宝塚が好き！（Gay Only）コミュの宝塚歌劇「風と共に去りぬ」

だいぶ前に見たのだけど、劇評が今になってしまいました。

観劇日９月28日

「風と共に去りぬ」と言えば、ビビアン・リーとクラーク・ゲーブルの映画があまりにも有名で、その上原作は世界的な大ベストセラー。僕は原作は中学生の時に読んでいる。映画も同時期にテレビで見た。たぶんその時が日本で初めてのテレビ放映だったと記憶している。

それに「風と共に去りぬ」と言えば、「タラのテーマ」。あまりにも有名で、原作・映画と共に「タラのテーマ」が僕の脳裏に焼き付いて離れ無い。指揮者が棒を振り上げると、「タラのテーマ」が聞こえてくるのか、と思ったが、当然と言えば当然、聞こえてこなかった。しかし、勿論、「タラのテーマ」が無くともこの音楽はよく出来ている。

ヒロインのスカーレットを男役が演じている。これは上手いやり方だと思った。歌舞伎でも、八汐や岩藤は、江戸では立役が演じるのだから。それに、スカーレットを「二人一役」で演じるのがなかなか面白い。物語が途中から始まるから、スカーレットがどんな人が示すのにとても効果的なやり方だ。

物語は、未亡人になったスカーレットがアトランタを訪れる所から始まる。だから、スカーレットとレットが初めて会うシーンは無い。映画ではこのシーンで、スカーレットがどんな女かよくわかるのだが。

映画史上に残るスペクタクルな名シーンとして知られている「アトランタ炎上」、ここを舞台でどう見せるか。僕は大変興味があったが、流石に植田である。ものの見事に、舞台ならでは見せ方をしていた。このシーンから、第一幕幕切れまでは、素晴らしいと言うほか無い。特に幕切れが素晴らしい。映画での第一部と同じ所で終わる。

第二幕を見ていると、南北戦争前後の南部と戦争中から戦後すぐの日本がだぶって見えてくる。植田紳爾は戦前の生まれである。戦争の悲惨さをよく知っている人だからそここのような解釈をしたのだろう。それから、この物語をスカーレットの成長物語と解釈していた。なるほど、こういう見方もできるのかと思わず感心した。

膨大な原作をここまで縮めながら原作の持っている精神が失われていない。それに、映画のファンにも懐かしく見えるシーンが用意してある。例えば、スカーレットの衣装。白と緑のあのドレスは最初にスカーレットが着ているドレスで、スチールにも使われ、とても印象的であった。それを舞台でも使ってくれたのが嬉しい。その上、植田神璽独自の解釈も加えられ、原作から新しいドラマを引き出した。

出演者で特に印象に残ったのが、ベル・ワットリングの緒月遠麻である。原作や映画よりも大きな役になっていて、レットの情婦、淫売屋の女将でありながら南部の人であり、南部の誇りを持っている事がよくわかる。

原作・映画での印象的で有名な台詞「明日タラへ帰って考えよう。明日は明日の風が吹くのだ」は第二幕途中に出てくる。だから、僕はここが伏線になっているのだと思った。

そして、最後、レットがスカーレットを捨ててそのまま幕になる。これはいただけない。レットに去られたスカーレットが前述したあの印象的な台詞を言うから、悲劇で終わりながら、一抹の希望があるのだ。これが最後にないと画竜点睛を欠く。僕は植田さん、何か忘れてませんか、と言いそうになった。