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錯乱坊主の書斎コミュの『月星円舞曲(ムーンスターワルツ)』vol.03

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『月星円舞曲(ムーンスターワルツ)』vol.03

★第9話

本日はDMDの定例集会である。
基本的に勤務時間を自由に選べる会社ではあるが、定期的に全員の所在&状況を確認したり、綱紀粛正などの必要もあるので、このような集会が三ヶ月に一回あるのだ。
ただし、ゴールド以上のDMD職員は免除である。

職員が全員集まってはいるモノの、定例会に参加しているのは各グループのリーダー以上だけである。
定例会が終わるまでロビーで雑談していたアスホ・イツキに声をかけた者がいた。
それは今年の入社試験で一緒に合格したマヤ・ミツイシである。
ただ、アスホは合格で、マヤは補欠合格であった。
「あらアスホさん、お久しぶり。入社してすぐ狙撃されるなんて、活躍しているみたいね。」
「あはははははは……(彼女の名前、忘れた……)。」
「私も負けずに活躍して、仮免社員には珍しいナンバー持ちになってしまいましたのよ。」
「わーっ!! 本当だーっ!! すごーいっ!!」
マヤの身分証には半年の仮免期間終了を待たずして、ナンバー1の表記があった。
「すごいすごい、もうミズハちゃんと同じレベルなんだ♪」
いきなり話を振られたミズハ・モリゾノが、飲んでいたジュースを吹き出した。
「ミズハ? もしかして“1万年のミズハ”が、アスホさんの仲間なの?」
「私の教育係でもある先輩だよ……って、“1万年”?」
「そう、“1万年”とは“万年ナンバー1”の略ですのよ。あなたも、そうならないように気を付けませんとね。」
更に何か言いたそうなマヤではあったが、アスホは別の方向から呼ばれた声に反応した。
一瞬、周囲がざわついた。
その声の主がシルバー職員であり時空術師のチグサ・ハヤシバラだったからである。
後ろに弟子……、男性?女性?らしき人が控えている。
「ごめんなさいね、いきなり呼び止めて。ちょっと懐かしいオーラが見えたもので……」
「オーラ……ですか……?」
尚も話を続けようとした時、サファイアの声が社内放送で流れ、ミズハをグリフィス支長の部屋へ呼び出した。
雑用か何かしらとマヤが言うと、マヤの肩にポンっと手を置く者がいた。
「あっ、シキブ・リーダー!!」
「雑用なのか、信用あるのか知らないけれど、キャップに直接依頼される職員は、そういないのよ。」
「なら、なぜ“1万年”……。」
「理由があるのか、飼い殺しにされているのか……だけどね……」
シキブ・リーダーがアスホに優しく微笑みかけた。
「ミズハが教育係なら吸収するモノも多いハズよ、がんばってね。」
「はいっ!!」っとミズハ。
「ついでにi(アイ)もヨロシクね♪」
「えっ!?」
質問するヒマも無く、グリフィス支長の部屋から出てきたミズハがアスホを引っ張って行った。
アスホは、また砲台に乗せられるコトを予感していた……。

「よし、アスホ、撃って撃って撃ちまくれーっ!!」
「いやぁぁぁぁっっっっ!!!!!」



★第10話

アスホの生活は苦しい。
最近はDMDの仕事料をピンはねするミズハと、仕事をめったにしないi(アイ)が、ほとんど居候状態でアスホの部屋にいるからだ。
結果として、アスホの基本給だけで3人が生活する状態となり、限度がきていた。
どうしようか悩んでいると、ミズハが賞金付き指名手配犯を捕まえれば?と言いだした。
ちなみに賞金稼ぎもDMDの立派な仕事である。
警察や関係者から依頼が無い賞金付き指名手配犯なら、誰が捕らえても良いコトになっている。
そこでミズハがi(アイ)に某所をハッキングさせ、一人の宝石専門窃盗犯の指名手配犯を見つけた。
それは「怪盗朱雀」、5年ほど前から世間を騒がせている宝石専門のドロボウである。
しかも予告状が火星軌道上の宇宙ステーション内宝石展示場に届いていた。
アスホとミズハとi(アイ)は宇宙ステーションに向かおうとドアを開けると、そこには定例会で出会った時空術師チグサの後ろに控えていた男性みたいな女性がいた。
彼女の名はワオン・フジ、なんとアスホ所属するミヒロチームの最後の一人であった。
ミズハが吐き捨てる。
「ウチらは忙しいんだ、用なら後だ後っ!!」
「別にお前に用は無い。」
「なら何しているんだ?ココには“ポチ”にやるエサはねぇぞっ!!」
「ソレを言うな……。( ̄皿 ̄;)」
「なんで?“ワオ〜ン”なんだろ?」
「やかましい、“1万年”よりは、よっぽどマシだっ!!」
険悪な雰囲気になった二人の間にアスホが入ってきた。
「で、何の用事なんでしょうか?f(^▽^; )」
「あぁ、チグサ師匠の命令でな……」
どうやらワオンはチグサ師匠に「アスホの近くにいると修行ができるわよ」と教えられたようだった。
ミズハは嫌がったが、ワオンが個人用小型宇宙船を持っていたので、結局、4人で宇宙ステーションに乗り込む事になった。
今回はDMDの仕事ではないので、DMDの宇宙船は貸してもらえないのだ。

