法学院　行政書士試験制覇の扉コミュの行政書士試験対策　行政法総合問題解答解説

今回は以前お送りした問題に関しての解答・解説を行います。

問題、解いて頂けたでしょうか？

難易度はかなり軽めに作ったので、中級者以上の方なら全問正解は当たり前だったと思います。初学者の方は、これから知識の肉付けを行っていってくださいね。

今回の問題は過去問からの引用は一切ありません、全て私独断の知識で御作り致しました、だからこそ簡単な内容になってしまっているわけです、私のレベルも低いので。

さて、では解答解説を行いたいと思います。

まずは、解答がこちらになります。

問題１　選択肢１番

問題２　選択肢２番

問題３　選択肢２番

問題４　選択肢４番

問題５　選択肢２番

～解説及び注意点～

問題１

ア．行政事件訴訟法上の執行停止について、裁判所は原告の申立てによって執行停止の決定をすることができるが、これを職権で行うことはできない。

（妥当）　その通りです、条文にもきちんと規定されております。裁判所が執行停止する場合は職権ではなく、原告が申立てを行って初めて行われるのです。

イ．行政機関に建築業許可申請をしたところ、これを拒否されたが、審査基準が公にされていないことを理由としてその違法性を主張した。審査基準を設定した場合、必ずそれ公にしておかなければならない。

（誤り）　これは若干細かい知識です、確かに行政手続法５条では審査基準を定めることは法律上の義務とされておりますが、公に公表することに関しては例外があり、『行政上特別の支障があるとき』は公表が義務付けられません。

ウ．国家賠償法１条では、過失責任を問題としているが、公立病院での医療ミスは、公務員である医師によるものである為、被害者は国に対して損害賠償請求を成しうる。

（誤り）　確かに公立病院など、市や国が建てた病院に従事する医師や看護師などは公務員であることに違いはありません。国家賠償法の論理で考えれば公務員のミスによる損害なのだから当然国家賠償法１条が適用されるだろうと思うかもしれません。ところが判例ではこの論理を認めていません。
判例では、医療行為によって損害が生じても医療行為そのものは公務員でなくともできることなので、通常の不法行為として扱われることになり、民法７０９条の適用がある、と判示しているのです。思い出してほしいのですが、国家賠償法で成立する賠償責任にはどんな要件が具備されていたでしょうか？
例えば、警察官や消防官などの行為は公務、即ち公務員でなければ絶対にできない行為が土台となります。医療行為は何も公務員でなくても医療従事者であれば行える行為ですよね、だからこそ被害者側の損害賠償を担保する便宜として賠償適用の枠を広く認めているのです。

エ．個室浴場営業許可申請があった場合に、都道府県知事がこれを阻止すべく当該申請の営業予定場所とされている付近に児童遊戯公園設立の認可処分を行った。申請者はこの行為に対して都道府県知事の職権濫用による違法性を主張できる。

（妥当）　これは有名な判例の１つです。本来、個室浴場を営業したいと考えて申請し、許可が下りれば自由に営業ができるはずです。ところがその権利を公権力を理由にして違法な方法で個室浴場経営を断念させています、違法な動機、つまり何を達成する為に営業できなくさせたか。このように公権力があることをいいことに、その趣旨にそぐわない理由で権力や権利を発動させることを職権濫用と言います。

オ．行政不服審査法上、一般概括主義が採用されている為、不服申し立てができない事項は列挙していない。

（誤り）　確かに行政不服審査法は一般概括主義を採用しています、これは不服申立てができない事項以外の処分などに対して基本的に不服申立てを受け付けますよ、という意味なのです。
不服申立てができない事項については裁判所が行う処分や学識技能を試す試験や検定など、様々ですがそれら不服申立てができない事項というのはきちんと列挙されています。
そうでなければどこからどこまで不服申立てが通じるか、申立人の側からみて不明確になってしまうからです。よってこの選択肢も誤りとなります。

