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会社法判例百選コミュの62-65

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62(86)競業避止義務の範囲と損害の回復 ヤマザキパン事件
東京地判s56.3.26 反社長(創業者)派によるクーデタ
1 競業会社の事実上の主宰者としての経営行為と取締役の競業避止義務。YはA社の経営をしたといえるか。
⇒事実上の主宰者でなければ競業避止義務を負わない。Yは事実上の主宰者であり、経営をしていたといえ、競業義務違反となる。
2 会社が進出を計画している地域における同種の事実行為は競業避止義務に該当するか
⇒該当する。会社との利益衝突があるから。なお、少数説は、はじめから会社356、365が適用されるとする。
3 忠実義務違反等による損害の回復と受任者の受け取り物等引渡し義務
⇒会社の金で買ったもの(本件では株式)を返還する。
参考条文:330、355、356??、423、民644、646
事案  山崎パンX社の社長Yが、関西への進出を狙い、山崎パン社の資金を使って関西地区の工場用地を買収し新会社B(Yの家族が全株式を有する。)を立ち上げたところ、山崎パンから競業避止義務・善管注意義務違反を根拠に訴えられたもの。造反?
第一審  原告の請求認容
【被告の責任】
1 競業避止義務違反について
(一) 被告が千葉工場発足後原告会社への合併までの間原告会社の代表取締役であったこと、千葉工場が原告会社と同種の営業をするものであること、及び東京、千葉を含む関東一円が原告会社の市場であったことは、当事者間に争いがなく、被告が千葉工場発足以来原告会社への合併までの間千葉工場の事実上の主宰者として、これを経営してきた・・・。 
 被告の右行為は、第三者である千葉工場のために、原告会社の営業の部類に属する取引をしてきたことに外ならず、このことは、原告会社に対し、前記認定の技術指導料を支払ったことにより左右されるものではないから、原告会社に対する競業避止義務に違反することは明らかである。
(二)(1) 原告会社と大阪工場が同種の営業をするものであること及び、被告は大阪工場の設立以来福岡工場に合併するまでの間と右合併により関西ヤマザキが発足し、昭和五一年三月三一日までの間、右両社の代表取締役としてこれを経営し、同時にその期間は原告会社の代表取締役でもあったことは、当事者間に争いがなく、原告会社がかねてより関西市場への進出を企図し、昭和四一年当時既に具体的にその市場調査等を進めていたことは、先に認定したとおりである。
【あてはめ】
(2)大阪工場設立の経過及びその経営については、先に認定したとおりであって、その資本金だけは被告によって調達されはしたが、その運営に当っては、原告会社の資金、信用、ブランド、技術、従業員が投入されてきたのであって、大阪工場が所期の成功を収めることができたのは、被告が原告会社の調査結果を含む有形無形の資源を利用しえたからに外ならず、仮に若し、大阪工場が行き詰った場合を想定したとしても、原告会社が負担すべきリスクは、大阪工場が原告会社の一部門であった場合と比べ、全く変らず、反面、大阪工場の経営に成功すれば、被告、その妻子及び飯島興産は、資本への投資を除く他のほとんど全てにつき、原告会社の負担により、その資産を増やすことになる状況にあったと認められる。
 したがって、原告会社が中外製薬から吹田の土地を取得した時点において、被告が大阪工場を原告会社の一部門として建設することを決意さえすれば、原告会社は直ちに関西に進出しえたのであるのみならず、前記状況の下では、他に大阪工場を原告会社の資本関係の強い別会社として発足させるべき特段の事情がない限り、これを原告会社の一部門として建設すべきであり、それ以外の途はなかったというべきであるから、その時点における原告会社の関西地区における進出計画の具体性、市場及びその侵害による損害の範囲を検討するに当っては、原告会社が大阪工場を自己の一部門として建設、運営することを決意していたのと同視して差支えないと解すべきである。
(3) 然るに、被告が原告会社の代表取締役でありながら、大阪工場及び関西ヤマザキの代表取締役として、前記認定の期間これらの会社を経営したことは、第三者であるこれらの会社のために、原告会社の営業の部類に属する取引をしてきたことに外ならず、このことは、原告会社に対し、前記認定の大阪工場の資本金を被告側で調達し、また技術指導料を支払ったことにより左右されるものではないから、原告会社に対する競業避止義務に違反することは明らかである。
