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　　　　　　　　　　　　　　　　『行政不服審査法』

ここでは行政法の１つである行政不服審査法について記述します。

行政法入門という観点から、余り細かいことは書きませんが、基礎知識を中心に記述していきます。

『意義』

行政庁の違法又は不当な処分に対して、不服を申し立てる制度がこの法律のメインである。

つまり難しい言い方をすると、行政庁による公権力の行使、又は不作為に対して文句つけることができるのがこの法律の特徴。

不服申立ての種類は以下の通り。

・審査請求

・異議申立て

・再審査請求

『不服申立ての制限』

不服申立てはどんな処分に対しても出来るわけではない、第4条では不服申立てができない処分を列挙している。

逆に言えば、それ以外の処分に対しては文句をつけることが可能なのだ。
これを一般概括主義といって、法律で不服申立てができない処分を明白にすることで、出来る限り不服申立ての途を広げようとするのが一般概括主義の特徴である。

『不服申立ての期間』

いくら不服申立てができるとしても、不服申立てができる期間が定められている。

ここでは簡単にそれぞれの不服申立ての期間を確認してみよう。

・審査請求→処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内
　　　　　　または処分に対する裁決、決定があった日から1年以内。
　　　　　　但し、審査請求が遅れたことに対して正当な理由があれば不服を申し立てることができる。

尚、天災など不可抗力によって期間内に不服を申し立てることができない場合、天災などの自然災害が止んだ日の翌日から起算して1週間以内に不服を申し立てなければならない。

この他、行政庁に対して異議申立てをした際に、行政庁の決定に不服がある場合、特別な定めがなければ更に審査請求を行うことができる。

・異議申立て→処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内
　　　　　　　または処分に対する決定があった日から1年以内。

・再審査請求→処分に対する裁決があったことを知った日の翌日から起算して30日以内

では、どのような場合であれば不服を申してることができるのか。

・審査請求

『処分庁に上級行政庁がある場合』

但し、処分庁が主任の大臣であったり宮内庁長官など、特別な身分を持っている人が行う処分については審査請求をすることはできない。

『法律によって審査請求ができる場合』

条例に基づく処分については条例を含む。

・異議申立て

『処分庁に上級行政庁がない場合』

『処分庁が主任の大臣であったり宮内庁長官など、特別な身分を持っている人が行う処分』

・再審査請求

『法律によって再審査請求をすることができる場合』

『審査請求をすることができる処分につき権限の委任があった場合』

再審査請求についてはかなり限定的な場合のみ不服を申し立てることができる。

尚、一定の要件に当てはまる者は再審査請求に対する裁決に不服がある場合は更に再審査請求を行う事ができる。

審査請求は基本的に処分庁の直近上級行政庁に対して行うのが通常であるが、審査請求は処分庁以外の行政庁に対して行うものなので、別個の法律によって審査庁が定められていたり、行政庁からの教示によって定められた審査庁がある場合はそれに沿って不服を申し立てることとなる。

結論として、審査請求は『処分庁以外の行政庁に対して不服を申し立てる』ということになる。

これに対して、異議申立ては『上級行政庁がない場合』、『処分庁が主任の大臣であったり宮内庁長官などが相手である』場合の他、『法律によって異議申立てが出来る場合』に限られている。

・不作為に対する不服申立て

不作為とは何もしないことを意味する。
例えば飲食店営業の許可申請をしたにも関わらず、行政庁から何の応答もない場合がこれにあたる。

不作為に対する不服申立ては、審査請求又は異議申立てのどちらか一方を自由に選択することができる。
つまり、審査請求を行って不作為庁以外の審査庁に不服を申し立てたり、異議申立ての規定に沿って不作為庁に対して直々に異議を申し立てることも出来る。

但し、審査請求又は異議申立てのどちらかを行った場合、もう片方の不服申立てをすることはできないので注意が必要である。
あくまでどちらか一方のみを自由に選択することができるに留まるのだ。

不作為庁が主任の大臣であったり宮内庁長官などが相手である場合は、例外として異議申立てのみが認められることにも注意が必要である。

・不服申立ての方法

不服申立ては原則として書面で行わなければならないが、法律によって口頭で不服を申し立てることも可能である。

審査請求を行う場合、正副2通の不服申立て書が必要となる。
正本は審査庁が保有し、副本は処分庁に郵送される。

これに対し、異議申立ての場合は直接処分庁に不服を申し立てる為、1通の不服申立て書で構わない。

・権利なき社団・財団による不服申立て、総代の互選

法人格を有しない社団、財団は権利なきものとして扱われる為、社団及び財団の名で不服を申し立てるはできない、この場合代表者た管理者の定めがある場合、その者の名で不服を申し立てることができる。

総代とは謂わば不服申立て人の代表者のようなものであって、最高3人まで互選することができる。

これは多数人が不服申立てをしようとする場合に、不服の要約を代表者を通じて行政庁に申し立てる場合に用いられる。

尚、総代の互選は、必要があると判断された場合は審査庁から互選を命じられる場合もある。

総代が選任された場合、不服申立て人は総代を通じてのみ不服申立てに関する行為を行う事ができる。

不服申立て人に対する行政庁に通知は、2人以上の総代が互選されている場合は1人の総代に通知すれば足りるとされている。

総代は不服申立ての取下げを除き、不服申立てに関する一切の行為を行う権限を有している。

・代理人による不服申立て

不服申立ては総代だけでなく、代理人によって行うことも出来る。

総代と代理人は一見同じような立場に見えるが、決定的な違いは不服申立ての取下げが出来るかどうかにある。

総代は前述した通り、不服申立ての取下げはいかなる場合でも禁じられている反面、代理人は『特別の委任』があった場合には不服申立てを取り下げることができるのが大きなポイントになる。

