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ホスピタリティコミュの機長

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十数年前、私が航空自衛隊を退職する直前の話をします。

私は輸送航空隊に所属し、輸送機の整備員をやってました。
それまで、自分の整備した飛行には乗った事が無かったのですが、退職前に整備員教育の為の訓練飛行に同乗する事となりました!

フライト当日は若干の雲はあったものの、おおむね晴れ。機長、副機長、航空機関士、ナビゲーター、ロードマスターの各搭乗員と整備員の飛行前点検が終わると、輸送機に乗り込みエンジン始動!貨物室の座席でワクワクしながら離陸を待つ。やがて機体はエプロンから誘導路へ動き出し滑走路のエンドへ・・・
エンジンの出力はミリタリー(MAX)になり、自分の声さえ聞こえないぐらいのジェットエンジン音の中、滑走路を走り出し数秒で離陸!貨物室から操縦席を覗くと窓ガラスには、真っ青な空だけが見えてました。

この日の訓練は、2機編隊で飛行し物投(積荷の落下傘降下)のパターンのみと、編隊の組み換えを行い、群馬上空を飛行し最後に基地に帰投した際にタッチアンドゴーを数回やって終了といった内容でした。

水平飛行に移った輸送機は、貨物室の後部後部ドアを大きく開け、物投のパターンの飛行をしました。後部ドアの外には地上の山々が丸見え!!本番では輸送物資に落下傘を付けて投下するのです!
物投の訓練を終えると、ナビゲーターが私を操縦席に呼びました。
ヘッドセットを渡され装着すると操縦席に座るよう言われ、初めて飛行中の操縦席に座りました。
左の窓を見ると、一緒に編隊飛行する輸送機の姿が見え、まわりは一面青の世界が広がっていました。すると機長が「いまからGがかかるよ!」と言うと、突然目の前の地平線が縦に・・・いや、乗っている機体が急旋回をして編隊をブレイクしました!水平飛行に移ると、さっき左にいた輸送機は今度は右側にいて、今度は先に急旋回をして私の乗る機体から遠ざかって行き、それを追いかけるように自分達も急旋回しました!

一通りの訓練を終えた2機は基地に向け帰投を開始しました。
機長が「あれ見てごらん、榛名湖だよ!」と言って指差した方向を見ると榛名湖が見え、同時に山々も目に飛び込んできて、空からみる地上は美しいの一言でした。
しばらくすると、機体は高度を下げました。すると機長が「君は熊谷の教育隊を卒業したんだよね?あれを見てごらん!」と、また指した方向を見ると・・・
私が卒業した教育隊がある熊谷基地が、ハッキリと見えました!!

教育隊とは、自衛隊に入隊するとまず配属される部隊で、三ヶ月間自衛官としての基礎を叩き込まれる教育(研修)部隊なのです。ここでは毎日厳しい訓練をしました。そして一緒に入隊した同期と同じ釜の飯を食い、14人部屋でともに寝起きし、毎日訓練に明け暮れ、時にはケンカして班長に死ぬほど走らされ、楽しい事、辛い事、悲しい事を同期と共に感じ、バカをやり、人生で最高の宝(友人、いや戦友ですね!)を得た場所でした。卒業する時、一番苦労した奴ほど泣いていましたよ。班長は父親のようであり、同期は兄弟のようでした・・・
自衛官にとって、教育隊は人生の中で特別な場所なのです。

眼下にある教育隊を見て、「班長どうしてるかな?小隊長は?全国の部隊に行った同期達はどうしているのだろう?あの時こんなバカをみんなでやったな!!」と教育隊当時の事が色々思い出され、機長に「懐かしいですね!」と一言。機長は「そうか、懐かしいよな!」と笑顔で答えてました。

機体は基地に近付くと高度を下げ着陸態勢に移行し、さっきまで小さかった街並みが、みるみる大きく見えてきました。
そして滑走路にタッチダウン!と同時にエンジンをミリタリーに入れて再び離陸!!
タッチアンドゴーを2回やった後、さらに滑走路に進入しタッチダウン!今度は同時に逆噴射をかけ急制動!!
着陸した機体は誘導路を通りエプロン地区へ。整備員の誘導に従い駐機場所へ機体を停止させてフライト終了!
機体から降り、機長に「ありがとうございました!」と敬礼をすると、「自衛隊辞めても頑張ってな!」と言いながら敬礼を返してくれました。

機長は辞める私に、自衛隊で得る最高の宝(教育隊=仲間)を見せる為に教育隊上空を飛行ルートとする訓練便に同乗させてくれ、高度を下げて、わざわざ古巣の教育隊がある熊谷基地を、自分の整備した機体で空から見せてくれたのです!!

多くは語っていませんでしたが、機長は「辞めても仲間は忘れないで欲しい」と言いたかったのかもしれません。
機長も自衛官ですから、私の気持ちを察してくれたのでしょうね・・・。

話は終わりますが、これがホスピタリティーの何ということは、あえて言いません。理論付けもしません。
読んでいただいた方に何か伝わる物があればいいな!と思うだけであります。

≪補足説明≫
整備員の訓練飛行の同乗は、同乗資格があり、整備員の整備教育訓練の一環(飛行中の動作点検)として行っている為規律違反ではありません。
また、一般の方々の体験搭乗も行っていますので、広報に問い合わせてみてください!
話の中で高度を下げたとありますが、訓練空域内からは外れてはなく、航空法における高度内での飛行です。


コメント(2)

うん、わかるような気がします!

相手を思う気持ち、相手を喜ばせようという思い、それを産み出す、相手を大事に思う心。

機長はそれをお持ちだったのだろうと、感じます。

もしそれをホスピタリティの次元に落とし込むなら、
それがサービス業という、他人様を相手にそれを持ち与えることで、
どうしたら他人を大事に思えるか。。。
ということになるのかなぁ、と。


そういえば
私の以前の職場から厚木飛行場が見えて、
離陸していくP3Cを昼ごはん時はいつも見ていました。
あるとき、左旋回して太平洋に向かう機が、クイっと急バンク(ていうのかな)して急旋回!
下手なのか遊んでみたのかはてなー、とおもいましたが、
そんなこともあったのかもしれませんね^_^)

隊長さんこんばんは。

とても臨場感のあるお話。
ぐいぐい読んでしまいました。
素敵なお話をありがとうございました。

暗黙知というとちょっと違いますが、飛行機の話からそんな言葉を
思い出していました。

相手ならどう思うか、自分には何が出来るか。
そしてまた相手ならどう思うか考える。

経験を知って学ぶ。そしてそれを生かす。

私にはもう少しお勉強しないと出来ないことです。
出来る限りがんばります。

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