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館林とアートコミュの「要塞ベッド」

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「関わりたくありません」と強烈な意思表示。「要塞ベッド」は、引き籠もりや自閉症を象徴する世界観として栗山央があみだした言葉である。偏った欲望から生み出される執着は、孤独をいっそう募らせる。社会が非自己化し、好ましくない他者に見え始める。そこに漂う雰囲気が恐怖なのである。
 はからずも要塞と化してしまうベッドに集められてきたモノ達、要塞とはほど遠く見えるその装いは、ロリータ衣装が戦闘服であることを意味している。この波及効果が、まさか1980年代の陰りが見え始めたこの国の経済を救うことになろうとは、誰も想いもしなかったにちがいない。ゲーム、アニメ、コミック等がシャーマンに成り代わって思春期の通過儀礼を一手に引き受けていった。何よりも経済を優先した社会システムの弊害は、キノコの菌糸のように社会全体を覆っていく。私達は、ちょうど良い受け皿をすべての人に用意するという模索から遠ざかってしまったのかも知れない。
 「かわいい」を売り物にする経済の成長と「要塞ベッド」の異常なまでの増加は、密接に関係していると栗山央は考えていた。「かわいい」で固められた「要塞ベッド」、こんなに「かわいい」のだからいじめないでくださいと言わんがばかりの傍らでは、戦闘シーンがゲームの中で繰り広げられていた。生死感がリセット的になってゆく軽さをどうすることもできない。思春期をむかえた彼らにとって「要塞ベッド」に立て籠もったまではよかったのだが、シャーマン不在の中での籠もりは、無意識との交通がうまくない。滅多なことでは破られることがなかった命のシールドが簡単に破られることになった。
 『うつろなのりもの 栗山央展』は、思春期を「要塞ベッド」で過ごすことが、如何に頼りない虚ろなものであるかを宮崎勤事件の「ネズミ男」をモチーフにして展開される。思春期の危うさに社会システムが悪乗りした状況がどんな無意識界を創り上げていくのかを示そうとしている。
 ギャラリー中央に「要塞ベッド」を配置し、その頭上を天井からつり下げられた飛行船がぐるぐると回転している。これをレインコートに隠された「ネズミ男」の仮面を付け、寝ころびながら見るように仕掛けられていた。「ネズミ男」の部屋を再現し、参観者に「ネズミ男」として体験してもらおうとする栗山央の意図が見て取れるだろう。仮面をつけると視界が極端に狭くなる。この範囲こそ怯えながらも社会と接点をもてる限界、「ネズミ男」が息を潜めながらも呼吸できる世界なのだ。中途半端に籠もるのでなければ本来、ここを突き抜け無限の広がりの中へと解放される。そういう意味で壁面全体に突き出したパイプ状のものは、現実と夢(異界)を行き来するトンネルを象徴していたと思われるのだが、何時の間にかネズミの出没する通り道になってしまったようだ。パイプ内を覗くと穀類や昆虫の死骸、魚の骨などが詰まっていてネズミの生態を想像させる。「ネズミ男」の正体を位置づけるとすれば、どうやら無意識界のほんの入口のところで立ち往生している自意識の化身であろう。
 最後の頼みの綱であった筈の無意識界との交通がこのようなことになるとは、ゲーム、アニメ、コミック等がシャーマンに成り代われないことを証明している。
 栗山央は、完全に閉塞状態に陥った世界を現すことで、ヒト社会の末期的な危うさを示した。無意識界との交通が如何に大切であるかを示唆させ、経済をあまりに優先させてきた私達のシステムに何か重大な誤りがないのか問い掛けてくる。

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