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会社法判例百選コミュの26-30

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26(117)第三者に対する新株の有利発行と株主総会決議の欠缺
最判s46.7.16
株主総会の特別決議を欠く第三者に対する有利発行は新株発行の無効原因となるか⇒ならない。
参考条文:199?、201?、828??、?
事案   株主Xは、株主総会の特別決議を欠く第三者に対する有利発行は新株発行の無効原因となるとして、公募分の新株発行無効確認を求めて本訴を提起した。
第一審  原告の請求棄却
第二審  原告の控訴棄却
最高裁  上告棄却。無効原因とはならない。
【理由】
株式会社の代表取締役が新株を発行した場合には,右新株が、株主総会の特別決議を経ることなく、株主以外の者に対して特に有利な発行価額をもって発行されたものであっても、その瑕疵は、新株発行無効の原因とはならないものと解すべきである。
このことは当裁判所の判例(最高裁判所昭和三九年(オ)第一〇六二号、同四〇年一〇月八日第二小法廷判決、民集一九巻七号一七四五頁参照)の趣旨に徴して明らかである。
(学説)
・無効説
旧法上の増資にあたるもので、単なる取引行為でなく、株主の損害が重大であり、株主保護を優先すべきである
新株発行を無効としても、無効の訴えは提訴権者、提訴期間を制限し、無効判決の遡及効を限定しているから、取引の安全が著しく害されるわけではない。
・有効説(判例)
新株発行は取締役による業務行為だから。←旧法では新株発行は株主総会の権限だったのを緩めた。
取引安全重視。無効とするのは制度の沿革に逆行するもの。
既存株主の保護は損害賠償責任(423,429)によるべき。等

公開株式の場合、発行されると激しく売り買いされるので、関係者への影響を考え、無効取消できないのが原則。

(参考)
新株発行・自己株式処分無効についての問題点
1 公開会社における取締役会の決議を欠く新株発行→旧試験平成4−1
2 公開会社における株主総会の特別決議を欠く第三者に対する有利発行→百選26、
3 著しく不公正な方法による発行→百選33
4 新株発行の差止請求を無視する発行→百選32、平成4−1
5 公開会社における募集事項の公示を欠く新株発行→百選28、平成4−1、16−1



27(116)買取引き受けと不公正発行価額 横河電機事件
最判s50.4.8
新株の公募発行において、時価よりもどの程度低ければ著しく不公正な発行価額となるか⇒利益考量
参考条文:212??
事案  株主代表訴訟
第一審  原告の請求棄却
第二審  原告の控訴棄却
最高裁  上告棄却。「著しく不公正な払い込み金額」とはいえず、請求を認めなかった。
【理由】
 ところで、普通株式を発行し、その株式が証券取引所に上場されている株式会社が、額面普通株式を株主以外の第三者に対していわゆる時価発行をして有利な資本調達を企図する場合に、その発行価額をいかに定めるべきかは、本来は、新株主に旧株主と同等の資本的寄与を求めるべきものであり、この見地からする発行価額は旧株の時価と等しくなければならないのであつて、このようにすれば旧株主の利益を害することはないが、新株を消化し資本調達の目的を達成することの見地からは、原則として発行価額を右より多少引き下げる必要があり、この要請を全く無視することもできない。
そこで、この場合における公正発行価額は、発行価額決定前の当該会社の株式価格、右株価の騰落習性、売買出来高の実績、会社の資産状態、収益状態、配当状況、発行ずみ株式数、新たに発行される株式数、株式市況の動向、これらから予測される新株の消化可能性等の諸事情を総合し、旧株主の利益と会社が有利な資本調達を実現するという利益との調和の中に求められるべきものである。
【あてはめ】
 本件についてみるに、原審認定の前記事実によれば、株式会社横河電機製作所(以下「横河電機」という。)発行にかかる本件新株(記名式額面普通株式、一株の金額五〇円)の発行価額は、本件新株を買取引受の方式によつて引受けた証券業者である被上告人らが昭和三六年一月七日に横河電機に対して具申した意見に基づき、同月九日の取締役会において右意見どおり決定されたものであるところ、右意見は、具申の前日である同月六日の終値三六五円、前一週間(昭和三五年一二月二六日から昭和三六年一月六日まで)の終値平均三五九円一七銭、前一か月(昭和三五年一二月七日から昭和三六年一月六日まで)の終値平均三五〇円二七銭の三者の単純平均三五八円一五銭から、新株の払込期日が期中であつたので、配当差二円四一銭を差引いた三五五円七四銭を基準とし、横河電機の株式の価格動向としては人気化していたため急落する可能性が強く、過去六年間における一か月以内の下落率の大勢は一〇ないし一四パーセントに集中していたこと、その売買出来高が昭和三五年九月から同年一二月まで一日平均一九万三〇〇〇株であるのに比べると本件公募株数は一五〇万株の大量であること、その他、当時における株式市況の見通し等を勘案すれば、本件新株を売出期間中に消化するためには前記基準額を最低一〇パーセント値引する必要がある等の事由による減額修正をして、発行価額としては一株あたり三二〇円をもつて相当とするというのである。
このように、右の意見が出されるにあたつては、客観的な資料に基づいて前記考慮要因が斟酌されているとみることができ、そこにおいてとられている算定方法は前記公正発行価額の趣旨に照らし一応合理的であるというを妨げず、かつ、その意見に従い取締役会において決定された右価額は、決定直前の株価に近接しているということができる。このような場合、右の価額は、特別の事情がないかぎり、商法二八〇条ノ一一に定める「著シク不公正ナル発行価額」にあたるものではないと解するのを相当とすべく、右価額が当該新株をいわゆる買取引受方式によつて引受ける証券業者が具申した意見に基づきその意見どおり決定されたとの前記事実も、右の意見の合理性が肯定できる以上、それだけで右の判断を異にすべき理由にはならない。
そして、本件新株の発行後横河電機の株価が値上りしたことは原審の確定するところであるが、本件発行価額決定時点においてそのことが確実であることを保証する事実が顕著であつたとはいえないとする原審確定の事実関係のもとにおいては、右値上りの事実をもつて特別の事情と認めるには足りず、他に特別の事情を認めるに足る事実関係のない本件においては、本件発行価額が「著シク不公正ナル発行価額」であるということはできないのである。