無論、代理人も不服申立てに関する一切の行為を行う事ができる。

・資格の証明

代表者や総代、代理人の資格は『必ず書面で証明しなければならない』

資格を失った場合は不服申立て人が行政庁に対してその旨を書面で届け出なければならない。

・誤った教示に関する事後救済規定

行政庁が処分を行う場合、原則書面などによって、不服申立てや取消訴訟に関する教示がなされる。

例えば運転免許証の交付を受ける場合、書面で『○○を被告として○○までに当該処分の取消の訴えを提起することができます』などという文面が書かれている場合がこれに該当する。

審査請求を行う場合で、行政庁が審査庁でない行政庁を審査庁として教示した場合、審査庁でない行政庁に不服申立て書が届いた際に、元の審査庁に書類を送付し、その旨を不服申立て人に通知しなければならない。

処分庁が誤って異議申立てができる旨を教示した場合、不服申立て人が処分庁に異議申立て書、或いは異議申立て録取書（口頭で不服申立てを行った場合に行政側が記載した不服申立て書のこと）に基づいて処分庁に異議申立てを行った場合は、処分庁は送られてきた不服申立て書をすみやかに審査庁に送付し、その旨を不服申立て人に通知しなければならない。

・法定期間の誤り

処分庁が誤って法定の期間よりも長い期間を不服申立て期間として教示した場合、教示された期間内に不服申立てを行えば、初めから適法に不服申立てを行ったものとみなされる。

・異議申立て前置主義

処分について審査請求及び異議申立てが可能な場合、先に異議申立てを行ってから審査請求しなければならない、これを異議申立て前置主義といって、この場合の審査請求申立て期間は60日以内ではなく30日以内とされる。

但し、この規定は些か例外的な規定である為、本来は審査請求が不服申立ての中心となる。これを審査請求中心主義と呼ぶ。

・補正

不服申立て書が不適法であったとしても、それが補正可能な場合は相当の期間を定めて補正を『命じなければならない』

※命じることができる、ではなく命じなければならない、という点に注意。

・弁明書及び反論書

弁明書とは不服申立てを受けた処分庁が処分をしたことについて、理由を述べた書類を指す、簡単に言えば言い訳のことである。

これに対して不満があれば不服申立て人は反論書を提出することができる。

・参加人

利害関係人は審査庁の許可を得て参加人として審査請求に参加する事ができる。

逆に審査庁の方から参加人として審査請求に参加するよう求めることもある。

・審理の方式

行政手続法による弁明の機会の付与と同じくして、審理は原則書面にて行われる。
但し、審査請求人側から申し出があった場合は口頭で意見を述べる機会を『与えなければならない』

※ここも注意が必要。『与えることができる』ではなく『与えなければならない』である。

この他、審査庁の許可を補佐人と共に出頭することもできる。

その他として、不服申立て人の申し出または行政庁による職権で下記の調査を行える。

・証拠書類の提出（26条）

・参加人の陳述および鑑定の要求（27条）

・物件の提出要求（28条）

・検証（29条）

・審査請求人または参加人の審尋（30条）

29条の検証については審査請求人側から申し出があった場合、あらかじめ日時及び場所を通知しこれに立ち会う機会与えなければならない。

・職員による審理手続（31条）

・執行停止

執行停止とは、その名の通り行政処分の効力を停止させるものである。

執行停止の申請した場合、直ちに執行停止がなされるのではなく、原則として処分やそれに関する手続の続行は妨げない（執行不停止の原則）

処分庁の上級行政庁である審査庁は、審査請求人の申立てにより、または職権で執行停止を行うことができる。

処分庁以外の審査庁は審査請求人の申立てにより『処分庁の意見を聴取したうえ』執行停止をすることができる。

また、処分の執行や手続の続行により生ずる重大な損害を避ける為、緊急の必要があると認めるときは、審査庁は執行停止をしなければならない。

ただし、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、処分の執行もしくは手続の続行ができなくなるおそれがあるとき、本案について理由がないと認めるときは執行停止をしなくても良い。

・執行停止の取消

執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあったり、処分の執行、手続の続行を阻害する場合があるときは審査庁は執行停止を『取消すことができる』

※取消さなければならない、ではなく『取消すことができる』となっている。
審査庁の裁量判断によって執行停止の決定または取消がなされるのである。

・審査請求の取下げ

審査請求人は、裁決があるまではいつでも審査請求を取り下げることができる。
この場合必ず書面で行わなければならない。

※審査請求による審理の結論を『裁決』と呼び、これに対して異議申立ての審理よる結論を『決定』と呼ぶ。

・教示しなかった場合の救済措置（58条）

行政庁が教示をしなかった場合、処分について不服がある者は処分庁に不服申立て書を提出することができる。

送付を受けた処分庁は、不服申立ての正本を審査庁に送付しなければならない。

不服申立書の正本が送付されたときは、はじめから当該審査庁または行政庁に審査請求または当該法令に基づく不服申立てがされたものとみなされる。

必要的教示がなされたかった場合の規定により不服申立書が提出されたときは、はじめから処分庁に異議申立てまたは法令に基づく不服申立てがされたものとみなす。

～あとがき～

最後まで読んで頂いて有難う御座いました。

行政不服審査法は割りと解りやすい条文が多く、単純なものが多いですから是非得意分野にして欲しいところです。

行政手続法もそうですが、行政事件訴訟法については民事訴訟法の知識もやや必要になるので少々厄介な法律ではありますが、出題傾向さえ掴めば高得点が狙えます。

行政法をマスターできれば合格への途は必ず開けます。

妥協せずに共に頑張りましょう。