私の名前は川口民雄。子どものころから、周囲から浮いていた。学校の成績は低空飛行で、お情けで卒業させてもらった。小学校低学年のころからごく普通に生きられないと堪忍した。なんでみんなと同じことができないのだろうか。学校時代の運動会、学芸会、展示会、修学旅行で、周囲のクラスメートと同じ行動をとるのに、非常に神経を使った。仕事をいくつか渡り歩き、発達障害を支援するNPOで働いている。大人になって、検査を受け、検査の結果で、読み書きはかなり厳しいことがわかった。発達障害当事者は別に努力して、普通に見せようとしても、無理である。例え給与は低くとも、暮らしていければ、文句はない。この仕事は自分に向いているようだ。発達障害トラブルシューティングが仕事になった。
チャリティーバーベキューの会場、人がごった返している。片岡が川口と手伝いを始める。
片岡
「川口さんが、手伝ってくれというからさ。来たけど。何をやれっていうの」
川口
「箱の中にある食器と紙コップを出してくれるかな。それから電気ポットでお湯を沸かして、お茶を入れてくれかな。これからお客さんがくるから」
片岡
「わかったわ。ここにあるの。全部出すの」
お客がぞくぞくやってくる。
川口
「そう。いらっしゃいませ。きょうはわざわざお越しになり、ありがとうございました。お客さんがもう来ているからさ。仕事はたくさんあるよ」
片岡
「へえ、こんなに人が居るところ、久しぶりだな。私にできるかしら」
川口
「大丈夫だよ。ここへ一人で、来れたじゃないか。ボランティア、やってもみると、面白いよ。いろんな人に出会えるよ」
片岡
「お客さんが来たわ」
お客(女)
「喉乾いたんだけど。お茶もらえますか」
川口
「ご免なさい。今、沸かしているところです。もう少し、お待ちください。これから忙しくなるぞ」
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