28 新株発行事項の公示の欠缺
参考条文:201?、?、210、828??
最判h9.1.28 新株発行不存在確認、新株発行無効請求
 新株発行事項の公示を欠いたことは新株発行の無効原因になるか⇒新株発行差止請求をしたとしても、差止の事由がないとして、請求が認められない場合を除き、無効原因となる。
事案  A株式会社は、青果物の仲買業務を目的として昭和四一年に設立され、昭和五一年の時点で資本金一二〇〇万円(一二〇〇株)の同族会社である。Aは、昭和五四年に新株一二〇〇株を、昭和六三年に新株二四〇〇株をそれぞれ発行した旨の登記を経由した。本件の原判決は、この二回にわたる新株発行の存否ないし効力を争う二つの訴えの併合事件に対するものであり、昭和五四年の新株発行に関するものと、同日に言い渡された昭和六三年の新株発行に関するもの(本判決)がある。
 Aの代表取締役は、設立以来Xであった。昭和五四年の新株発行まで、Xは二七〇株を有する筆頭株主であり、Y(Xの甥)は二〇〇株を有していた。ところが、昭和五四年の新株発行は、一二〇〇株のうち六〇〇株をYが、一〇〇株をXが引き受けるものであったために、これにより筆頭株主の地位が逆転することになった(昭和六三年の新株発行により、筆頭株主の地位は再度逆転する。)。そこで、Xは、(Aではなく)Yを被告として、昭和五四年の新株発行が不存在であることの確認を請求した。
第一審  新株発行は無効。請求認容
第二審  控訴棄却。新株発行は無効。
【理由】
? 新株発行に関する事項について商法二八〇条ノ三ノ二に定める公告又は通知がされていない
? 新株発行を決議した取締役会について、取締役Bに招集の通知(同法二五九条ノ二)がされていない
? 代表取締役Xが来る株主総会における自己の支配権を確立するためにしたものと認められる
? 新株を引き受けた者が真実の出資をしたとはいえず、資本の実質的な充実を欠いている。
このうち??の点を理由として新株発行を無効とする
最高裁  上告棄却。本事例では、?を根拠に無効原因があり、無効とする。
【理由】
 しかしながら、新株発行に関する事項の公示(同法二八〇条ノ三ノ二に定める公告又は通知)は、株主が新株発行差止請求権(同法二八〇条ノ一〇)を行使する機会を保障することを目的として会社に義務付けられたものであるから(最高裁平成元年(オ)第六六六号同五年一二月一六日第一小法廷判決・民集四七巻一〇号五四二三頁参照)、新株発行に関する事項の公示を欠くことは、新株発行差止請求をしたとしても差止めの事由がないためにこれが許容されないと認められる場合でない限り、新株発行の無効原因となると解するのが相当であり、右(三)及び(四)の点に照らせば、本件において新株発行差止請求の事由がないとはいえないから、結局、本件の新株発行には、右(一)の点で無効原因があるといわなければならない。
■ ?
・ 無効説(発行差止の機会をあたえるという趣旨を重視
・ 有効説(取引安全重視。
・ 折衷説(原則無効。会社が差止事由が存在しなかったことを立証した場合には無効とならない
* 最高裁判例なし。下級審は無効説か、折衷説が多い。