【善管注意義務、忠実義務違反】
被告は、原告会社の代表取締役として、善良な管理者の注意をもって会社を有効適切に運営し、その職務を忠実に遂行しなければならない義務があるのに、原告会社の人的、物的、資金的資源を利用しながら、川口パンの株式のほとんどを自らが取得して、原告会社が千葉工場をその傘下に収めて、千葉県下の市場を強化する機会を奪い、原告会社の取締役会にはかることなく、また何らの対価も得ることなく、原告会社の販売店合計五〇八店を千葉工場に移管して、原告会社の市場を侵奪し、千葉工場の事実上の主宰者として、原告会社との競業行為を行ったこと、及び大阪工場を原告と全く資本関係のない会社として設立し、原告会社が自ら又は子会社により関西に進出する機会を奪い、大阪工場及び関西ヤマザキの代表取締役として、原告会社との競業行為を行ったことは、いずれも先に認定したとおりであって、これらの行為が、原告会社に対する取締役としての忠実義務、したがって善管注意義務に違背することは明らかである。
【委任義務違反について】
(一) 被告は、原告会社のワンマン社長として君臨し、原告会社の業務方針、人事はもとより、日常業務に至るまで自分の意思で決定するという姿勢を貫き、取締役会は全く開催されない状態が続いており、千葉工場、大阪工場をめぐるいろいろの問題は、いずれもこの間に実行されたものであることは、先に認定したとおりである。
 ところで、会社の業務決定は、取締役会がこれを決定すべきものでであって、代表取締役はその執行機関に過ぎないのであるから、取締役会がその機能を失い、代表取締役が全ての業務執行を決定し、これを執行するという原告会社にみられた状況は極めて異常のものではあるが、取締役会が業務執行に関する全ての決定を被告に委任していたというべき状態にあったとみる外ない。
 このような場合、取締役会は、代表取締役に適法な業務執行の決定を委ねたものであって、法の定める取締役の義務に違背するような業務執行の決定がその委任の範囲に属さないことは明らかであるから、代表取締役は、その時々における四囲の状況から、採るべき施策と考えられる範囲内でその決定を行うべきであり、かりそめにもその範囲を逸脱するような決定をすることは、委任の本旨に反するものといわなければならない。
(二) 被告が千葉工場の発足及び運営、大阪工場の設立及び運営に関し行った行為が原告会社に対する競業行為となり、善管注意義務、忠実義務に違背するものであることは、先に認定したとおりであり、これらの行為が原告会社の取締役会の被告に対する委任の趣旨に反するものであることは明らかである。
 したがって、被告としては、千葉工場については、被告及び訴外和が取得した株式を原告会社の株式とし、大阪工場についてはこれを原告会社の一部門とし、若し特段の事情が認められる場合でも、これを原告会社の子会社とし、被告、その妻子及び飯島興産が取得した株式は原告会社の株式として、両工場を発足させるべきであったし、それ以外の途を選ぶ余地がなかったことは先に認定したとおりであるから、これが取締役会の被告に対する委任の本旨とみるべきであり、にもかかわらず、被告はこれに反して両工場の株式を、原告会社以外の者の保有するところとしたものである。
 そうすると、原告会社と被告との関係は、あたかも原告会社の取締役会がある会社の株式を買収し、又は完全子会社を設立することを決定し、これを実行するため、被告に対し、必要な資金を交付して、その事務を委任したところ、被告が株式を買収し、又は会社を設立しながら、その株式を原告会社のものとはせず、自己やその家族等のものとしたような場合には、原告会社は被告に対し、委任の本旨に従い、その株式の移転を求めることができるのと同様に、本件の場合においても、原告会社は、その株式が被告において原告会社に移転することがなお不可能とはみられない限り、委任又はその類推により、被告に対し、その移転を求め、既にこれらの株式につき取得した配当金はこれを返還し、またその移転義務の履行が将来不可能になる場合には、その填補賠償を求めることができると解するのが相当であり、この方法こそが競業避止義務、善管注意義務及び忠実義務違反を理由とする損害賠償請求よりもはるかに直接的でかつ根本的な救済を得る結果となるものというべきである。
1 競業避止義務の趣旨⇒善管注意義務の一内容(通説)
2 競業避止義務の法的性格⇒通説と少数説がある
3 競業避止義務の対象⇒まだ営業していない場合でも、忠実義務違反となる。



