も立ち上がり、今では旅する「水色クラゲ」として
旅の名士の仲間入りをしているそうです。

『奇跡の青』を探す美しき水色のクラゲ。。。
そんな伝説が様々な海で語られていました。。

家を飛び出して2年と半年、ヘドロが取れて約2年の歳月が流れていました。。。

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