宝塚大劇場で７月４日11:00開演のを見てきた。なにより嬉しかったのは、オーケストラが戻ってきた事。会場にはいると、オケが音を出しているのが聞こえる。それだけで嬉しい。また、劇場全体にざわめきが戻ってきた事も嬉しい。去年再会したときはまるでお通夜で不気味なくらいだったもの。これで日常が少しは戻ってきた感じがする。指揮は芝居・ショーとも西野淳氏である。宝塚歌劇に久々の登場なので張り切っているように見える。
まずは「シャーロック・ホームズ」、作・演出の生田大和氏はよほどのシャーロッキアンと思われる。全体にドイルのシャーロック・ホームズ物に対する深い敬意と愛情を感じられるのだ。シャーロック・ホームズを語る上で欠く事の出来ない女性、アイリーン・アードラを演じるのはトップ娘役潤花。また、シリーズ中最大の敵役モリアーティ教授は芹花斗亜によって演じられる。当然、主役のシャーロック・ホームズを演じるのはトップの真風涼帆。
シャーロック・ホームズ・シリーズの様々なエピソードが出て来るが、基本的に原作に忠実である。この芝居は、原作のエピソードを劇化したものではなく、原作の中から色々な要素を集め、さらに生田氏自身の解釈を加えた、新しい創作物となっている。その意味では一種の二次創作と言えよう。決して謎解きが中心になっているわけではないが、ホームズ物の精神は十分生かされている。
特に面白いのがアイリーン・アドラーだ。彼女は、シャーロック・ホームズ・シリーズの最初の短編「ボヘミア王国の醜聞」に出て来る。それに、ホームズを出し抜いたただ一人の女性なのだ。この芝居では、あの事件から３年後、彼女はオペラ歌手としてロンドンのコヴェントガーデンに出演している。このオペラのシーンで「乾杯の歌」が引用されるのが面白い。
時代はビクトリア朝、言うなればイギリスの黄金時代だ。しかし、一方では貧富の差が開き、「お上品」ぶっていた時代でもある。その時代の象徴がスティーブンソンの「ジキルとハイド」、オスカー・ワイルドの「真面目が肝腎」。この芝居では、切り裂きジャックに対し大胆な解釈をしている。それに、ビクトリア女王の狙撃・暗殺未遂事件をとりあげ、シャーロック・ホームズの「世界」に当てはめている。
ドイルはシャーロック・ホームズ・シリーズを書くのに嫌気がさして、第二短編集「シャーロック・ホームズの思い出」の最後で、シャーロック・ホームズを殺している。スイスのライヘンバッハの滝の場のくだりから最後まで原作に忠実だが、最後の最後でこころにくいばかりのひねりが用意されている。ラストシーンの粋な事、大劇場デビューの時からこの人の芝居を見ているが、今回非常に良く出来ているのではないか。
続くショーは、野口幸作の "Delicieux!" 前回久しぶりに見たショーが面白くなかったので、今回もあまり期待していなかった。作・演出が野口幸作だからちょっとは見られるか、と思ったが良い意味で期待を裏切られた。これは素晴らしいショーだ。幕開き、芹花斗亜のギャルソンが歌い出す。それから、トップの挨拶が、"Bonjuour messieurs et medam !" と入る。トップがフランス語で挨拶をしたのを初めて聞いた。
プログラムによると、野口幸作氏の今回の狙いはフランス、アメリカン・ショー志向だったが、今回はお菓子の国に迷い込んだ感覚のショーになっている。
初めから大階段を使い、フレンチカンカンを見せてくれる。その上、久しぶりに観客参加型で、総踊りとなるプロローグは圧巻だ。これだけで、楽しくなる。音楽はチャイコフスキーの「くるみ割り人形」を使い、歌詞が替え歌になっている。なるほど、お菓子ばかりだから、「くるみ割り人形」を使ったのか。
王妃のお茶会と言う趣向の第二章が面白い。芹花斗亜のマリー・アントワネットに、真風涼帆がフェルゼンに扮する。そこにお菓子の名前をした貴族が出て来る。音楽はモーツアルトを使っている。芹花がわっかのドレスから引き抜いてダルマになるところが見事だ。
フランスには "foret noire " と言うお菓子があるらしい。チョコレートケーキの一種だそうだ。でも、これドイツの Schwarzwaeldertorte のこのことみたいだ。野口幸作らしいのは、ラインダンスのシーン。舞台中央に三段のケーキがしつらえそこに39人の新人が勢ぞろい。そして廻舞台をまわす。この人のショーは、古風なところと現代的なところが同居している。今回もどこかアールデコを思わせるような所と、まさしく現代という所が見事に融合していてなかなか見応えがあった。