宇宙ステーションでは、すでに警察関係者や何組かのDMD職員達が到着していた。
その中には北都翔刑事もいた。
アスホとミズハが北都刑事から情報を引き出そうと雑談している間、ワオンは宝石展示場を見回っていた。
i(アイ)はワオンの宇宙船で留守番である。
結局、明日の内に宝石の王冠を盗み出すという予告状が届いていた事しか北都刑事から聞きだせなかった。
ワオンは、ただ者で無い雰囲気を発している者を何人か記憶していたので、i(アイ)がハッキングした宇宙ステーション来訪者データで照合してみた。
だいたいがDMD別支局の職員だったりフリーの賞金稼ぎだったりしたが、一名だけデータの無い者がいた。
不敵な微笑みを見せるワオンにミズハが言う。
「ワンちゃん、該当者がいたようだな。」
「……、お前には教えないぞ……。」
「めんごめんご♪ 教えてくださぁ〜いワオン様ぁ〜♪」
「……気持ち悪い……、紅くて長髪の妖艶な女性が、唯一このデータに無いな。多分、ビンゴだ。」
ワオンがi(アイ)からの通信を切った瞬間、宇宙ステーションの様々な場所で小爆発が起こった。
何事かと周囲を見回すより早く、臭気爆発である事を感じ取ったミズハが簡易防毒マスクをアスホとワオンに投げてよこした。

宇宙ステーションが、すっぽり煙に覆われ、晴れた後に立っていたのはアスホ達3人と、マスクにマントの紅い影、怪盗朱雀だけであった。
ミズハがマスクを外し、朱雀に向かって言う。
「まさか直径2kmある宇宙ステーション全体を催眠ガスで包むとは……」
「ミズハ、まだマスクを外すのは早いっ!!」
ワオンの忠告が遅く、ミズハは、コトンと眠ってしまった。
その刹那に朱雀は王冠へと走り、ワオンが追った。
ワオンが展示場に入ると、朱雀は警報を堂々と鳴らし、王冠を持ち上げて値踏みしていたように見えた。
ワオンが朱雀との距離を縮めようと突っ込むと、朱雀が王冠を投げてよこした。
朱雀は、王冠を傷つけないように注意しながら受け取ったワオンの延髄に手刀を叩き込み、動きが止まったところでマスクを奪い取った。
「しまった」と考える暇も無く倒れるワオン。
「渡さないっ!!」と飛び込んできたアスホにも手刀を向けようとしたが、ピタリと手を止めた。
「あなた、DMDのアスホさん?」
「えっ!?」
「うふふっ。私の仲間がね、事故とは言え、あなたを狙撃してしまった事を悔やんでいたわよ。でも、許してやってね♪」
「ええっ、それって……」
隙ありとばかりにアスホもマスクを取られて昏倒した。

高笑いを残し、朱雀が宇宙ステーションを離れたのは、午前0時を1分過ぎた頃であった。




★第11話

アスホ達が怪盗朱雀と対決した翌日、DMDでは、ある問題が持ち上がっていた。
唯一、朱雀らしい女性の素顔を目撃しているワオンが、警察とDMD本社のモンタージュ作成を拒否していたのだ。
それは、次に朱雀から予告状が届いた時、自分を同伴させるためであった。
モンタージュが無いと、朱雀の素顔を唯一目撃しているワオンが現場にいないワケにはいかないだろうと考えてのコトである。
まぁ、もともとワオンはミヒログループと一緒にいるコトが少なく、グループ外である時空術師チグサの元に入り浸っているDMD内の問題児であったので、評判が悪くなるコトは気にしていないらしい。
気にしているのはミヒロリーダーくらいだ。(×_×)
メンバーの素行が悪いと、管理職は苦労する……。
しかも獲得ナンバーはミヒロよりワオンの方が上であるコトが、プライドの高いミヒロ・リーダーを悩ませていた。
つまり、ワオンはすでに班のリーダーとしてランクアップされても良いのだが、生活態度が悪いので先送りされ続けているのだ。
ワオン本人は気にしていないらしいが……。
今のワオンを支配しているのは、朱雀にあしらわれた悔しさだけである。
結果、地球上の博物館に朱雀からの予告状が届き、正式にDMDに依頼があった事も重なって、ワオンが警備に同行するコトとなった。
もちろんワオンの要望で、アスホ、ミズハ、i(アイ)も同行している。
ただし、今回の警備を失敗した場合は、モンタージュの一般公開を約束させられている。

