今日の昼頃にＵＰしたベスト・テン＆ワースト・テン＆個人賞に【特別賞】を追加した。なんの権威もないけれども。
【特別賞】
・『閉鎖病棟-それぞれの朝-』興行における笑福亭釣瓶の全国舞台挨拶決行宣言に対して
この作品は、僕はダメだと思った。
「患者や院外者がエレベーター一本で屋上に出られて、施錠どころか柵もなく、飛び降り出来てしまう精神病院なんて、いまどきどこにあるんや？」等、粗が一杯。他にも一杯。
で、興行も不振でね。出来が芳しくないわ、入らないわとなったら、作り手さんは落ち込むであろう。ここで落ち込まへんねやったらおかしい。「映画、作りましたー。完成しましたー。わーい。はい、終わり―♪」だったら、それはただのオナニー。
そりゃ、釣瓶師匠がね、この後で、実際に全国の上映館を回ったかといったら、多分、無理ですわ。物理的にもね。ただ、1館でも2館でもね、実際に回った上で、「まだまだ回りますよ！ みんな来て下さいね！」的な、ね。俺は「偉い！」と思ったよ。『剣岳 点の記』で日本を代表する撮影監督である木村大作が初メガホンを取った際も、全国を単独で宣伝巡業していて感銘を受けたけれども、釣瓶師匠って、本来、映画界とは別業界の人じゃないですか。落語家。他業種。それでもって売れっ子。ビッグネーム。
その御仁がね。「九州の映画館にお忍びで行った」と。「観客6人でしたけどね」とも。普通、「結構、入ってた」とかぶち上げるんちゃうの？ 嘘でも。
そりゃ、初日舞台挨拶付き上映とか、関係者来場告知済の完成披露上映なんてのにはね、お客さん、入るねん。客席、埋まるねん。
ぶっちゃけるで。
埋まりそうになかったら、興行関係者が知り合いに「来てーーー！！ 友達を誘ってもエエよ、っていうか誘ってーーーー！！」って頼って、動員かけるわ。
実際に何回も行ったもん。「時間あったら来て。お願い。恰好つかへんねん！！」ってことで。どの作品かまでは言わへんけども（ちゅーか、1回こっきりの業務試写なのに僕を含めて3人て事があったぞ。作品、選り好みするなよ。他に仕事があるなら別やけど、複数回試写する作品の方を優先するっておかしいやろうが。俺と高橋聰先生と浅野潜先生だけやったぞ←僕だけ『キネマ旬報』のベスト・テン選者じゃないという哀しさたるや…… これはタイトルをはっきり書いてやる。『スパルタの海』の封印解禁時の業務試写だ）
……そういえば、梅田ＯＳ劇場＆ＯＳ名画座（現・ＴＯＨＯシネマズ梅田別館スクリーン9＆10）が閉館すると知った時、閉館の1ヶ月ぐらい前に「長くお世話になりまして…… また閉館までに来ます」と一介の一般客のくせに挨拶に行ったら、「あ、どうもどうも。そうなんですよ〜。うんたらかんたらで〜。これ、ハイ♪」ってな感じで招待券10枚ぐらいくれた。「あのー、コレとコレは観ましたから、3・4枚で……」と言ったら、「御友人の方にお配りになって下さい！！」って。で、数日後に「先日はありがとうございましたー。配り切りましたー」と報告に行ったら、「そうですか、ありがとうございます。足りないですね。じゃあ、ハイ」→バサっ！→50枚ぐらい無造作に……ってなこともあった。
今は無き天六のホクテン座でも、『バトル・ロワイヤル�供…炭臆痢戮魎僂帽圓辰燭蕁◆屬修譴魯灰奪繊廚噺世錣譴董▲好�リーン2に入ったら『アニマトリックス』が上映されて、「なんでワーナーさんの短編が併映されるねん？ どないなっとんねん、東映さん……」と思ったら、直後に『ドリームキャッチャー』の上映が始まって…… 「あ、これ、もう梅田ピカデリーで観たしー。ちゅーか、『バトル・ロワイヤル�供戞次次爾叩�！」となって、モギリのおばちゃんに「もー！！ おばちゃん、スクリーン1やわ。2は洋画やわ、今！ もーーー！！ 上映始まってるやんっ！！」と言ったら、「そんなもん人間やねんから間違うことかてあるわ！！ 招待券やったらエエんやろーーー！！」→10枚ぐらいヤケクソでバーン！！、なんてこともあったわ。
おおっ！！ 大幅に話が逸れた……（＾＾；）
釣瓶師匠、釣瓶師匠。
