法学院　行政書士試験制覇の扉コミュの行政書士試験対策　行政手続法

　　　　　　　　　　　　　　　　　『行政手続法』

この法律は処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする

これは第1条の目的において、処分、行政指導、届出、命令等制定手続に関する法律である。

これだけを見ると実に堅苦しい表現であるが、１つずつ噛み砕いて表現したいと思う。

行政手続法というのは、その名の通り、行政手続に関する法律であり、我々一般国民の身近なものにも関与している場合がある。

例えば、国民年金の納付を行うことが困難である為、市役所等に対して支払の猶予、または免除を申請する場合などがある。

これは行政手続法第2条における、申請に該当するものであり、第同条では申請の定義が書かれている。

申請とは、法律に基づき、自己に対して何らかの利益を付与する処分を求める行為であり、先ほど挙げた国民年金支払の免除申請は正にこれに該当し、行政手続となるのである。

この外、飲食店の営業許可、風俗店の営業許可なども同様である。

しかしながら、いくら法律の規定にそって申請をしたからといっても必ずしも許可が下りるとは限らない。

これについて行政手続法では同法5条で審査基準を定めており、更に第6条では標準処理期間というものがある。

審査基準とは、許認可をする際に申請の内容が許認可の要件を満たす為の基準のことを言う。

そして審査基準は行政上特別の支障がない限り公にすることが義務付けられている。

標準処理期間というのは、申請を行ってから許認可等の処分が下されるまでの処理期間を指す。

つまり、申請の内容が妥当であるかどうかを行政機関が考慮する期間のことである。

例えば先ほど挙げた国民年金の免除申請の場合でも、申請をしたからといってその場で決定がなされる訳ではなく、行政機関で審査し、妥当または妥当でないと判断した場合は申請者に対して行政処分をするのである。

標準処理期間は定めることを努力義務として、絶対に定めなければならないというわけではない。

これに対し、標準処理期間を定めた場合、これを公にしなければならないという法的義務が課せられる。

また、申請により求められた許認可等を拒否する処分については、申請者に対して、原則として処分と同時に処分の理由を示さなければならないとされている。

次に不利益処分について説明してみたいと思う。

不利益処分とは、国民に対して権利を制限し、義務を課す処分のことを指すのである。

そして不利益処分をする場合、適用除外項目となる行為を除き、原則として意見陳述の手続が取られる。

これには聴聞と弁明の機会の付与の2種類があり、聴聞とは簡単に言うと行政機関による裁判、つまり行政審判のことを言うのである。

従って、聴聞が開かれる場合の要件は免許の剥奪といった重い処分を下すかどうかの場合に開かれるものなのである。

これに対して弁明の機会の付与というのものは、聴聞手続よりも比較的軽い不利益処分を課す場合を言う。

聴聞審理は口頭で弁論するのが特徴であるが、弁明の機会の付与の場合は原則として書面によって理由を主張するのが特徴である。

・処分基準

処分基準とは不利益処分の性質に照らして可能な限り具体的なものとしなければならないが、審査基準とは異なり、処分基準の公表は努力義務となっている。

・聴聞の通知の方式（15条）

聴聞を行うにあたって、行政庁は次の事項を不利益処分の名宛人に通知しなければならない。

尚、この通知は『必ず書面で通知』しなければならない。

・予定される不利益処分の内容および根拠となる法令の条項

・不利益処分の原因となる事実

・聴聞の期日及び場所

・聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地

これら4項目を書面によって通知するわけだが、更に『書面による通知』においては次の事項を教示しなければならない

聴聞の期日に出頭して意見を述べ、および証拠書類または証拠物を提出し、または聴　聞の期日への出頭に代えて『陳述書および証拠書類等』を提出することができること

聴聞が終結する時までの間、当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができること

・聴聞の審理

聴聞が開かれる場合、許認可を取消したりまたは資格を剥奪するなど、身分の喪失等に関わるのが主な理由である。

聴聞は前述した通り、口頭で言い分を主張するなど所謂、行政裁判（行政審判）のようなものであるとイメージして頂ければ良い。

・参加人とは

主宰者は名宛人以外の者で不利益処分につき、利害関係を有すると認められた場合、その者に対して聴聞に参加することを求め、またはその者が聴聞に参加することを許可することができる。

このように不利益処分の性質に照らして、不利益処分の根拠となる法令等により利害関係を有するものを『関係人』と呼び、更に関係人が聴聞に参加した場合、行政手続法では『参加人』と記述している。