結果として、正しい選択肢はアとエとなり、選択肢１が正解肢となります。

問題２

（２）行政手続法に基づく次の記述の内、明らかに誤っているものはいくつかあるか。

１．一般的に行政指導には法律の根拠を必要としないが、規制的行政指導には法律の根拠を必要とする。

（誤り）　行政指導には法律上の根拠は必要としません、それは態様の変わった行政指導でも同じことが言えます。

２．命令等を制定する場合、原則として意見公募手続を行い、国民の意見を募集するが、
　　その期間は特段の事情がない場合は３０日以上でなければならない。

（妥当）　その通りですね、原則として意見公募手続を行って意見を集め、それらを考慮した結果、命令を作ります。
例外的に第３９条では委員会などが命令等を定めるような場合、意見公募手続を実施を要しない内容の規定があります。
そこは御自身で併せて確認してみてください。

３．聴聞における審理においては、口頭弁論主義が採用されるが、その内容は原則として非公開である。

（妥当）　これも正しいです。聴聞とは裁判と類似していますが、主体は行政権なので、司法権が主体となる裁判とは少し勝手が違うようです。
簡単に言い表すと行政審判のことをここでは言います、そして聴聞の内容は行政庁が相当であると認めない限りは、非公開で行われます。

４．聴聞終結後、行政庁が主宰者から報告書を受け取った場合で、尚、聴聞を続行する必要があると認めたときは報告書を返戻し、聴聞を続行することができるがそれ以外の場合でも聴聞を続行できる例もある。

（妥当）　この場合の他、主宰者が審理の結果、聴聞を継続すべきと判断したときでも聴聞に出席した当事者にその旨を伝えます。

５．申請に対する処分をする場合、申請の内容に誤りが含まれているときは、相当な期間を定めて、申請書の補正を求めるか、当該申請を拒否することができる。

（誤り）　これはひっかけ問題として作ってみました。一番最後の『申請を拒否することができる』というのが誤りです。これは任意ではなく、補正を求めない場合は、申請を拒否『しなければならない』とされています。拒否するかどうかについての裁量権はありません。

よって誤りは選択肢１と５であり、２番の選択肢が正解肢となります。

問題３

（３）改正行政不服審査法に関する次の記述の内、旧法との相違点等について誤っているものはどれか。

１．旧法では再審査請求をする際には、条件が２つあった。

（妥当）　旧法では再審査請求するには、条文上では主に条件は２つありました、１つ目は法律で認められている場合、２つ目は処分庁が権限の委任などによって原処分を審査庁として審査した場合です。

２．旧法では審査請求をする際、処分があったことを知った日の翌日から起算して５０日以内であったが、改正法では３か月以内となっている。

（誤り）　これはひっかけ問題として作りました、数字に弱い人には若干難しかったかもしれませんね、５０日となっている点が誤りです、正解は６０日以上です。
他の文面に誤りの点はありません。

３．旧法では異議申立ての制度が存在していたがこれが廃止され、審査請求一元化が図られており、法定審査請求の期間に関する救済制度も廃止された。

（妥当）　その通りです。

４．審理員は、必要があると認める場合には審査庁に対し、執行停止をすべき旨の意見書を提出することができる。

（妥当）　これも正しい選択肢です、改正法によって設けられた規定なので、改正法の趣旨を理解できていれば、すんなり解けたかと思います。

５．旧法では事情裁決の制度が存在していたが、改正法でも旧法と同じ条件で事情裁決の制度が用意されている。

（妥当）　文面の通りです

よって、誤った選択肢は２であり、正解は２番ということになります。

問題４

（４）次の記述の内、改正行政不服審査法の正しい規定であるものを選べ。

１．行政庁は必要と認めるときは、審理員に不服申立てに関する報告書の提出を求めることができる。

（誤り）　このような規定は存在しません。

２．審理員は、職権によってのみ検証を行うことができる。

（誤り）　審査請求人の申立てによっても行うことができます。

３．裁決は緊急を要する際には、処分後相当の期間をおいた後、文書によって行えばよい。

（誤り）　このような規定はありません。

４．審理員は審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、審査請求に係る事件に関し、
　　審理関係人に質問することができる。