釣瓶師匠ね。偉いよ。って、俺はそれが当たり前や、とも思うんやけどもね。ただ、暇ではないやんか、釣瓶師匠。それをね、仕事の合間に映画館まで行って、シニア料金でチケットを買って、「気付かれなかったんです(苦笑）」という。で、「飛び込み舞台挨拶、面白い！ 全国を回りたい！ 1対1になっても面白いと思います」的な、ね。こんなもん、初日や完成披露で口にしても、ただの大口やん。でも、公開後に実際に地方の劇場に足を運んだ上でのことでしょ。そら、なかなか出来へんで、と。主演作で気合が入ってるというのもあるのだろうけれども、それでも、しない人の方が多いんじゃあないの？
宣伝って、大事よ。
俺、ずーーーーーっと言ってるもん。でもって、やってきたもん。自主上映したりさあ、自主配給したりさあ。黒字も赤字も経験ある。借金もしたことある。ダメ元で、コネも無いのにテレビ局や鉄道会社やらに「紹介して下さい！」、「宣伝、お願いできませんか？」って企画書を持って回ったこともある。ラジオ局は当時の仕事仲間の方にＯＫをいただいて出演までＯＫをいただいたけれども。あと、自費出版の市民新聞の発行者に突撃して、編集会議で2時間ぐらい喋った結果、反対意見大多数だったのをバンとひっくり返してドーンと特集号を刷っていただいたこともありますわ。人の金で……（←しかも、その後、新作映画紹介の連載枠をいただいた。アレ、稿料、良かったねん♪＾＾；）でもね、手元に置いておく保存分2部以外は全部撒いた。撒ききった。上映館や有志の方の御協力もいただいて、ね。最後、上映前は劇場近くのウン百棟っていうマンションの集合ポストにチラシ入れて回ってね。
それでも入る時もあればスカタンに入らへん時もあるねん。それが興行。
でね、釣瓶師匠。『閉鎖病棟-それぞれの朝-』はね。これ、製作委員会方式での製作でしょ。複数の大きい会社が集って作った映画。でもって、配給は東映さん。メジャー3社の一角。となったら、任せっきりやろ、大抵は。でも、釣瓶師匠は違うねんな。【義理欠く、恥かく、人情欠くの三角マーク】と揶揄される東映さんの配給作品でよ。釣瓶師匠は「6人しか入ってなかった」と恥はかいても、義理と人情は保ったやん。あと熱意、な。
熱意、肝要。
俺、入ってない作品の方が熱意は必要やと思うわ。いや、公開前は、どの作品でも熱意は要るよ。
淀川長治先生、怒っていらしたじゃないですか。ジョナサン・プライスとエマ・トンプソン共演の『キャリントン』の宣伝担当が、ハナから「どうせ当たらない〜」という態度満開だったのを目にして激怒という（←それで、宣伝さんが頑張って、公開後に淀川先生がすき焼きを奢ったという）
俺かて、某独立系映画（←邦画。ヒットした。賞も沢山獲った）の先行上映会の打ち上げの時、上映館の支配人さんが「どこそこの劇場さんは特別に朝8時から上映するんですってね。私、無理ですわ。サラリーマンですからね、一介の」と僕に言った時、「そうですかー。大変でしょうねー」と言った後、無視したもん。
で、アレですよ。そもそも、初日舞台挨拶なんて、俳優のファンがメインでしょ？ 超大作やアニメは別として。となったら、「作品は二の次。ともかく誰それの姿が観たいーーー！」ってなりがちやん。放っといても来るねん、イケメンとかアイドルとか大物が来場したら。
この＜この作品は二の次状態＞の場合、本興行になるとガラガラになることも珍しくない。
そんなもんな。映画は観てもらってナンボやん？
それやったら、観ていただく努力をしないと、と思うんです。
もう10年以上も前のことですけどね。僕がプロの映画ライターであった時。自主映画の広報を担当しましてん。あと、出演もしましてん。それから緊縛指導をして、それから賄いも拵えましたわ。カレーライスとか。
いや、出演はワンシーンですよ。ちょびっとですよ。端役ですわ。「川谷拓三は『役者にとっては自分が主演じゃと思わなアカン』的なことを言ってたけど、無理。これ、端役」的なポジションでしたわ。劇中で3人でヒロインの取り合いになってジャンケンをするんですけどね。リハーサルを2回やって、そこから、「本番！」でしたわ。「最初はグーっ！！」ゆーて。で、本番でパー出したってん（笑） で、「よっしゃぁーー！！」ゆーて。アドリブで。そしたら、監督が「ＭＡＳＡ君っ！ アカンアカン！！ カットぉっ！！（爆笑）」って。なんでねん？ 滅茶苦茶ウケとるやないか…… ブツブツブツブツ……
