法学院　行政書士試験制覇の扉コミュの行政書士試験対策　行政法理論①

　　　　　　　　　　　　　　　　　『行政法理論と行政行為等について』

行政法とは行政に関する法の総称であって、実際に行政法という名の法律は存在しないことは学習を始めている方なら当然知っているはずだと思います。

明示されている出題分野として区分けすると、行政の法原理・行政手続法・情報公開法・行政不服審査法・行政事件訴訟法・国家賠償法及び損失補償・地方自治法の7種類に区分けできます。

　『行政に関する法原理と作用』

これは主に、行政機関の組織や行政行為になどについて聞かれる部分です。

行政組織については今回説明は省きます、構成の内容をテキストで軽く確認する程度で間に合うと思うからです。

従来から試験で出題されてきた行政行為については、その種類と区分は確実に押さおく必要がありそうです。

大きく分けて、行政行為には『法律行為的行政行為』と『準法律行為的行政行為』があり、この２つの行政行為は更に次のように区分けできます。

　『法律行為的行政行為』

～命令的行為～

　・下命（禁止）

　・許可

　・免除

～形式的行為～

　・特許

　・認可

　・代理

　『準法律行為的行政行為』

　・確認

　・公証

　・受理

　・通知

許可と特許の違いに注意しましょう、特許とは本来権利として認められていない行為について、特別に権利または地位を設定する行為を指します。（設権行為とも言う）

これに対して許可とは、本来自由である行為を政策的理由で禁止しつつ、一定条件の下では、それを解除する行為を指します。

例をあげると、

許可：運転免許証の交付、宅建業の免許取得など

特許：公務員の任命など

　～瑕疵ある行政行為について～

行政行為は、一般国民に規制をかける国家権力ですが、瑕疵がある場合はどうなるでしょうか。

この場合、瑕疵の程度に応じて取り消しうる行政行為と無効な行政行為とに区分されます。

そしてこれらの根拠として行政行為には次のような力が働いています。

・公定力
違法な行政行為などであっても、権限ある機関によって取り消されない限り、一応有効なものとして扱われるというものです。

・不可争力
違法又は不当な行政行為などがあったとき、一定の期間を超過すると不服申し立てや訴訟を提起できなくなるというものです。

例でいえば、行審法による不服申し立て期間や、行訴法による出訴期間を過ぎた場合などですね。

・不可変更力
一度課した行政行為などの内容を行政機関側が自由に変更できないというものです。

しかし、その処分の判断に誤りがあるにも関わらず変更できないのはおかしいですから、この効力は主に裁決行為などに限って認められます。よって、全ての行政行為に認められている権限ではありません。

・自力執行力
行政機関は、裁判所の判決などを得ることなく自らの責任で、行政処分をしたり強制執行をすることが可能という原理のことです。

そしてこれらのほか、行政処分をした場合その効力には拘束力があることも当然こととなります。

話が戻りますが、これらの効力を有する行政行為に瑕疵がある場合では、『その瑕疵が重大かつ明白なもの』である場合は無効な行政行為となります。

例えば、金額が不明確な課税処分や、死者に対する免許の交付などがこの例にあたるといっていいでしょう。

重大かつ明白な行政行為以外の瑕疵ある行政行為は、取消しうる行政行為となります。

　～取消しと撤回～

取消しとは、民法でいう契約の解除と同じ効果があります。
つまり、行為時に遡って取消しの効果があるわけですね。

これに対して撤回は、将来に向かって効果が失われます。
民法でいえば、賃貸借契約の解除と同じ効果です。

取消しも撤回も法律の根拠なくして行えますが、一部例外があります。

・授益的行為

取消し：原則不可、ただし取り消すことが公益上取り消す必要性が大きい場合は例外として取消し可能

撤回：原則不可能

・不可変更力のある行為に対する取消し

取消し：職権取消し不可能

これらの取消し権者は、撤回は処分庁のみですが、取消しは権限のある機関（処分庁自身や処分庁の上級庁や裁判所など）によって取り消されます。

　～瑕疵の治癒と違法行為の転換～

瑕疵がある行政行為でも、瑕疵の程度に応じては治癒されたり違法性がなくなったりすることがあります。

例えば手続きにささいな違法の瑕疵があった場合などでは、重大でもなんでもないですし、軽い訂正をすればいいだけなのでそのまま手続きを進める方が良いこともあります。

瑕疵こそあるにせよ、こういったささいな場合では問題視されなくなる場合を瑕疵の治癒といいます。

これに対し、違法行為の転換とは一見してみると違法な行政行為だが、見方を変えると適法な行政行為であるという場合のことを指します。

例えば、死者に対して何かの許可処分をした場合、通常は無効なわけですがそれを相続人に対して行ったとみなすことで、適法な行為であると見る場合がそうです。

　～行政行為の附款～

附款とは、行政行為について一定の条件などを指します。
例えば、運転免許証の有効期限や眼鏡をかける義務など。

附款はつけるには、当該行為が法律行為的行政行為であることを必要としますが、その中で更に次の要件を満たさなくてはなりません。

・法律の規定で附款を付すことが可能であること

・行政庁の裁量判断の余地がある行為

　～附款の取消し～

附款が違法であった場合、その附款が行政行為の重要な要素でなければ附款のみ無効ということになります、重要な要素であった場合は附款だけではなく行政行為自体も一緒に無効となります。

今回はここまでとなります、如何だったでしょうか。

行政法を初めて学習される方はかなり取っ付きにくいと思いますが、具体的なイメージ像を思い浮かぶことができれば、理解は早まるかと思います。

基本的に法律的な堅苦しい表現が多いので、詰まるところその表現に慣れるかどうかの違いです。

少しずつでも良いので、確実に一歩ずつマスターしていきましょう。