辺野古の住民、複雑な表情
太平洋を見渡す名護市辺野古区の高台にある住宅地。70代女性の自宅台所の窓からは護岸で囲われた海が見える。政府が25日に埋め立てを開始したエリアだ。窓を開ければ心地よい風が入ってくるが、今はためらってしまう。「嫌でも埋め立てられていく光景が目に入る。いい気持ちはしない」。新基地建設を条件付きで容認するが複雑な表情を浮かべる。
「いつになったら工事は終わるの?」。女性はうんざりして話す。大浦湾では軟弱地盤が見つかり、県は基地完成までに13年要すと試算。夫とは最近「生きている間はできないかもね」と冗談半分に言う。
危険な普天間飛行場を早く辺野古に移設した方がいいと思うが、米軍機が決められたルートだけを飛ぶのではないということは知っている。「本当は基地建設に反対ですよ。だから政府にはそれに見合う補償を要求しているのに…」
他県の姿勢にも反発も
15日、辺野古区長ら地元3区長と面談した菅義偉官房長官は「直接影響を受ける皆さんにできる限りの対応をさせてもらう」と述べたが、具体的な補償内容は提示しなかった。
「県が裁判で勝ったらそれはそれで万々歳さ」。辺野古区行政委員の60代男性は県が22日、国を提訴したことに「期待はしないけど」と前置きした上で言った。
しかし工事は進んでいる。男性も条件付き容認の考えだが、最近は他県の姿勢にも反発を覚える。
辺野古新基地建設に関する全国知事アンケートでは岩手県知事だけが建設断念すべきだと回答した。「誰も自分の身を切ろうとしない。こんなのおかしい」
新基地建設計画が持ち上がった当初は地域振興の青写真も描いたが、今ではすっかりかすんでしまった。「こんなはずじゃなかった」(北部報道部・城間陽介)
高台の住宅地からは新たな土砂投入区域が一望できる=25日午前
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