あー、緊縛指導はね。これね、急に言われたの。僕、あくまでも宣伝担当だったからね。まさか撮影に参加することになるとは思わなくて。撮影日誌ぐらいは書こうと思ってたけど。でも、撮影が始まってほどなく、ヒロインが誘拐された後のシーンの撮影時に監督から「ＭＡＳＡ君っ！！ こっち来てー！！」って。となれば、「これはきっと役柄が大きくなったんや。こないだのアドリブが評価されたんやろ。ひょっとしたら、俺、準主役、狙えるんちゃうけ？」と思うじゃない？
「ちょっと○○さんを縛ってあげて」
俺、広報担当やぞ。広報ってなんや！！！！？？？？
で、縛ったよ。なんか助監督のアンちゃんが「僕、縛るとか無理ですぅ〜……」ってなったらしくて。でも、一番に白羽の矢が立つのが俺ってどーーなんっ！！？？
あ、この模様はね。メイキングに残ってるよ。カメラ回ってたから。周りが「おぉぉぉぉっ！！ 速っ！！！！」って驚いてたもん。その声も残ってるはずよ。緊縛界のミハエル・シューＭＡっＳＡみたいになっとったわ、多分（←間のちっちゃい「っ」の居心地が悪い、悪い＾＾；） で、 主演女優さんがね、グラビアにも出る方だということで、「ほなら痕が残ったらアカンやろうなぁ」と気を遣って、ね。縛ったの。「縦横縦横、グルグル、キュっ♪」って。柔らかいラインだったのでね、手首と手首の間に2回ラインを通してあげましてん。そしたらまあ、奥さん！！ 本式の緊縛やと思われたらしくて、「そんな縛り方…… する必要があるんですか……？」って。冷たい目で。最初からずっと、「痛くないですか？」、「大丈夫ですか？」って声を掛けていたのに、でっせ。それを見下すような、あの目線。まー、奥さんっ！！
トカチーーンとキました！！＠十勝花子（←古いわ……＾＾；）
心中、「あぁっ！？ なにナマ抜かしとんねん！！？？ こっちはアンタのことを考えてよぉっ！！！！ ほな、もぉ知らんわ。イってまうどぉっ！！」ってなるよね。なるわ、うん。
せやから一回解いて、本式で縛ったった（←鬼） 「ここからは撮らないで」って言ったもん、私。「うわっ！！ 目つき変わった！！」とも言われたし。で、昼食の時にね、助監督が、「縛り方、教えて下さい」って。「おー！ この子もヤる気は有るんやな」と思うやん。でも、直後に、一回縛ってあげたら、「目つき変わるっていうのがよくわかります！」って。「どこ見とんねん！ 手元見ろやっ！！ 目ぇ、キラキラさせやがってっ！！」と……（笑） 結果、誘拐されている場面を撮り終わるまで、ずっと私が縛ったり解いたり。
で、まあ、ともかく作品は完成したわいな。で、そこから宣伝・広報やろ。俺は俺で段取り付けとるねん。んで、それが大阪アジアン映画祭の関連企画である自主短編映画コンペに出品することにもなったわ。チラシもドーーーーンと貰って来たわ。でも、一部の方々を除いて、特に裏方がね、「知らなーーい」的な。「完成したからスッキリー』的な。
アホか。
知り合いに紹介するぐらい、せえと。
商店街、1軒1軒回って、貼ってもらえ、と。
それに反対意見が出てよぉ。「なんでやねん？」と。
「ほな、もう作品、引き揚げましょうや。出品、止めたらよろしいやん！！」って。チラシもタダと違うんでっせ、正味の話！！！
そしたら、「撮るところまでで遊びは終わり」やと。「オナニーでエエねん」と。
ちょお、外、出るか？、ってなるやろ。堪えたけどもやあ。
ほなら、キャストの人らにそう言えるんか？、と。「ＭＡＳＡさんと○○○さんが広報や」だぁ？ 何をゆうとんねん。映画祭への出品を決めたのは俺らやないやろう、と。でも、それはそれで喜ばしいから、広報としては頑張るよ、と。ただ、アンタらも頑張れや、と。親やろうが、と。作品が子やとしたら、作り手は親やねん！！、と。ラジオは俺が話を付けてあるねん、と。産経新聞もスポーツ新聞もドーンと入ってもろたがな！、と。それ、どないするねんっ！！ 主催者のことも考えろや、と。上映会場、関係者だけでもエエんか？、と。寒々しい思いするぞ。痛い目、遭うぞ。それを避けたかったら集客、せえ、ボケナスビーーーーーーっ！！！！！、となった。
え、これはならなアカンで。なるのが当たり前やで。俺はそう思う。