（妥当）　正しい内容です、改正法によって新しく設けられた規定です、しっかり覚えておきましょう。

５．裁決は口頭によって行うことは例外なく禁止されている又処分を相手方の不利益に変更することは
　　行政上特別な支障があるとき除きこれをすることができない。

（誤り）　行政上特別な支障があっても相手方が不利益を被る処分又は裁決は認められていません。

従いまして選択肢４が正解肢となります。

（５）次の記述の内、正しいものと誤っているものが組み合わさっている選択肢は１から５のうちどれか。

ア．公営住宅に在住していたAが死亡し、その相続人であるB及びCは公営住宅住居権の権利を相続することは原則として許されないが、個別の法律により相続が許容されることもある。

（誤り）　公営住宅は所得の少ない国民が優先的に住居確保できるよう設けられた住居施設です、よって普通のアパートやマンションのように簡単に貸借できるわけではないのです。
一身専属権は相続の対象とはなりません、確かに文面にもあるように個別の法律で公営住宅法という法律が存在しますが、その法律によっても相続を許容している規定はありません。
　　　　　　　　

イ．国家賠償法１条では、公務員である警察官が拳銃で私利私欲を図る為に相手を射殺した場合、国や地方公共団体に賠償責任が生ずるが、警察官個人に求償できる条件は故意又は重過失が条件となっている。

（妥当）　公務を目的としない趣旨で相手方に公務員が違法に損害を与えた場合、国家賠償法上の賠償責任が発生するのは、理解できるかと思います。
ここで問題になっているのは、求償がどういった場合で可能か、ということです。故意（わざと）または重大な過失（通常の注意力を働かせれば容易に気付けたであろう過失）が問題になっているのです。
この２つの要件のうち１つでも該当すれば国や都道府県は公務員に当該警察官に対して損害に対する求償権を発動することができます。

ウ．国家賠償法で規定している事項以外については、民法の定めるところによるとしているが、
　　不法行為に関する規定は別に特別法が適用されることはない。

（誤り）　国家賠償法では確かに、『この法律に定めのない部分について民法の定めるところによる』としてはいますが、民法はあくまで一般法です、国家賠償法は民法の特別法なわけですね。では他の特別法は民法典に含まれないのでしょうか？
そんなことはありません、失火責任法という法律も民法典に含まれるとしています、失火責任法とは、火災になっている家の消火にあたり、一度は鎮火したが、残り火があることに重過失で気付かず放置した結果、再び燃え上ってしまった場合に適用される法律のことを指します。
　　　　

エ．教師の教育活動も公権力の行使として認められる。

（妥当）　教師は公務員ですから、教育活動も当然公務です、その中で行われる教育活動は公的性質を帯びているので、公権力の行使として認められています。

オ．通常、予想しえない方法で起きた事故などについては、国家賠償法２条の無過失責任の適用はないが、その事故等を長く放置することは法律上の瑕疵を構成する。

（妥当）　公の営造物、例えばガードレールやテニスの審判台などがありますが、この他、道路なども対象となります。
そしてそれらを通常の用法とは違う予想し難い方法で使っていた場合に生じた事故で損害を受けた場合、例え無過失責任が定められていても、原則として責任を負いません。
但し、道路事故などで長い間、事故車両を道路に放置しておくなどの事情がある場合は、
他の通行車両の弊害になるなどの理由で法律上の瑕疵（キズという意味）を構成するわけですね。

従って、正しい選択肢と誤った選択肢が組み合わせっているのは、アとオとなり選択肢２番が正解となります。

如何だったでしょうか？

これらの問題は若干マイナーな判例知識も取り入れた積りですが、思いは皆それぞれだったと思います。

今回はリクエストがあったので、このように問題の作成に当たらさせて頂きましたが、他にも何かリクエストがあれば遠慮なく申し上げてくださいね。