63(88)株主全員の合意と利益相反取引
最判s49.9.26
参考条文:356??、365?
■ 取締役の競業避止義務違反に対する介入権行使の効果⇒
事案  会社の株式を第三者に全部譲渡した。
第一審  原告の請求却下
第二審  原告の控訴棄却
【理由】
日本毛糸は、英夫が個人として営んでいた毛糸、洋服、雑貨等の販売業をその弟等同族四名の参加を得て会社組織にし、右五名において、その資産、株式を所有し、共同して経営しているものであり、また被上告人会社は、右五名が、日本毛糸の簿外資産の分散、保全、増殖のため、右資産をもつて設立したものであり、第三者も株主となつてはいるが、それは単なる名義人にすぎず、実質は、右五名において株式、資産を所有し、共同経営しているものであると認め、右のような会社設立の経緯、会社の資産、株式の所有関係及び経営の実体等によると、日本毛糸及び被上告人会社は、いずれも実質においては右五者の共同事業であつて、民法上の組合に外ならないと判断している
最高裁  原告の上告棄却
【理由】
 思うに、法律上会社はすべて法人とされているところ、その法人格が全くの形骸にすぎない場合、またはそれが法律の適用を回避するため濫用される場合のように、法人格を認めることがその本来の目的に照らして許されるべきでないときには法人格を否認することのできることは、当裁判所の判例(昭和四三年(オ)第八七七号、同四四年二月二七日第一小法廷判決民集二三巻二号五一一頁)とするところであるが、右法理の適用は慎重にされるべきであつて、原審認定の会社の設立の経緯、株式、資産の所有関係、経営の実体等前記事実によつて直ちに前記各会社の法人格を否認し、これを民法上の組合であるとした原審の判断は、にわかに首肯することはできない。
2 しかしながら、商法二六五条が取締役と会社との取引につき取締役会の承認を要する旨を定めている趣旨は、取締役がその地位を利用して会社と取引をし、自己又は第三者の利益をはかり、会社ひいて株主に不測の損害を蒙らせることを防止することにあると解されるところ、原審の適法に確定したところによると、日本毛糸から上告人への株式の譲渡は、日本毛糸の実質上の株主の全員である英夫ら前記五名の合意によつてなされたものというのであるから、このように株主全員の合意がある以上、別に取締役会の承認を要しないことは、上述のように会社の利益保護を目的とする商法二六五条の立法趣旨に照らし当然であつて、右譲渡の効力を否定することは許されないものといわなければならない。
3 また、被上告人会社の株券は未発行であるから、前記各株式の譲渡は商法二〇四条二項にいう株券発行前の譲渡にあたるが、原審認定の事実関係のもとにおいては、同社は不当に株券の発行を遅滞しているものと認められるから、株券発行前であることを理由に株式譲渡の効力を否定することは許されないものというべきである(最高裁s47.11.8民集26-9-1489)。
4 以上によると、日本毛糸及び被上告人会社を民法上の組合として原審の判断は是認することができないが、本件各株式の譲渡を有効とし、これにより上告人が被上告人会社の株主たる地位を喪失したものと認め同人には本訴の原告適格がなく、本訴は不適法であるとした原判決の結論は正当である。
* 株主全員の同意があるから仕方ない。
* 最判s45.8.20を少し修正。