尚、この作品は特別賞を受賞した。受賞理由は、ぶっちゃけ作品評価じゃあないよ。俺、知ってるねん。主催者の方から知らされた。え？ 「じゃあ何？」って。
動員数ですよ。
これも一つの勝ちやろで。俺は勝ったと思ったよ。宣伝・広報として。
その後やったか前やったか。冬やったはずやわ。自主映画を作っている面々を中心としたパーティーが神戸でありまして。「評論家やライターは時として作り手さんから冷たい目で見られる。あー、居辛い……」と思いながら参加しましてん。
そうしたら、本編ではなく【予告編の上映大会】を行うと。で、拝見しましたわ。
8割方、「本編、観たい！！」って思わへんかってん。途中で「あ、もう止めてー。しんどいわー」って。中には、「あ、コレは観たい！」という作品もあったけれど、殆どが「予告編をナメとんのか？」っていう、ね。
その後、パーティーになってね。呑み会ですわ。飲み放題っていうから。僕が↑で縛った助監督君が監督した短編の予告編も上映されていて、それはしっかりした予告編やったから、褒めたのよ。「キミのが一番、『観たい！』って思った」って。まず、作品のトーンというか、ジャンルが判る。コメディ・タッチの恋愛物やったわ、確か。で、テンポが良い。無駄に無名のキャスト陣の名前をテロップで出さない。一言で表現したら【どういう作品かわかる】のよ。だから、褒めたの。「宣伝、手伝うよー、御邪魔じゃなければー」って。
で、他の人もね、「僕もお願いしてイイですかー？」って言って来たけど、「予告編、作り直して下さい。その後で本編見せて下さい。でないと無理。なんでもかんでもは無理。こんなもん、上映された作品のほとんどがオナニーやん」って。酒は入ってたけども、関係無い。俺、そこそこの酒量じゃ酔わないから（←尚、↑の助監督君は、帰り際、ベロンベロンになって、放置して駅まで歩いてきたら同行者の携帯が鳴って、「あのー。自動改札機って、どうやって潜るんですか？」って……＾＾；）
あとね、『つぶより花舞台』っていうアマチュア・シニア劇団のドキュメンタリー映画があってね。いきなりサンプルＤＶＤが自宅に送られてきてさ。関東から。「御覧になっていただければ幸いです。よろしかったらご紹介いただけませんか？」って。どっかで僕の文章を読んでくれはったんやろうなあ。紹介記事書いたもん。本編、悪くなかったから。あと、やっぱり、そういう風だと「これは応えなくてはなあ、というか応えたいなあ」って、思うじゃないですか。
ゆーて、松平健が高校生を演じている映画の東京試写状を送っていただいても、「遠いしー……」ってなったけどね。あと、「あ！ これ、良さそう。っていうか、試写、昨日やなあ、コレ…… 終わっとるがな！！」ということもあったけれども（←私、『おくりびと』の業務試写を観た後、mixi日記を書いたら、原作者の小山薫堂さんから、突然、絵本が届いたこともある。『Ｋ２０ 怪人２０面相伝』の原作者の北村想さんから舞台のチケットが届いたこともある。あの頃のmixiは凄かった）
ともかく、ですねえ……
観て欲しかったら予告編、ちゃんと作れ！！
チラシ、配れ！！
頭下げてポスター貼っていただきに回れ！！
どーでもええから、宣伝せえよ、自分が関わったんやったら！！！！！
と、そういうことを常々思っているわけですが、釣瓶師匠、それを体現なさったのでね。
【特別賞】です。
以上です。ほとんど自分語りで恐縮至極。
【追記】
福本清三さんが『どこかで誰かが見ていてくれる 日本一の斬られ役 福本清三』の中で、「『赤影』、ヒットしてくれんかなあ？ 時代劇としては、いろいろ問題がありますけども、そんなことは関係なしにお客さんが入って、興行的に成功してもらいたいんですわ」と仰っている。タイトルまでバンと出してしもぉて、ホンマに正直な御仁やなあって思うわ。飾り気が無さ過ぎるとも思うけど、でも、この言は切実でね。興行でさあ。当たらへんかったら先細りするでしょう？ そうしたら次は細くなる。その次はもっと細くなる……、ってなったら、最終的に無くなるからね。
釣瓶師匠の「お客さん6人でしたけどね」に通じる。「でも観に来て下さい！」っていう。
熱意に恥も外聞もあるかいな、思う。
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