法学院　行政書士試験制覇の扉コミュの行政書士試験対策　新法行政不服審査法　前編

目的の変更

新法「この法律は行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、『国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。』」

旧法「この法律は行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによって簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」

目的及び趣旨の条文が多少異なっていますが、趣旨の内容そのものは全くと言っていいほど変わっていません。
しかしながら、平成28年度の試験で新法が出題されるとすれば、旧法と新法の目的条文は確実に押さえた方が良いでしょう、比較問題として出題される可能性があります。

旧法との共通点

・不服申立ての適用除外事項（新法7条　旧法4条）

・総代の互選及び互選命令　（新法11条　旧法11条）

・法人でない社団または財団の審査請求（新法10条　旧法10条）

・代理人による審査請求　　（新法12条　旧法12条）

・審査請求書の提出　　　　（新法19条　旧法15条）

・口頭による審査請求　　　（新法20条　旧法16条）

・誤った教示をした場合の救済（新法22条　旧法18条）

・審査請求書の補正命令　　（新法23条　旧法21条）

・処分庁を経由する審査請求（新法21条　旧法17条）

・反論書の提出　　　　　　（新法30条　旧法23条）

・参加人　　　　　　　　　（新法13条　旧法24条）

・証拠書類等の提出　　　　（新法32条　旧法26条）

・参考人の陳述及び鑑定の要求（新法34条　旧法27条）

・物件の提出要求　　　　　（新法33条　旧法28条）

・検証　　　　　　　　　　（新法35条　旧法29条）

・手続の併合又は分離　　　（新法39条　旧法36条）

・裁決をする権限を有しなくなった場合の措置（新法14条　旧法38条）

・裁決の仕組み　　　　　　（新法45条、49条1項及び2項　旧法51条）

・裁決の拘束力　　　　　　（新法52条　旧法43条）

・不作為庁に対する審査請求（新法49条　旧法51条）

・教示をしなかった場合の不服申立て（新法83条　旧法58条）

・執行停止　　　　　　　　（新法25条　旧法34条）

・執行停止の取り消し　　　（新26条法　旧法35条）

・審査請求の取り下げ　　　（新法27条　旧法39条）

大変長くなりましたが、上記24項目が新法でも生き残っている規定です。
若干条文の表現に変化はありますが、言い方が違うだけで内容は旧法と同じです。
共通項の内容が多いので、共通項の比較説明は割愛させて頂きます、申し訳ありません。
条文番号をお付けしたので、新法と旧法を是非比較してみてください。

さて、ここから新法である新・行政不服審査法で設けられた新しい制度をご紹介しようと思います。

法令解析に時間をかなり要したので、初学者の方でも解るような範囲での記述を試みます。

その前に、ある程度の定義を記述したいと思います。

≪処分とは？≫

この法律で言う処分とは、『行政庁の処分、その他公権力の行使に当たる行為』を言います。

公権力とは、具体的にはおおやけの権力、つまりは国民の権利や義務に変動を及ぼす程の強い力のことを指します。

これができるのは公務員である行政庁や司法権を司る裁判所、国会などが良い例でしょう。

≪審査請求？≫

読んで字の如くですが、これは課された行政処分に不服がある場合、審査庁に対して不服を申し立てることを言います。

審査請求先は全部で３つありますが、ここで１つ１つ見ていきたいと思います。

１・内閣府設置法若しくは国家行政組織法に規定する庁の長が処分庁の上級行政庁の場合＝　→　宮内庁長官または内閣府設置法若しくは国家行政組織法に規定する行政庁

２・主任の大臣が処分庁の上級行政庁である場合＝　→　主任の大臣

３・上記以外の場合＝　→　処分庁の最上級行政庁

旧法では、異議申立ての制度がありましたが、新法になってから異議申立ての制度がなくなり、審査請求と再審査請求のみとなりました。

そして旧法の場合、主任の大臣や宮内庁などには審査請求することができませんでしたよね、その代りに異議申立ての制度があったわけです。

異議申立てとは、処分庁に直接申立てる不服申立ての制度を言い、基本的に上級行政庁がない処分庁や法律で認められている場合に、主任の大臣などに対してすることができる制度でした。

新法になってからはこれらの制度が撤廃され、審査請求一元化となりました。

≪審理員とは？≫

新法になって新しく創設されたものとして、審理員という機関が設置されました、これは簡単にいってしまえば審査庁の手足として動く機関です。

そして審理員として任命されるには審査請求人などと親族関係であったり、審査請求人の保佐人や後見人、つまりは審査請求人と何らかの関係を持つ者は審理員になることができません。

では審理員の業務とはなんでしょうか？

まず、審理関係人への質問をする権限があります、審理を行う以上より慎重に情報を得る為であると考えられるからです。

その他、旧法と新法で重なっている同じ規定にも審査庁が本来するべき仕事、例えば検証、物件の提出要求など、旧法でも同じ規定があるものを審査庁が行うのではなく審理員が行うものとされるようになりました。

そして審理員は必要な調査や審理を終えた場合、審理手続きを終結し、意見書を出すことができます。

　

≪審査請求期間≫

旧法では審査請求は処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内、再審査請求は30日以内となっていましたが、新法では、

・審査請求　処分があったことを知った日の翌日から起算して3月以内又は処分があった日から1年以内

・再審査請求　裁決あったことを知った日の翌日から起算して1月以内または裁決があった日から1年以内

このように旧法で規定されていた審査請求期間よりも長くなりました、これはより不服申立ての道を広げようというこの法律の目的を達成しようとする現れとも言えますね。

≪標準審理期間≫

これは審査請求を行い、それが事務所に到達したときからいつまでに処分がなされるかを概ね決めておく期間のことを言います。

しかし、これを定めることは努力義務に過ぎないので必ず定めるものではありません、ですがもし定めた場合は公にしておくことが義務付けられています。

ここで行政手続法の標準処理期間と似ていることが伺えます、混同しないように気を付けてください。

≪文書閲覧権≫

審査請求人または参加人は審理手続きが終結するまでの間、審理員に対して提出書類等の閲覧や交付を求めることができるようになりました、ここも行政手続法と似ているので混同しないようにしましょう。

審理員は正当な理由がなければ、これらの請求を拒むことができません。

★POINT　文書閲覧や標準審理期間については行政手続法の規定と酷似しているので、余裕があれば、ダブらさせて覚えると効果的かと思います、くどいようですが混同しないように気を付けてください。

≪再調査の請求≫

処分が本当に正しいものなのかどうかを検証する手段として、審査庁に対して処分の再調査を請求することができるようになりました、これにも期間が設けられており、審査請求と同じで処分があったことを知った日の翌日から起算して３月以内或いは処分あった日の翌日から起算して1年以内となっています。

旧法と比較すると不服申し立てについて随分手厚い待遇になったのではないでしょうか。

その他、不作為の性質に応じた特別な不服申立て制度の創設を妨げない規定も確立され、旧法と比較すると不服申立ての道はかなり広くなったと言えるでしょう。

では、新法解析前半はここまでとします。

後半の記事がいつになるかわかりませんが、執筆が出来次第掲載致します。

リクエストなどがあれば遠慮なく申し出て頂ければと思います。

できれば記事を読んで下さった場合、実際に条文確認をすると理解が深まるかと思いますが、まだ新法が来年の4月1日までに施行されると決まったわけではないので、焦る必要はありませんが、一応早めに作っておくに越したことはないだろうという趣旨で作成させて頂きました。

では、後半の記事でまたお会い致しましょう。