64(90)手形行為と利益相反取引(直接取引型) 百65と比較
最判s46.10.13
参考条文:356??

■ 手形行為に会社356??の適用はあるか
⇒ある。信用授受のためもあるから。
■ 取締役会の承認なく会社が取締役に振り出した約束手形(元融通手形?)の譲受人の保護

事案  
第一審  原告の請求認容
第二審  被告の控訴棄却
【理由】
本件(イ)の約束手形は、上告会社がその取締役である鈴木英夫に宛てて振り出したものであり、同(ロ)の約束手形は、手形上の記載によると、上告会社が右鈴木英夫を受取人として振り出し、同人が白地裏書をして被上告人がこれを所持していることとなつているが、実際上は、上告会社が受取人欄を白地にして直接被上告人に交付し、被上告人が鈴木英夫をして受取人欄にその氏名を記載し裏書させたものであり、また、同手形は、上告会社が鈴木英夫に宛てて振り出し、同人から被上告人に交付された約束手形の書替手形であるというのである。そして、商法二六五条の適用については、手形上の記載によるべきではなく、現実に行為をした当事者を基準として判断すべきであるから、前記の説示に徴すれば、上告会社による本件(イ)の約束手形および(ロ)の約束手形の書替前の約束手形の振出行為はいずれも商法二六五条にいわゆる取引にあたり、上告会社はこれにつき取締役会の承認を受けることを要するが、(ロ)の約束手形自体の振出行為は右にいわゆる取引にあたらないものと解せられる。しかるに、上告会社は(イ)の手形および(ロ)の手形の書替前の手形の振出について取締役会の承認を受けなかつた
最高裁  被告の上告棄却。原告勝訴。
【理由】
 およそ、約束手形の振出は、単に売買、消費貸借等の実質的取引の決済手段としてのみ行なわれるものではなく、簡易かつ有効な信用授受の手段としても行なわれ、また、約束手形の振出人は、その手形の振出により、原因関係におけるとは別個の新たな債務を負担し、しかも、その債務は、挙証責任の加重、抗弁の切断、不渡処分の危険等を伴うことにより、原因関係上の債務よりもいつそう厳格な支払義務であるから、会社がその取締役に宛てて約束手形を振り出す行為は、原則として、商法二六五条にいわゆる取引にあたり、会社はこれにつき取締役会の承認を受けることを要するものと解するのが相当である。・・・
ところで、手形が本来不特定多数人の間を転々流通する性質を有するものであることにかんがみれば、取引の安全の見地より、善意の第三者を保護する必要があるから、会社がその取締役に宛てて約束手形を振り出した場合においては、会社は、当該取締役に対しては、取締役会の承認を受けなかつたことを理由として、その手形の振出の無効を主張することができるが、いつたんその手形が第三者に裏書譲渡されたときは、その第三者に対しては、その手形の振出につき取締役会の承認を受けなかつたことのほか、当該手形は会社からその取締役に宛てて振り出されたものであり、かつ、その振出につき取締役会の承認がなかつたことについて右の第三者が悪意であつたことを主張し、立証するのでなければ、その振出の無効を主張して手形上の責任を免れえないものと解するのを相当とする(この判旨に反する大審院明治四二年(オ)第二七九号同年一二月二日民事聯合部判決、民録一五輯九二六頁は、これを採らない。)。したがつて、この場合には、手形法一六条二項の適用はなく、その解釈適用につき所論のような論議をなす余地はないのである。
* 補足意見、意見がある。
* 百65と同様に相対的無効説。無効を主張する側が第三者の悪意を立証すれば無効となる。しかし、百64(間接取引)を引用はしていない。
* 手形行為に相対的無効説を適用することの意味は善意の第三者保護を本来的な人的抗弁の制限の構成に委ねるのではなく、手形行為の無効という物的な抗弁が存するにもかかわらず、手形流通の保護のために手形行為者は善意の第三者に対して手形上の責を負うものとして構成する。それは無権代理行為のもかかわらず、表見代理法理により本人が手形債務を負う場合と同様である。(解説)
* 融通手形を出すのは、会社が傾いたとき。

融通手形(ゆうずうてがた)とは、手形による決済を必要とする現実の商取引がないにもかかわらず、金融の目的で振出人の信用を利用させるために振り出される手形である。商業手形の対義語。通称、「ユウテ」と呼ぶ。
概説
本来、手形が振り出される場合は、手形とは別個に、売買契約が存在して代金債務が発生している等、手形による決済を必要とする現実の商取引である原因関係が存在する。その場合、手形金支払の債務と代金支払の債務が並存することになるが、手形について手形金の支払がなされることで、代金債務についても支払を受けたことになる。
しかし、融通手形の場合は、原因関係が、現実の商取引に基づく権利関係ではなく、融通契約である(原因関係が不存在なのではない)。現金を必要とする被融通者が融通者との間で融通契約を結び、手形による決済を必要とする債務はもともと存在しないのに、手形を振り出して、それを手形割引等で現金化して消費し、手形の満期までに支払のための現金を準備して手形の支払に充てることになる。
融通手形の種類
融通手形といっても、大きく分けて以下の3種類がある。
1典型的な融通手形
現金を必要とする被融通者Aが、信用のある融通者BにAを受取人とする手形を振り出してもらった後、金融機関等の第三者Cに手形割引をしてもらい、手形金額より少ない現金と交換で手形を裏書譲渡する。被融通者Aは、融通者(振出人)Bに対して、手形の満期までに手形金額相当の現金を渡し、第三者C(またはCからの手形転得者D)が融通者(振出人)Bに手形の満期に支払を求めてきたら、BがC(ないしD)に現金を支払い、手形の決済をする。
この場合、手形の原因関係として、ABの間に、手形満期までに被融通者Aが融通者Bに対し、支払資金を提供する旨の内容の融通契約が存在する。
2交換手形
現金を必要とする被融通者AとBが、互いに相手の信用を利用する目的で相手方の融通者となり、BはAを受取人とする手形(b)を、AはBを受取人とする手形(a)をそれぞれ振り出し、Aが手形bを、Bが手形aを、それぞれ金融機関等の第三者C(第三者は別々の者でよい)に手形割引をしてもらい、手形金額より少ない現金と交換で手形を裏書譲渡する。そして、手形の満期までに自らが振り出した手形(Aにとっては手形a、Bにとっては手形b)の手形金額相当の現金を用意し、第三者C(またはCからの手形転得者D)が手形の満期に支払を求めてきたら、それぞれBがC(ないしD)に現金を支払い、手形の決済をする。書合手形(かきあいてがた)、馴合手形(なれあいてがた)ともいう。
この場合、手形の原因関係として、ABの間に、手形満期にA・B双方が自らの振り出した手形について支払をし、一方が支払いを怠った場合には他方の支払義務がなくなる旨の内容の融通契約が存在する。
3手形貸付
現金を必要とする被融通者Aが、手形金額より少ない現金と引き換えに、金融機関等の融通者Cに対して、融通者Cを受取人とする手形を振り出す。被融通者(振出人)Aは、手形の満期までに自らが振り出した手形の手形金額相当の現金を用意し、受取人C(またはCからの手形転得者D)が手形の満期に支払を求めてきたら、AはC(ないしD)に現金を支払い、手形の決済をする。Cが金融機関の場合、この融通手形のことを手形貸付という。
この場合、手形の原因関係として、ACの間に、手形金額相当の金銭消費貸借契約が存在する。他の2つの場合と異なり、下記の融通手形特有の融通手形の抗弁の問題は生じない。