・聴聞審理において名宛人（以下、当事者）ができること。

聴聞審理では不利益処分の名宛人は次の行為をすることができる

・主宰者の許可を得て行政庁の職員に対して質問を発すること

・代理人の選任

代理人の資格は『必ず書面』で証明しなければならない。

代理人が資格を失った場合、代理人を選任した者は行政庁に対してその旨を届ける必要がある。

・証拠書類、陳述書の提出

当事者または参加人は聴聞の出頭に代えて主宰者に対して聴聞の期日までに証拠書類や陳述書（意見書のこと）を提出ことができる。

不利益処分に関わる文書等の閲覧

主宰者の許可を得て補佐人と共に出頭すること

聴聞の続行

聴聞を行った結果、聴聞を行う期間が経過したあとに必要があると認めるときは、主宰者は更に新たな期間を設けて聴聞を続行することができる。

これに対し、行政庁側が必要があると認めるときは、主宰者から提出された報告書を差し戻し、聴聞の再開を命ずることができるとされている。

聴聞は原則として『非公開』で行われ、主宰者は聴聞が行われた各期日ごとに聴聞調書を作成しなければならない。

聴聞の審理が行われなかった場合は、聴所聞の終結後、速やかに聴聞調書を作成しなければならない。

更に、聴聞終結後に不利益処分の原因となる事実に対する当事者の意見や主張に理由があるかどうかについて『主宰者の意見を記載した報告書』を作成し、聴聞調書と共に行政庁に提出しなければならない。

尚、不利益処分を書面で行う場合、その理由も『必ず書面で』行う必要がある。

行政庁は、不利益処分の決定をする際には提出された聴聞調書及び報告書の内容に応じて、報告書に記載された主宰者の意見を十分に考慮してこれを行うこととなる。

・不服申立ての制限等

行政庁または主宰者がこの節の規定に基づいてした処分については行政不服審査法に　よる『不服申立てをすることができない』

聴聞を経てされた不利益処分については、当事者及び参加人は行政不服審査法による『異議申立てをすることができない』

※聴聞を経てされる不利益処分には異議申立てができない、または不利益処分に関する節に対しては不服申立てをすることができないとされているが、この点は少し紛らわしいのでしっかり覚えておこう。

・弁明の機会の付与

『１』審理の方式について

弁明は行政庁が『口頭ですることを認めたとき』を除き、弁明を記載した書面を提出して行う。

弁明の機会の付与については、聴聞と異なり、書面審理を原則として、例外的に口頭弁論を認めている点に注意。

弁明を行う際には証拠書類等を提出することが出来る、この点については聴聞と同じである。

・弁明の機会の付与の通知の方式

行政庁は弁明書の提出期限までに相当な期間をおいて、不利益処分の名宛人となる者に対して次の事項を『書面で』通知しなければならない。

・予定される不利益処分の内容および根拠となる法令の条項

・不利益処分の原因となる事実

・弁明書の提出先および提出期限（口頭による弁明の機会の付与を行う場合にはその旨ならびに出頭すべき日時および場所）

・弁明の機会の付与について当事者に認められる権利

聴聞においては、文書閲覧権、参加人の規定が認められているが、弁明の機会の付与に関してはこれらの権利は認められておらず、唯一認められているのは『代理人の選任のみ』である。紛らわしいので注意が必要しましょう。

　『行政指導』

行政指導とは、行政機関がその事務の範囲内において、一定の行政目的を達成するために特定の者に対して、一定の作為又は不作為を求める『指導・助言・勧告』その他の行為であって“処分に該当しないもの”をいいます。

行政指導については前回のトピックで少しお話したかと思いますが、処分とは違って拘束力が非常に弱いモノです。

　～行政指導の一般原則～

行政指導は、

≪１≫一定の範囲内でのみ行え、非権力的

≪２≫あくまでも“国民の任意の協力”がなければ実現ができない

この定義からも行政指導の非権力性が伺えます、更に

※不利益取扱いの禁止

行政指導に携わる者は、相手が行政指導に従わなかったことを理由にして、不利益的・差別的な取扱いをしてはいけないことになっています。

これはつまりどういうことかというと、ここでいう『不利益』とは

・許認可を与えない行為

・今まで許容していた授益的行為の取消し

・申請の取下げ又は、内容の変更を求める行政指導にあっては、相手が行政指導に従わない意思を表明しているにも関わらず、行政指導を継続することにより申請者の権利を妨げるようなこと

・許認可等をする権限のある行政機関が、その権限を行使できない場合に、相手方に対し
その権限が行使できることを示して相手方に行政指導に従うことを余儀なくさせること

などが挙げられます。

要するに、許認可を与えるにしても差別的に取り扱ったり、今までは普通に受けていることができた授益的処分が受けられなくなったりするよう場合のことですね。

ただし、申請書などにおける形式上の不備（記載ミス、記載漏れ）について補正を求めることは“不利益的取扱い・内容の変更を求める行政指導にはあたらない”ことには注意です。
この場合、直接権利を妨げているとは考えにくいからです。

