宝塚が好き！（Gay Only）コミュの宝塚歌劇「イスパニアのサムライ-El Japon-」「アクア・ヴィーテ　命の水」

今年最後の宝塚大劇場詣では12月７日、15:00開演、場所はいつもの２階B席、これ宝塚友の会と三井住友カードとの共同貸し切り公演だった。

「イスパニアのサムライ」の作演出は大野拓史。駄作、とまではいかないが、凡作である。時代は江戸初期、支倉常長が伊達政宗の命によりスペイン、ローマに赴いた話を元にしている。だから、半分和物で、最初の群舞は日舞で二枚扇を遣っていた。でも、見慣れた歌舞伎舞踊とはちょっと違う。和物から始まって、洋物にもっていくところ、なかなか面白そうじゃないか、と最初は思わせるものの、それは最初だけ。

スペインには「サムライの末裔」と称する「ハポン　Japon 」姓の人が存在する事に発想を得たそうだが、確かに、それは悪くない。しかし、これと言ったひねりもなく、せっかく専科から英真なおきを呼んで敵役にしているが、まるいで戦隊もののような絵に描いたような悪役、通り一遍の作品になってしまった。大野拓史の作ったこの物語よりも、プログラムに載った太田尚樹の「川岸の町の意外な歴史物語」と称するエッセーの方がおもしろい。なるほど、「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったものだ。

ただ、ちょっとおもしろかったのは音楽。高橋恵と玉麻尚一が担当しているが、玉麻尚一の音楽がちょっと斬新なのだ。リズムがなんとも複雑で、変拍子を多様している。それに、旋律もちょっと変わっていて音程が取りにくそうだ。ちょっと「ウエストサイドストーリー」の「アメリカ」に似たリズムを使っていたところもあった。このような音楽だからこそ、マエストロに佐々田愛一郎氏が起用されたのだろうか。いつものように、オケも芝居づくりに一役も二役もかっていた。それに、殺陣がなかなか見せる。本格的なのだ。殺陣師がちゃんとプログラムに載るだけの事はある。

続くショーは「アクアヴィーテ！！ aqua vitae ー命の水ー」、作演出は藤井大介、指揮は橋本和則。せっかく指揮者を紹介しながらスポットを当てないのはなんとも不親切じゃないか。藤井氏はよほどの酒好きらしく、以前もワインをテーマにしたショーを書いていた。音楽はいつもの青木朝子が中心になっている。だから、だろうか、いつもの宝塚のショーになっている。

今回のテーマはウィスキー。「ウィスキーがお好きでしょ」と男役が何人かで歌い、それこそ歯の浮くような台詞を語る。世の女性は、生身の男性、例えば恋人や御亭主がこんな事を言えば横っ面を張り倒したくなるようだが、男役が語るとうっとりと聞いている。ちょっと面白かったのはタンゴのシーン。主演の真風涼帆がまるでタンゴ・アルヘンティーナのようなダンスを見せるのだ。ここが一番見応えがあった。と、言うよりここくらいしか良いところがないのだ。と言うのが結論である。