65(89)利益相反の間接取引(取引の無効を主張する相手方と直接の取引があったのか、間接的取引なのか) 日本ビクター
最判s43.12.25
参考条文:356??、365?

■ 取締役会の承認がない利益相反取引(間接取引)について、会社は相手方である第三者に対して取引の無効を主張できるか。
⇒できる。一種の無権代理として無効。取引の当事者間に相対的無効説が適用された。
事案  Y社が引き受けたAの債務の支払いを求めて出訴。これに対して、Y社は利益相反取引として無効を主張した。
第一審  原告の請求認容
第二審  判決変更・原告の請求一部棄却
最高裁  破棄自判。原告勝訴。Y社はX社に対して、利益相反取引ゆえに無効と主張し得ない。
【利益相反取引の範囲】
 商法二六五条は、取締役個人と株式会社との利害相反する場合において、取締役個人の利益を図り、会社に不利益な行為が濫りに行なわれることを防止しようとする法意に外ならないのであるから、同条にいわゆる取引中には、取締役と会社との間に直接成立すべき利益相反の行為のみならず、取締役個人の債務につき、その取締役が会社を代表して、債権者に対し債務引受をなすが如き、取締役個人に利益にして、会社に不利益を及ぼす行為も、取締役の自己のためにする取引として、これに包含されるものと解すべきである(当裁判所第三小法廷判決昭和三八年(オ)第二六一号、同三九年三月二四日裁判集七二号六一九頁の趣旨は、右の限度で、変更されたものというべきである。なお、同小法廷判決昭和三一年(オ)第二五号、同三三年一〇月二一日裁判集三四号三〇三頁は本件に適切でない。)。
【その効果】
 そして、取締役が右規定に違反して、取締役会の承認を受けることなく、右の如き行為をなしたときは、本来、その行為は無効と解すべきである。このことは、同条は、取締役会の承認を受けた場合においては、民法一〇八条の規定を適用しない旨規定している反対解釈として、その承認を受けないでした行為は、民法一〇八条違反の場合と同様に、一種の無権代理人の行為として無効となることを予定しているものと解すべきであるからである。
 取締役と会社との間に直接成立すべき利益相反する取引にあつては、会社は、当該取締役に対して、取締役会の承認を受けなかつたことを理由として、その行為の無効を主張し得ることは、前述のとおり当然であるが、会社以外の第三者と取締役が会社を代表して自己のためにした取引については、取引の安全の見地より、善意の第三者を保護する必要があるから、会社は、その取引について取締役会の承認を受けなかつたことのほか、相手方である第三者が悪意(その旨を知つていること)であることを主張し、立証して始めて、その無効をその相手方である第三者に主張し得るものと解するのが相当である。
* 民法108は双方代理。間接取引にはあてはまりにくいので問題となる。しかし、判例は当てはまるとした。相対的無効説は、結局条文上の根拠はないにもない。取引の安全のためのみ。
* 百64との違いは、64では直接取引をしていない者(XY)の間でその効果が問題となった。64はXA間(Yが利益相反取引であり無効であると主張する相手方であるXとは、Yとの間で直接の取引がなかった。)。65はXY間(Yが利益相反取引であり無効であると主張する相手方であるXとは、Yとの間で直接の取引があった。)。

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