法学院　行政書士試験制覇の扉コミュの2015年　行政書士試験対策　40字記述式編②

前回に引き続き、今回は記述式第２弾、行政法をテーマにした題材を執筆していきます。

長くなるかも分かりませんが、最後まで一読して頂き、少しでも皆様の勉強の参考になれば幸いです。

さて、今回は行政法の記述式対策ということですが、記述式の基本的な対策法は前回の①で述べた通りです。

行政法もだいたいのところは「誰が」「どんな理由で」「どのようなことができるか」という問が多いです。

解答するときは問に合わせた回答をすることを意識しましょう。

では、今回は平成18年度に出題された行政法の過去問を題材にして考えてみましょう。

多少問題文は省きますが、論点となる部分のみ掲載致します。

「飲食店の営業許可について、近隣の飲食店営業者が営業上の利益を害されるとして営業許可の取消訴訟を求めた。この場合裁判所はどのような理由でどのような判決をするか40字程度で記述しなさい」

少し文章が長いですね、論点をバラバラにしてみましょう。

誰が→「近隣の飲食店営業者」

どのような理由で→「自己の営業上の利益が害されるとして」

どのようなことをしたか→「営業許可の取消訴訟を提起した」

これがまず最初の論点となりますが、問題文には続きがありましたね。

取消訴訟を提起した後、裁判所が何をするかという部分です。

つまりこの問で聞かれている論点は二つということになります。

①近隣飲食店営業者の行為

②裁判所の行動

この問で聞かれることは裁判所の下した「結論」とその「理由」の２つとなるのでこの部分について記述すれば良いことがわかります。

では、模範解答を見てみましょう。

「裁判所は、近隣の飲食店営業者が原告適格をもたず不適法な訴えをしたとして、却下判決をする。」

それでは解答内容を分析してみましょう。

ここでは行政事件訴訟法の知識が必要となります。
用語の意義など、一つ一つ丁寧に見ていきたいと思います。

まず、ここでは裁判が背景となっているので、模範解答にもあるように「原告適格」という用語がありますね。

原告適格とは、裁判を適法に提起することができる法律上の資格のことをいいます。

もっと言えば、訴えを起こす上で自己に法律上の利益がなければいけないということです。

問題文では飲食店営業者が取消訴訟を提起しています、つまりここでは新規営業者の営業許可を取り消すことについて法律上の利益があることを理由に訴えを提起した、ということになります。

逆に言えば、訴えを起こすことにつき、法律上の利益がなければ原告としての資格がないことになり不適法な訴えとなるわけです。

※原告→裁判を提起した側の者　被告→裁判にかけられた側の者

そして模範解答では近隣飲食店営業者が原告適格を持たないことを理由に不適法な訴えをしたとして却下判決がなされています。

では、何故却下判決が下されているのでしょうか？

判例によれば、新規営業者が開業することにより独占的利益を得る可能性はあるものの、それは反射的利益に過ぎない為、原告適格として認めるには足らない理由であるとしているわけです。

難しい言い方をすると、この反射的利益は法律上の利益として認めることができない利益ということですね。

つまり新規営業許可を取り消すレベルには至らない利益と言えます。

※参照条文

原告適格「行政事件訴訟法第9条1項」

取消訴訟は当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起することができる。

「行政事件訴訟法第9条2項」

原告適格の有無は、当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみでなく、当該法令の趣旨、目的や当該処分において考慮されるべき利益の内容、性質なども考慮して判断される。

それでは、キーワードを確認してみましょう。

問では裁判所は何をするかということと、何故それをしたかという2点が聞かれています。

まず、却下判決する理由からキーワードを考えてみましょう。

ここでは誰が何をするかが論点となりますが、却下判決をするのはもちろん裁判所ですから、ここでいう「誰か」とは当然「裁判所」となります。

次に理由です、先ほど分析したように「訴えを提起するについて法律上の利益がない」ことが挙げられますね。

模範解答では原告適格を持たず、不適法な訴えをしたとありますが、実際このような難しい言い回しをする必要はありません。キーワードの趣旨が同一であれば別の言葉を使っても高い評価を期待することができます。

なのでここでは敢えて、「営業許可取り消しにつき、法律上の利益を有しない為」を理由にしておきます。

最後に結論です。営業許可取り消しにつき法律上の利益がない、つまり原告適格をもたないことによる不適法な訴えがなされたので、この場合裁判所はその訴えを却下しますが、却下をする場合でも必ず判決で示さなくてはなりませんので、「却下判決をする」というキーワードが必要ですね。

さあ、これで３つのキーワードが揃いました。実際に文章にしてみましょう。

「裁判所は」「原告が法律上の利益を有しない為」「却下判決をする」

　　　　　　　　　　　　　　　↓

「裁判所は、原告が法律上の利益を有しない為、却下判決をする」

これが正解文となります、記述式対策前編と要領は全く同じです。

今回新しく出た注意点は、趣旨が同じであれば違う用語に置き換えても良い、ということでした。

満点を狙えるかどうかまでは保証し兼ねますが、キーワードをしっかりと書き込めば高い評価を期待できます。

尚、趣旨が同じであるからといって用語を置き換えるとは言えど、ひらがな等の砕けた言葉は使わない方が良いかもしれません。

漢字で表現すべきところは漢字でしっかり書きましょう。

次に、気になる採点基準についてお話してみたいと思います。

記述式の採点基準は明らかになっていませんが、重要な用語が抜けているだけでも大きく減点されたり、文章が支離滅裂的であっても割と高い評価を得ることが私が収集した情報ではあり得るようです。

ただし、これは絶対そうとは言い切れないので鵜呑みにしてほしくありませんが、記述式の基本は文章として成立させることと、キーワードを書き込むことの2点のみを守れば高い評価を期待できるのは何度も解説しましたね。

記述式は年によって難しかったり簡単だったりするようですが、私の感覚では年々記述式の問題難易度は下がっているように思えます。
基本知識があれば記述可能な問題が多いということです。

難易度が低い場合、採点基準は厳しくなる可能性も考えられますが何れにしても基準が明らかにならない以上考えるべきところではありません。

以上で記述式対策②が終了となりました、お疲れ様です。如何でしたでしょうか？

行政法は堅いイメージが抜けない法律なので、理解には時間がかかるかもしれませんが、民法のようにボリュームの大きい法律は少ないですから、１つ１つ丁寧に見て、何度も繰り返すことで知識が定着していきます。

行政法は実際に条文に触れる学習法がとても有効的です、是非六法書などを活用して条文と判例共に押さえていってください。