お断り：文字化け防止の為フランス語のアクサンは省略し、ドイツ語の "a" ウムラウトは "ae" にした。
まずは「シャーロック・ホームズ」、作・演出の生田大和氏はよほどのシャーロッキアンと思われる。全体にドイルのシャーロック・ホームズ物に対する深い敬意と愛情を感じられるのだ。シャーロック・ホームズを語る上で欠く事の出来ない女性、アイリーン・アードラを演じるのはトップ娘役潤花。また、シリーズ中最大の敵役モリアーティ教授は芹花斗亜によって演じられる。当然、主役のシャーロック・ホームズを演じるのはトップの真風涼帆。
シャーロック・ホームズ・シリーズの様々なエピソードが出て来るが、基本的に原作に忠実である。この芝居は、原作のエピソードを劇化したものではなく、原作の中から色々な要素を集め、さらに生田氏自身の解釈を加えた、新しい創作物となっている。その意味では一種の二次創作と言えよう。決して謎解きが中心になっているわけではないが、ホームズ物の精神は十分生かされている。
特に面白いのがアイリーン・アドラーだ。彼女は、シャーロック・ホームズ・シリーズの最初の短編「ボヘミア王国の醜聞」に出て来る。それに、ホームズを出し抜いたただ一人の女性なのだ。この芝居では、あの事件から３年後、彼女はオペラ歌手としてロンドンのコヴェントガーデンに出演している。このオペラのシーンで「乾杯の歌」が引用されるのが面白い。
時代はビクトリア朝、言うなればイギリスの黄金時代だ。しかし、一方では貧富の差が開き、「お上品」ぶっていた時代でもある。その時代の象徴がスティーブンソンの「ジキルとハイド」、オスカー・ワイルドの「真面目が肝腎」。この芝居では、切り裂きジャックに対し大胆な解釈をしている。それに、ビクトリア女王の狙撃・暗殺未遂事件をとりあげ、シャーロック・ホームズの「世界」に当てはめている。
ドイルはシャーロック・ホームズ・シリーズを書くのに嫌気がさして、第二短編集「シャーロック・ホームズの思い出」の最後で、シャーロック・ホームズを殺している。スイスのライヘンバッハの滝の場のくだりから最後まで原作に忠実だが、最後の最後でこころにくいばかりのひねりが用意されている。ラストシーンの粋な事、大劇場デビューの時からこの人の芝居を見ているが、今回非常に良く出来ているのではないか。
続くショーは、野口幸作の "Delicieux!" 前回久しぶりに見たショーが面白くなかったので、今回もあまり期待していなかった。作・演出が野口幸作だからちょっとは見られるか、と思ったが良い意味で期待を裏切られた。これは素晴らしいショーだ。幕開き、芹花斗亜のギャルソンが歌い出す。それから、トップの挨拶が、"Bonjuour messieurs et medam !" と入る。トップがフランス語で挨拶をしたのを初めて聞いた。
プログラムによると、野口幸作氏の今回の狙いはフランス、アメリカン・ショー志向だったが、今回はお菓子の国に迷い込んだ感覚のショーになっている。
初めから大階段を使い、フレンチカンカンを見せてくれる。その上、久しぶりに観客参加型で、総踊りとなるプロローグは圧巻だ。これだけで、楽しくなる。音楽はチャイコフスキーの「くるみ割り人形」を使い、歌詞が替え歌になっている。なるほど、お菓子ばかりだから、「くるみ割り人形」を使ったのか。
王妃のお茶会と言う趣向の第二章が面白い。芹花斗亜のマリー・アントワネットに、真風涼帆がフェルゼンに扮する。そこにお菓子の名前をした貴族が出て来る。音楽はモーツアルトを使っている。芹花がわっかのドレスから引き抜いてダルマになるところが見事だ。
フランスには "foret noire " と言うお菓子があるらしい。チョコレートケーキの一種だそうだ。でも、これドイツの Schwarzwaeldertorte のこのことみたいだ。野口幸作らしいのは、ラインダンスのシーン。舞台中央に三段のケーキがしつらえそこに39人の新人が勢ぞろい。そして廻舞台をまわす。この人のショーは、古風なところと現代的なところが同居している。今回もどこかアールデコを思わせるような所と、まさしく現代という所が見事に融合していてなかなか見応えがあった。
お断り：文字化け防止の為フランス語のアクサンは省略し、ドイツ語の "a" ウムラウトは "ae" にした。
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