■ ?についての学説
ある者の支配権を確立する等の意図によって著しく不公正な方法でされた新株発行の効力
かつて有効説、無効説、折衷説の対立があったが、本件原判決後に言い渡された最一小判平6・7・14(裁集民一七二号七七一頁)は、「株式会社を代表する権限のある取締役によって行われた新株の発行は、それが著しく不公正な方法によって行われたもので……ある場合でも、有効である」として、有効説を採用した。

■ ?の点は、いわゆる「見せ金」による払込みであることが問題とされたものである。
「見せ金」とは、当初から真実の株式払込みとして会社資金を確保する意図なく、一時的借入金をもって単に払込みの外形を整え、株式会社成立ないし新株発行の手続後直ちに右払込金を払い戻してこれを借入先に返済するような行為のことであり、最二小判昭38・12・6(民集一七巻一二号一六三三頁)は、会社設立時における株式払込みについて、見せ金による払込みは払込みとしての効力を有しないとした。
昭和二五年改正前の商法が規定する増資手続について、本判決が引用する最三小判昭30・4・19(民集九巻五号五一一頁)が、一万五〇〇〇株の増資のうち五九五〇株に引受けの欠缺があっても、特別の事情のない限り、右欠缺は取締役の引受払込みの責任により補充されるものであって、直ちに増資の無効を来すものではないと判示しているのも、この趣旨をいうものと解される。本判決は、右最三小判を引用して、?の点も新株発行の無効原因とならないとした。

(参考)
新株発行・自己株式処分無効についての問題点
1 公開会社における取締役会の決議を欠く新株発行→平成4−1
2 公開会社における株主総会の特別決議を欠く第三者に対する有利発行→百選26、
3 著しく不公正な方法による発行→百選33
4 新株発行の差止請求を無視する発行→百選32、平成4−1
5 公開会社における募集事項の公示を欠く新株発行→百選28、平成4−1、16−1



