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2016年03月04日15:46

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14年:3/1 マノン・レスコー

PRODUCTION
Sir Richard Eyre
SET DESIGNER
Rob Howell
COSTUME DESIGNER
Fotini Dimou

CONDUCTOR
Fabio Luisi
MANON LESCAUT
Kristine Opolais
DES GRIEUX
Roberto Alagna
LESCAUT
Massimo Cavalletti
GERONTE
Brindley Sherratt


2回目のマノン・レスコー実演。前回は02年、リング遠征の中日(ウィーンだったかシュトゥットガルトか。たしか後者だったか。そうすると9月。)に何も日程消化するものがなく、バイエルンで。確かファンティーニがマノンだった筈だが何も記憶も感興も沸かず。ただオケピットだけがやたら燃え上がっていたのは記憶に残っている。
そこから14年。DOBでティーレマン指揮(証人も少ないのでここで繰り返し力説しているが、彼こそは稀代のプッチーニ指揮者の一人、になれたはず。もう少し真面目に(=公演数多く)オペラに取り組んでいさえすれば)の新演出があるから行かねばと思っていたが辞任、新国でやっているから行こうかなと思っていたが震災で流れる。そしていよいよ。14年前と同じ指揮者で。

この14年間、西部の娘、修道女アンジェリカを皮切りにプッチーニは個別撃破してきて、プッチーニへのリテラシーは昔よりかはついてきたはず。そのお陰もあって、非常に楽しめた。
もともとこの作品はドラマが弱い。登場人物がおしなべて共感できない。西部の娘のミニーのような生々しさもなければ、トゥーランドットのリューのように同情できもしない。そりゃあ自業自得でしょ、の連続。あたかもシュレーカーの歌劇の登場人物のように。
ただしそんなシュレーカーでも後世に残る傑作歌劇が2つ(2つでしょ。宝探し人?クリストフォルス?狂える炎?ガンの鍛冶師?CDに勢ぞろいする一連の作品群が虚しく見える(笑)と言ったらシュレーキストから突き上げ喰らうかな…)あるのと同様、こんな台本でも音楽の力で感動できてしまうのがオペラの面白いところ。要は自業自得な環境からの脱出の道具に本能的な嗅覚で男を使っているだけのビッチも、女を見る目のないただのバカも、音楽の魔力で共感・追体験できてしまう。この日のアラーニャもオポレイスも、その点では合格点。アラーニャは若干狂気が足りなかったが、代打ロールデビュー(!)でここまでできれば上出来でしょう。オポレイス(オポライス?)は、当代随一のマノン・レスコーとかどこかで読んだことあるが、さすがにそれは盛り過ぎと思ったのは自分がオペラグラスを使わない天井桟敷民だからか。ただ、この劇場で主役を張るディーヴァ達のようなオーラは見えず(聞こえず)とも、最終幕の死にゆく場面は満点を取れている。スターは本塁打数が多い人ではなく得点圏でちゃんとヒットを打てる人なんだな。
他のキャストは正直弱い。端役にも驚きが隠されていたルルとはやはり違う。ただまあ、オポレイスとカウフマンを引っ張って、カウフマンの代打にアラーニャ初打席を手配しただけでも文句を言ってはいけないのかも。

そして、ルイージ。安心ブランド。平日の夜、22.5ドルで心の底からの狂気を提供してくれる。一昔前より大人しくはなったが、その分歌いまわしや優しさが格段に魅力的に。来シーズンの音楽監督の振る演目数が「4」となり、いよいよ「出口戦略」が公然と議論されるようになったのは、彼にとっては何を今更なんだろう。もう2年前くらいにこういうことになってれば、彼は若くしてキャリアの終着駅(それも巨大な)にたどり着けたのに…。DOB、ドレスデンに続いてメトも一時の愛人関係で終わりそうな勢いだし、フィレンツェも終着駅ではありえないだろうが、チューリヒでもどこでも、「ルイージの本拠地」を築いてほしいものだ。



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