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ぶっ飛んだ事をしたいコミュの★最南端からの手紙★第2話

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ざわわ〜ざわわ〜

シャーンシャーンシャーン♪

『あんた、こっちに立った方がやりやすからっ』


ついに本格的にサトウキビ畑ので仕事が開始した。

自給650円で8時〜17時まで。週休約2日。


『山本さん、起きた〜?』

トシオバァの声で目覚めた。

『はーい、大丈夫でーす』

いかにも起きてましたかのように返事をした。

時計を見ると7時50分。。

やべぇ初日から遅刻してまう。

昨日の夜は、興奮してなのか、この家に慣れていないのか、中々寝付けなかった。

朝6時半に目覚ましをセットしていたがまさかの3度寝をしてしまった。

ダッシュで準備をして原付で畑に向かった。


既に作業をしている人もいたが、僕と同じ手伝いで来ている水谷さんも到着したとこだった。

短期でバイトで働きに来る人の事を島では『ヘルパー』と呼ぶ。

僕は一典さんちのヘルパーだ。

キビ狩り隊員は波照間に何人いるかは分からないが、今日の畑には8人。

そのうちヘルパーは僕と水谷さん。他6人は島の人だ。


毎日どこの畑に行くかはその日の前夜に分かる。

電話もしくは畑の人が『明日は○○さんちの畑にお願いします』と伝えにくる。

と言われても僕は場所が分からないので、トシおばぁに昨日下見に連れていってもらっていた。


『そこ右で、あの塔がある所を右ね。ここはノウメン道路っていうから、一周道路出たら左』

景色はどこを見ても同じような畑なので、方向音痴な僕は必至で頭の中に道を叩き込んだ。


『うちの山本さん、明日から宜しくね』

畑で働いているおじさん、おばさんに紹介をしてくれた。

成人式の夜に秀治おじさんちにいた、おじさんもいた。

『キビの狩り方教えてやるから、ほれカマ持って』

トシおばぁは77歳だというのに、いとも簡単にカマでキビを拾い上げ、ドヤ顔でキビを削ぎ出した。

『ほれ力はいらねぇから、こうやんだ。』

この時のトシおばぁは、とても勇敢でたくまして、非常に絵になる光景であった。


キビ狩り(サトウキビ狩り)はカマでキビを狩り倒すのがメインの仕事ではない。

手順は以下のようになる。

?トレーラーが入れるスペース分、カマでキビを狩り倒す。

?トレーラーで畑のキビを倒しまくる。

?倒れたキビを拾って、キビの周りについた葉や土を削ぎ落す(削ぎ落すようのカマがある)

?削ぎ落したキビを集め、ロープでくくる。ざっと300本くらい。

?くくったヤツをトレーラーで、業者が運び出せるように集める。

最終的には全部自分でやるが、メインの仕事は削ぎ落す?の仕事だ。


昨日、トシおばぁに教えてもらっていたお陰で今日はすんなりとキビを狩れた。

近くのおじさん、おばさんに効率の良い持ち方や立ち方、運び方を教えてもらった。

どうせやるなかカッコいい方がイイので自分なりにカッコ良く見えるやり方でやってみた。


『10時だぁ。』

黙って黙々を作業を進めていた70くらいの、おじぃが口を開いた。

『まだなってないよ。』

近くのおじさんが言った。

10時から15分、13時から1時間、15時から15分の休憩があるのだ。

休憩時間は、お茶を飲んだり喋ったり、寝転んだりして過ごす。


僕は初めての休憩に、水谷さんが住ませてもらっている家のゆみさんに話かけてみた。

『犬さわってもイイですか??』

白い犬の名前は金次郎。

これきっかけでゆみさんは心を開いてくれた。

『リンゴ食べる?』

肉体労働の合間に食べるリンゴは、うますぎた。

甘くてほっぺが落ちるという言葉のように両頬の下の辺りが痛くなった

これで後2時間がんばれそうだ。

午前中に狩ったキビは242本。

心のなかで数えながら作業を進めていた。

一体帰る頃には何本狩れるうようになっているのかが楽しみだ。


昼休憩は、みんなお弁当を持ってきていたが僕は家に帰って食べればよいと思っていたので、

一旦帰宅した。明日から持ってきて皆とお喋りしながら食べよう。

前夜仕込んでおいた、味噌汁と、焼きそばと、キャベツの千切りを食べた。

味噌汁の中身はすごい事になっている。

かぼちゃ、だいこん、豆腐、白菜、鶏肉、じゃがいも、にんじん、キノコ、玉ねぎ、しょうが

具だらけで、汁が少なくなってしまった。

東京で2年半一人暮らしをしていたが、料理を全然していなかったのでこの有り様だ。

イイトモを見ながら食べる昼ごはんは幸せであった。


ざわわ、ざわわ、ざわわ〜♪

さとうきび畑を歌いながら、畑に向かう時間はとてつもなく幸せを感じた。


『おーい、やるぞぉ〜』

昼の時間開始だ。

午後からは一体何本狩れるのかが楽しみだ。

しかし、体は慣れない肉体労働でかなり、既に眠りたい状態である。

シャーン、シャーン、シャーン。

キビの葉を狩る時、こんな音が鳴る。

気持ちの良い音だ。

23本、24本、と数える中で、色んな事が頭の中に浮き上がってくる。

キビを狩っているのを忘れて、その世界に入りきってしまう時もある。

前に働いていた仕事の事、これからの人生について、親の事、キビを使ってのギャグを考えたり。

32本、33本。

本当にこの数で合っているのだろうか。

『山本さんは長男?』

ゆみさんだ。

『はい。そうです。よく分かりましたね!』

『そんな感じがするよ。妹さんがいる?』

『は、はい良く分かりましたね!』

『A型でしょ?』

『B型です。。』

調子に乗りすぎたようだ。何でもかんでも当たるはずがない。

こんな会話もたまに交わしながらキビを狩る。

ほっこりして、心にまとわりついていた、有刺鉄線のようなものが溶けていくのが分かる。


『三時だぁ。』

例のおじぃが、時報のように口を開く。

まずぃ、100本しか午後は狩れていない。

完全に肉体疲労がきている。

狩り方はうまくなっているはずだが、それ以上に体力が消耗しているのだ。


僕は寝転がったり、金次郎と戯れて遊んだ。

ゆみさんがくれた、ラスクはとてつもなくうまかった。

ゆみさんちのヘルパーの水谷さんは千葉県出身の30才くらいのお兄さん。

物静かだが優しさが全力で表情に表れている方だ。

最近までは北海道の山小屋で働いていたらしい。

大阪に10年くらい住んでいた事もあり今里にいたと。

話は合うと思うが、ゆっくりゆっくり話していこうと思った。


さぁ、残り2時間、どこまで狩れるのか勝負だ。

せめて午前中の240本は超えたい。

僕は50本狩る毎に時計を見るようにした。

しょっちゅう見てしまう癖をつけると、時間が全然進まないからだ。


両手が痛くなってきた。体は寒いのか、暑いのか分からない。

おそらく気温は15度くらい。

1月とは思えないくらい気温は高い。

166本、167本、168本、心の中で数える。

それにしても僕は何を試されているのだろう。

サラリーマンを辞め、歌舞伎町で働き、東京からフェリーに乗って那覇に着き、

旅の途中でキビ狩りの事を知り、紹介してもらって今ここでキビを狩っている。

本当ならば、年内で旅を終えてアメリカ行きを進めるはずだったのに。

そのままの状態でアメリカに行ってはいけないという事だったのだろうか。

全ての事に意味がある。でも流されないように。母親はこう僕に言った。

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