　～行政指導の方式～

行政指導に携わる者は、

・その行政指導の内容を明確にすること

・口頭で行政指導が行われた場合、相手からその内容が記載された書面の“交付請求”があった時、特別な支障がな限り、これを交付する義務を負う。

行政指導の本質は任意の協力ですから、内容が明らかであったり書面交付の手続きは当然に必要となるわけです。

ただし、次の場合には書面交付義務は発生しません。

・その場で終えられるような行為（緊急時の避難勧告など）

・既に文書などで通知している内容と同一の行政指導を行う時

これは読んでそのまま理解した通りです、緊急避難時にわざわざ書面なんて作ってたら逃げ遅れますし、一度書面で送っているのにまた同じモノを送る必要もないでしょう。

※複数の者を対象にした行政指導の通知

複数の者に対して同一の行政指導をする時は、

１．行政機関は予め

２．行政指導指針を定め（共通した決まりごとみたいなもの）

３．特別な支障がない限り、これを公表する

そして平成２６年度の行政手続法改正により、行政指導にも新しい規定が設けられました。

それが次の２つです。

・３６条の２　≪行政指導の中止等の求め≫

・３６条の３　≪処分等の求め≫

まず３６条の２ですが、これは簡単に言うと、

≪１≫行政指導が法律で規定する要件をみたしていないと思料（思い、考えること）

≪２≫行政指導した行政機関にその旨を申し出て行政指導の中止その他の措置を求めること

３６条の２第３項では

≪３≫申し出を受けた行政機関が必要な調査をし、行政指導が法律に規定する要件をみたしていないと認められるとき

≪４≫行政指導の中止、その他の措置をとらなければならない（法的義務）

４つに区分すると上記のような内容になります。

そして３６条の３ですが、これは

≪１≫何人も法律に違反する事実があり、それを是正する処分、行政指導がなされていないと思料するときは

≪２≫処分をする権限を持つ行政庁または行政指導をする権限をもつ行政機関に、その旨を申し出て

≪３≫処分または行政指導をすることを求めることができる

３６条の３第３項では

≪４≫申し出を受けた行政庁または行政機関は必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは処分または行政指導をしなければならない。

行政書士試験においては、法改正された部分は出題されやすいので、しっかりとマークしておきましょう。

次は、4項目の3つ目である届出です。

　『届出』

届出とは、行政庁に対して一定の事項を通知する行為を指します。

婚姻届、転出届、死亡届などがこれにあたると考えられます。

　　　命令等制定手続

≪命令って？≫

ある法規範を作りたいとか、政令など、法規的性質を持った命令を作る上で予め国民等から広く一般の意見を求めることです（情報も含まれる）

これは、俗に言うパブリックコメントのことですね。

命令も法的拘束力があるため、一般の意見を広く募集して適正な内容の命令を定めようとする動きですね。

※意見提出期間

原則として、“公示の日から起算して30日以上”です。

尚、やむを得ない事由がある場合、この日数よりも下回る日数を設けることができます。

意見公募の結果、命令等を定めた場合はその命令等の公布と同時に、提出意見を考慮した結果とその理由など、一定事項を公示する必要があります。

これはつまり、集められた意見がどのように活用されて、実際に定められた命令にどのように反映しているのかを明確にするという義務だと考えることができます。

～あとがき～

ここまで読んで頂いてお疲れ様でした。

行政法は記述式問題にも出題される法律です。

故に条文の知識を正確に理解していなければなりません。

暗記は学習においては絶対的な基礎です、覚えることから応用へ繋がるという姿勢が大切です。

行政手続法は実務において基本となる法律です、従って六法書などで繰り返し条文を読み込んでそれぞれの趣旨や行使できる権利などをしっかりと把握しましょう。

記述式問題にも行政手続法は過去に出題がなされているので、今後も出題される可能性は十分にあります。

行政手続法は全46条しかありませんから、条文の細かい規定などもしっかりと覚えましょう。

ここでは大まかな部分しか触れていないので是非六法書を参考にしてください。

余り細かいことは書いてありませんが、基本事項はしっかりと身につけておくのは試験対策としては常套手段と言えます。

他にも行政強制や行政行為（行政処分等も含む）は行政手続の中でも中枢的な存在です。

まずは全体的に軽くで良いのでザッと目を通して、基本知識を身につけていきましょう。

馴染みのない用語などが多い部分がありますが、慣れればそこまで難しくはありません。

繰り返しの学習が大切ですね。