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Spare Timeコミュの小説「ヒカリに満ちて」渡邉 聡

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prologue
今、生きているという日常。その全てが全くの嘘だとしたら、私は一体何だ?と考えてみる。
モノを考え、言葉にする私はなんだ?今いる私が幾星霜にも続く夢の中の私であるなら、目覚めた後の私は私であるのか?
人間という生き物も全て私の夢の登場人物。
いわば物語の作者は私。主人公も私。
世界が私。
宇宙が私。

1、異変
卒業式用の吹奏楽曲、「my way」の楽譜を眺めて、数十分、意識は完全に考えごととやらに捕らわれていた。受験シーズンが迫り、自分の進路について考えるのだが、考え始めるとついつい意識が宇宙へ飛ぶ。考えれば考えるほど自分の未来図や将来像みたいなものが浮かんでこないからだ。いけないいけないと目をパチパチさせて再び楽譜へ目をやる。
卒業式用の楽譜を見てはいるが、藤沢マドカは現在高校三年生。マドカの吹奏楽部員としての活動は秋期コンクールを最後に形式上は終了している。
ただただ好きだった。吹奏楽を三年間続けて得たものは言葉で言い表せないくらい価値のあるものだった。苦しいこともあった。でもやり続けて良かったと思えるほど。だから最後の大会が終わったあとは心にぽっかり穴が開いたような、否、体の一部を削ぎとられるような、痛みを伴う虚無感を感じた。
ハァと小さくため息を漏らしたマドカはまた輪廻の瞑想に耽るのだ。 大学には行ってみたい。できることなら吹奏楽も続けたい。やりたいことは吹奏楽しかない。今の所は。大好きというが、マドカは取り立てて上手い訳ではなかった。それは自分でも解っている。でも一生続けたいと思えることがこんなに早く見つかったのが誇りでもあった。ただ将来のこととなると話はまた別だ。音楽の仕事に就ける人間なんて選ばれたほんの一握りの存在なのだ。狭き門をくぐり抜けて、足を踏み入れたとしても成功するとは限らない。
普通に大学に行って、普通にOLをやって、普通の人と結婚して、普通に死んでいく。それがいいのかもしれない。
そもそもマドカは普通の家庭に生まれた。普通の父に普通の母、妹も普通の中学生。財力も普通。家族平均して頭のデキも運動神経も至って普通。普通が一番なんて言う人もいるが、マドカにはそれが少しコンプレックスだった。
「もうちょっとお母さんと話してみよう、、、」結局何の答えも出ないまま再び楽譜に目をやる。力の表現やテンポを自分なりにわかりやすく書き込んだ楽譜。私の大事な宝物の1つ。
「それ、まだ持ってたんだー!」
背後からいきなり声がしたので、自分でもビックリするぐらいびっくりした。
「何おどろいてんの?」
「もう、、ユウコ。脅かさないでよー。」
「また、音楽室でボーっとして。いないから探しに来たんだよ。すぐわかったけどね。」
「え、探してたの?何か用事があった?」
「、、、今日一緒に帰るってマドカ言ってたじゃん。」

あ、そうか。

彼女、高井ユウコは私のクラスメート。同じ吹奏楽部の部員でもあった。前部長であり、サックスの腕前もかなりのもの。頭もそこそこに良いし、文化部にしては運動も出来る。絵に書いたような優等生ではなくどこかざっくばらんな印象を受けるユウコ。その優等生過ぎない所がマドカは好きだった。
「一緒に帰るって言っても駅までだからあんまり話したりできないね。」「うん、ユウコの家、遠いもんね。」
「そうなんだよねー。行き来だけで疲れちゃうよ。」
ユウコの家はここ東山町から電車で一時間弱かかる。遠いけど吹奏楽部の活動が盛んだから来たって言っていた。幼少のころから楽器はやっていたみたい。上手い訳だ。
「ユウコは本当に楽器ができて羨ましいなぁー。」
「ん、マドカも出来てたじゃん。最後の大会なんてかなり良かったんじゃない?」
「そうかなー。緊張しっぱなしだったよ。震えてたし。」
ケラケラとユウコは軽く笑いこう言う。
「マドカは才能あるんだから大丈夫だよ。」

ユウコはいつもこう言う。初めて会った時からずっと。

ふらふらお喋りをしながら駅の方に歩いていくと、「あ、あれ今日から始まる映画じゃない?」
と切り出すユウコ。「確かそうだよ。」
「うーん、見たいなぁ、CMから気になってたんだよねー」
ユウコは映画に惹かれているようす。
映画館の巨大なポスターには国産のサスペンス映画のイメージが描かれている。ユウコはポスターをジッと眺めて、ウンウンやったあと「遅くなっちゃうしヤッパリ駄目だね。マドカ今度勉強休みに見に行こうよ。」
「うん。私も見たかったし、いいよ。」

ユウコと別れユウコと反対側のホームの階段を下る。反対側のホームにユウコの姿を見つけた。
壁にかかったさっきの映画のポスターをじっと見ている。
「そんなに見たかったのかな。」
私は鼻笑いをして、電車の影に消えるお互いの姿にこっそりバイバイをした。

続く

コメント(4)

普通に見てしまいましたよ!
よく考えますね〜すごいですわ〜
もう書いてるんですか!
まだ僕は、全然構想すら浮かんでません…
早く書かねば…
おもしろそーな事やってんなー。ウンウンやってる、の件が町田康を思い出したよ。楽しみにしてまーす。
まだ全く流れを考えてないんだけどね。岩下真二にプレッシャーを与えるために書きました

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