宝塚が好き！（Gay Only）コミュの宝塚歌劇「激情ーホセとカルメンー」「アパショナートIII」

梅田芸術劇場　３月20日16:30開演　三階B席３列36番

この公演を見ようと思ったのは、脚本が柴田侑宏だったから。去年の源氏物語が良かったし、ファンや生徒達の敬愛を集めている作家の作品だからだ。

これはオペラの「カルメン」を元にしていると思ったが、実際見てみるとオペラよりもメリメの原作をかなり意識したものになっている。面白いのは、メリメ自身が出てきて狂言廻しになっている所。

オペラでは、カルメンとミカエラ、ホセとエスカミリオが対比的に描かれているが、ここではエスカミリオの影が薄い。オペラでは、ミカエラはソプラノで典型的なフランスオペラのヒロイン、歌も典型的なクラシックである。それに対してカルメンはアルトかメゾで「ハバネラ」「セギディーリア」などの言うなら「民謡」。ここでも、自由な女「カルメン」と清純な娘「ミカエラ」と言う対立が出来ている。しかし、オペラでは「ホセ」とエスカミリオと言うもう一つの対立があるが、ここではエスカミリオの存在は、少なくともオペラより希薄である。

何故か。

それは、ホセがオペラとはだいぶ違う人物であるからだ。ホセはまっすぐな人物である。それがカルメンと言う魔性の女に出会い。その色香に迷う。ここまでは、オペラも宝塚も同じ。違うのはオペラのホセがテノールが歌う優男であるのに対し、宝塚版ではかなり骨太な人物になっている所だ。まっすぐな性格ではあるが、カルメンと言う魔性の女に引っかかった為にそのまっすぐさが変な方向にいってしまった。まっすぐな性格故に一旦方向を間違うと破滅へと一直線に突っ走ってしまう。物語はホセを中心に展開する。ホセの「激情」がすべての悲劇の原因。だから、オペラのように明るい雰囲気ではなく、全体に暗い。

それにしても、柴田脚本・謝珠栄の演出は見事である。オペラではホセがカルメンを殺したところで終わるが、まだ続きがあるのにちょっと驚いた。また、さすがと思ったのはホセがカルメンを殺しに戻ったところできちんとした身なりをしていた事。オペラでは最後にホセが出てくるところでぼろぼろな感じにしている演出がままあるが、きちんとしている方が正解。ホセは母が亡くなったから喪服を着ているのだ。もう一つ書いておくべき事がある。舞台には出てこないが、ホセの母がこの芝居では重要な役割を占めている。ホセは母とミカエラの世界とカルメンの世界とに引き裂かれている。

出演者では、メリメとジプシーの首領ガルシアを演じる凪七留海が好演。それに流石組長飛鳥裕のホセの上司スニーガが手堅い出来である。それに、オペラではほんのちょい役のジプシーの仲間達が結構大切な役になっていて好演。それに、時期トップの珠城りょうがなかなか。また、今回一番の出来はカルメンの愛希れいかである。

続くショーは「アパッショナートIII」、大劇場で初演以来、再演が地方巡業、今回また巡業で取り上げられこれで三度目だとか。大きい梅芸大ホール、少ない人数があまり気にならない濃厚なショーになっている。ただ、ショー半ばでトップの羽根に隠れて組長が見えない。組長さんに気の毒だよ。

最後、カーテンコールで組長の挨拶、大阪出身者の紹介、珠城りょうの挨拶があった。その中で、二階席の方、三階席の方、ここからよく見えてますよ、と言ってくれたのが嬉しかった。