博物館に到着すると、すぐにワオンは博物館の中に入り、構造や人物を調べ始めた。
アスホとミズハは警備していた北都刑事に捕まっている。
「お前らとオレの仲じゃねーか、朱雀の事を教えろよぉ〜。」
「ごめんなさいです〜。」
北都刑事によると、今回は警察も催眠ガス対策をとっているとの事であった。
「そういえば、ミズハはよくマスクなんて用意していたよねぇ〜。」
「アタシはメカニック工具一式は常備してんのさ。」
ミズハは常時、工具を空間転送できる装置を持っているのだ。
暴漢に襲われた時にスパナやなんかで撃退したのは、この装置のおかげで、塗装用のマスクもストックしていたのだ。
ここでアスホはミズハがメカニックのエキスパートである事を知った。
そういえば朱雀と戦ったワオンの動きから、彼女は格闘技のエキスパートなんだろうと思った。
i(アイ)は言わずと知れたデジタル機器の天才である。
そう、DMDの職員は、それぞれ得意分野を持っているのだ。
アスホは自分の得意分野を持たなければと考え始めていた。



★第12話

今回は宝剣を頂くという予告の日を挟んだ三日間を厳重警備するコトとなった。
ただし、DMD本社の計らいにより、DMD社員はワオン、アスホ、ミズハ、i(アイ)の4人である。
本当は警察関係者も引き上げて欲しかったが、それは無理である。

怪盗朱雀は予告日当日に堂々と正面から入ってきた。
警察関係者は全員昏倒している。
後で知ったコトなのだが、警察の制服の塗料に反応して睡眠性のガスを発生させるミスト(霧)を使われたようだ。
当然、朱雀はワオンとの直接対決になるコトを想定しているだろう。
その想定の中には、ワオンには捕まらないという自信も含まれているのは間違い無い。

朱雀が宝剣展示場に入ると全ての電源が停止し、出入り口の開閉ができなくなった。
これはココにいないi(アイ)の仕業で、予定通りである。
朱雀と宝剣の間にはワオン。
「先日はどうも。リベンジ受けてくれるよな。」
「恥の上塗りにならないといいわね。」
二人の拳が交錯した。

ワオンは格闘技でDMDの職務をこなし、ナンバーを積み上げる生っ粋の格闘家である。
しかし、朱雀の強さは、それを上回っていた。
何度かの攻撃を受け、ふらつくワオンにミズハが言い放つ。
「ポチ、なんで術を使わない……。」
「それは私の格闘家としてのプライドが許さないっ!!」
「そうか、なら勝手に恥の上塗りを重ねろっ!!」
朱雀は今のやりとりをハッタリだと考えていた。
そこに意を決したアスホが話し出した。
「ワオンさん、本当に“術”で、その劣勢を打開できるのですか?」
「できるが、しないっ!!」
「なら……。」
つかつかつかと宝剣の場所まで歩いて行ったアスホが、宝剣をつかむと、その刃を抜いた。
「ワオンさんが負けたら、この宝剣で私を刺します。」
「なっ!?」
「私の血や油で宝剣の価値が下がるとは思えませんが、朱雀サンの興味を失せさせるコトができれば良しです。」
朱雀が問う。
「その程度で私が興味を失せさせるとお思い?」
「できなければ、この宝剣で私を刺し貫いても渡さない覚悟です。」
ワオンはアスホの覚悟の気迫に“本気”を感じ取り、ため息を付いた。
「ばかやろうが……。(オレはチグサ師匠以外から教えられるのは嫌いなんだが……。)」
ワオンの構えが変わった。
構えが変わった途端、ワオンに朱雀の物理的攻撃が一切通じなくなっていた。
しかも徐々に動けなくなっていた。
朱雀は観念して、大人しくワオンに捕まった。そしてワオンを怪しく見つめる。
「今のは力場? いや、“固定空間”ね……。」
「さあね?」
確信した朱雀は、その後警察が連行して行った。
刑務所に入る前に逃げられたのだが。
ワオン達と対決するより、警察から逃げる方が楽だと考えて実行したようだった。

とりあえず一件落着ではあったが、国宝の宝剣を乱暴に扱ったコトが問題となり、賞金も警備料ももらえなかった。
結果、アスホの部屋にワオンという居候が増えただけのコトであった。
骨折り損のくたびれもうけである。

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