29 第三者割り当て増資による企業買収 ソニーアイワ事件
東京高裁s48.7.27 株主代表差額金請求
参考条文:
事案  ソニーがアイワの全新株を譲り受けたが、その金額が公正な発行価額である137円775銭よりも安い70円で引き受けており、株主Xが、その差額をソニーに請求するようにアイワに請求したが、しないので、ソニーに対して差額金のうち2000万円とその遅延損害金を支払うよう求めた。
第一審  請求棄却。
第二審 控訴棄却
【理由】
  1 元来、新株の発行価額は、その決定時(すなわち、特段の定めのない限り、取締役会において新株の発行事項を決定する決議のなされた日)における、発行会社の株式の市場価格、企業の資産状態及び収益力(なお、これらは、通例、配当の状況によって端的に示めされる。)、株式市況の見透し等を総合したうえ、更に株式申込時までの株価変動の危険及び新株式発行により生ずる株式の需給関係の状況等をも考慮して決定さるべきものであって、発行価額がこのようにして決定された時、その価額は発行会社の有する企業の客観的価値を反映した公正かつ適正なものということができる。
 そうして、発行会社の株式が上場されている場合には、株式市場で形成される価格、すなわち株価は、通常は、前記公正な発行価額を決定する諸要素のうちの中心をなす、企業の資産状況及び収益力等を反映しその客観的価値を示すものであるから、右資産状況及び収益力等のほか前記のような諸要素をも考慮に加えて決定される新株式の発行価額は、多くの場合価額決定当時の株価の15%減以内の価額となるべきものとし、この見地から、このような価額を以て公正ないし適正な発行価額と観念することは、理由のないことではない。
しかし、株式市場も一の競争市場である以上、そこで形成される株価が常に企業の客観的価値のみに基づくとは限らず、時としては、企業の客観的価値以外の投機的思惑その他の人為的な要素によって、株価が企業の客観的価値を反映することなく異常に騰落することもあるのであるから、上場会社の新株の発行価額の決定に当たって、常に市場における株価だけを絶対視することは、ことの本質を見誤るものといわなければならない。
控訴人は、本件において新株の価額決定の日の前日における株価をいわば絶対視し、その5ないし15%減の範囲内において定められた価額だけが公正、適正な価額であり、それ以外のものはすべて商法第二八〇条ノ一一にいう「著しく不公正な発行価額」である旨を強調し、この主張にそう資料として、当審において、さらに《証拠略》を提出しているけれども、既に述べたとおり、新株の公正、適正な発行価額は、冒頭に挙げた諸要素を総合的に勘案のうえ決定されるべきものであることからすると、公正な発行価額を控訴人のように固定的に考えるべき理由はないものというべきであって、前掲《証拠略》も控訴人の主張を肯認するに足るものではない。
 2 ところで、本件において,新株の発行価額決定の日の前日である、昭和四四年一月九日の訴外会社の株価(但し、終値)は一株一四五円であるけれども、この株価は、主として投機的思惑により形成されたものであって、訴外会社の資産状態、収益力等その企業としての客観的価値を正しく反映していないものであることは、前記引用にかかる原判決理由において詳細に認定判断したとおりであるから、本件においては上記株価を基準として新株の発行価額を定めることは到底できないものといわなければならない。
そうして、上記原判決理由において認定したとおり、本件新株の発行は、訴外会社に対する被控訴会社の資本参加、業務提携の方法としてなされたものであって、被控訴会社は発行新株一、二〇〇万株全部を引受けることになったものであるが、このような事情を考えると、本件における発行価額の決定に当たって、訴外会社の株価のうち、上記参加、提携の機運を前提とする投機的思惑によって異常に高騰したと認められる部分が考慮されてはならないことはいうまでもないことであるから、被控訴会社が右部分を排除しないで決定された価額によって本件新株を引き受けることをしなかったのは、もとより当然であったというべきである。



