ラジオのテレホン人生相談でおなじみ、心理学者の加藤諦三先生の本は、若い頃からずいぶん読んでいますが、退行欲求と成長欲求のお話は非常に興味深いものです。
退行欲求とは、その場の満足を求め、負担から逃れたいという欲求で、要するに、小さな子供が母親に完全に身を委ねて、安心しきって甘えられるというような欲望のこと、逆に成長欲求とはその名の通り、負担を背負って成長、自立していこうとするものです。
二つの欲求は相反するものではありますが、実は深く繋がっていて、退行欲求が十分に満たされて初めて、成長欲求が生まれるというのです。
不登校の現場では、このことを実感することがとても多く、小さい頃様々な家庭の事情が原因で十分に愛されていなかったということで、思春期になっても退行欲求を追い求めてしまい、成長の欲求が出てこないというパターンがよく見られます。
権威的な父親や、世間体ばかりを気にする母親とか、子供の頃から訳も分からず早期教育させられたり理由は様々ですが、子供らしく十分に安心して甘えたり、遊んだりということが満たされていないと、後々に必ず問題が起こります。
社会的な問題も大きく影響しているとはいうものの、ひきこもりのようなことも、退行欲求が満たされなかったことが遠因になっていることも少ないないと思われます。
小さい内から、あれやこれやと身に付けさせようとしたり、学習面でも将来に向けて先行させようとしたりすることも多いわけですが、まずは十分に退行欲求を満たした上でのことでなければ、全く本末転倒なことになりかねません。
子供は子供らしく生きる権利があり、そのことが成長する上で後々大切になって来るということですが、先行きの見えない社会情勢の中にあって、親として何をすれば良いのか不安になる心情も、私自身も同じ親ですのでよく分かります。
しかしながら、子供にとって最も大切なことは、自立して自分の力で生きていける人間になるということで、その成長欲求の前提としての退行欲求ということを、親はしっかりと頭に入れる必要があるのです。
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