30 防衛策としての第三者割り当て増資の発行価額 宮入バルブ
東京地決h16.6.1 新株発行差止仮処分申立事件
参考条文:199?、201?、210
■ 発行価額をどう決定するか。
■ 現経営陣の支配権維持確保のためといえるか⇒百31、37参照。
事案   本件は,債務者の株主である債権者X1(以下「債権者X1」という。),同X2(以下「債権者X2」という。),同株式会社松佳(以下「債権者松佳」という。)及び同株式会社感性デバイシーズ(以下「債権者感性デバイシーズ」という。)が,債務者に対し,〔1〕債務者による第三者割当増資の方式による新株発行(以下「本件新株発行」という。)に係る発行価額が「特ニ有利ナル発行価額」に当たるにもかかわらず,株主総会の特別決議を経ていない違法があり,また,〔2〕債務者の現経営陣の地位の維持,保全を目的としたものであり,「著シク不公正ナル方法」に該当するとして,商法280条ノ10に基づき,本件新株発行の差止めを求めている仮処分申立ての事案である。発行日前六ヶ月の平均株価が721円のところを、393円で発行した。
【自主ルール】
日本証券業協会の平成15年3月11日付け一部改正に係る「第三者割当増資の取扱いに関する指針」(以下「自主ルール」という。)によれば,「発行価額は,当該増資に係る取締役会決議の直前日の価額(直前日における売買がない場合は,当該直前日からさかのぼった直近日の価額)に0.9を乗じた額以上の価額であること。ただし,直近日又は直前日までの価額又は売買高の状況等を勘案し,当該決議の日から発行価額を決定するために適当な期間(最長6か月)をさかのぼった日から当該決議の直前日までの間の平均の価額に0.9を乗じた額以上の価額とすることができる。」とされており,この自主ルールを適用すると,発行価額は,本件新株発行決議の直前日の価額に0.9を乗じた909円,ただし書によっても,本件新株発行決議の直前日から6か月前までの平均の価額に0.9を乗じた650円となる
第一審  仮処分申し立て認容。新株発行差止。
【理由】
1 被保全権利について
(1) 商法280条ノ2第2項(会199?)にいう「特ニ有利ナル発行価額」とは,公正な発行価額よりも特に低い価額をいうところ,株式会社が普通株式を発行し,当該株式が証券取引所に上場され証券市場において流通している場合において,新株の公正な発行価額は,旧株主の利益を保護する観点から本来は旧株の時価と等しくなければならないが,新株を消化し資本調達の目的を達成する見地からは,原則として発行価額を時価より多少引き下げる必要もある。
そこで,この場合における公正な発行価額は,発行価額決定前の当該会社の株式価格,上記株価の騰落習性,売買出来高の実績,会社の資産状態,収益状態,配当状況,発行済株式数,新たに発行される株式数,株式市況の動向,これらから予測される新株の消化可能性等の諸事情を総合し,旧株主の利益と会社が有利な資本調達を実現するという利益との調和の中に求められるべきものである。
もっとも,上記の公正な発行価額の趣旨に照らすと,公正な発行価額というには,その価額が,原則として,発行価額決定直前の株価に近接していることが必要であると解すべきである(最高裁判所昭和50年4月8日第三小法廷判決・百27参照)。
【あてはめ】
(2)これを本件についてみると,本件発行価額393円は,平成16年5月17日時点の証券市場における1株あたりの株価1010円と比較して約39パーセントにすぎない。また,前記自主ルールは,旧株主の利益と会社が有利な資本調達を実現するという利益との調和の観点から日本証券業協会における取扱いを定めたものとして一応の合理性を認めることができるところ,本件発行価額は,本件新株発行決議の直前日の価額に0.9を乗じた909円と比較して約43パーセント,本件新株発行決議の日の前日から6か月前までの平均の価額に0.9を乗じた650円と比較しても約60パーセントにすぎない。
 本件発行価額は,本件鑑定に基づいて決定されたものであるが,上記のとおり,本件新株発行決議の直前日の株価と著しく乖離しており,本件鑑定を精査しても,こうした乖離が生じた理由が客観的な資料に基づいて前記考慮要因を斟酌した結果であると認めることはできず,その算定方法が前記公正発行価額の趣旨に照らし合理的であるということはできない。
【Yの主張】
(3)これに対し,債務者は,債務者の株価は本年1月以降に急激に上昇しており,平成16年5月17日時点における債務者株式の市場価格1株当たり1010円の数値は,株価の操縦,投機を目的とした債権者らによる違法な買占めを原因とするものであり,債務者の企業価値を正確に反映したものではないので,本年1月以降の市場価格は公正な発行価額算定基礎から排除すべきであると主張する。
 なるほど,・・・本件各証拠によれば,債権者らによる大量の株式取得が,債務者株式の証券市場における株価に影響を与えていることは否定できない。
しかし,本件各証拠によれば,債権者らは債務者への経営参加や技術提携の要望を有しており,債務者に対する企業買収を目的として長期的に保有するために株式を取得したものであることが窺われ,本件全証拠を精査しても,債権者らが不当な肩代わりや投機的な取引を目的として株式を取得したものと認めるに足りる資料はない。また,本件各証拠によれば,債務者の業績も改善していること,証券業界(会社四季報)における債務者の業績の評価も向上していること,債務者と同様にバルブ事業を営む企業においても,昨年後半から今年にかけて株価が2倍ないし4倍に高騰している事例があることの各事実が認められ,これらの事実に加え,前記のとおり債務者の1株当たりの株価が今年に入って500円以上で推移している事実に照らせば,債務者株式の株価の上昇が一時的な現象に止まると認めることはできない。

2 保全の必要性
 本件新株発行決定時の株価と本件発行価額との差額の程度及び従前の発行済株式総数1630万株に対し本件新株発行に係る発行予定総数が770万株であるというその数量にかんがみると,既存株主の被る不利益は極めて重大なものであるから,著しい損害を被るおそれを認めることができる。
 そして,本件新株発行の払込期日は,平成16年6月3日と定められていて間近に迫っているところ,その期日が到来し,引受人が払込みをして本件新株発行の効力が生じた場合,その後は商法280条ノ10に基づく差止請求権それ自体が無意味なものとなるだけでなく,商法343条所定の特別決議を経ないで株主以外の者に特に有利なる発行価額をもって新株を発行したことは,新株発行無効の訴え(商法280条ノ15)における無効原因とならないと解されるから,本件新株発行の手続を差止めるについての保全の必要性も認めることができる。
* まとめると、被保全権利については、鑑定が不当であり、また、自主ルールは有効で、それによる価額に比べて特に有利といえ、さらに、長期保有目的を有することから、認められる。保全の必要性についても、不利益が重大であり、認められる。

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