武内義範先生の『教行信証の哲学』（法蔵館2002年版）を再読する。この『教行信証の哲学』はかつてわたしがまだ大谷大学の大学院生だった頃に、盲腸の手術で入院していた頃、病室で読んだことがある。その時は、1941年刊行の弘文堂の教養文庫版であった。
武内義範先生は、親鸞の『教行信証』のうち、第六巻である「顕浄土方便化身土文類六」に書かれた、�犹梓蠹焼��瓩力斥�的構造を哲学的に解明することに主題をおき、そのことによって、『教行信証』の思想的構造を明らかにされようとする。
では、何故�犹梓蠹焼��瓩力斥�的構造を哲学的に解明することが『教行信証』全体の思想的構造を解明するとかと言えば、親鸞の『教行信証』は、「顕浄土真実教文類一」「顕浄土真実行文類二」「顕浄土真実信文類三」「顕浄土真実証文類四」「顕浄土真仏土文類五」そして「顕浄土方便化身土文類六」の六巻によって構成されているが、その六巻を二大部門に区別し、「顕浄土真実教-行-信-証・真仏土を�狆�土真実�瓩函◆峺仮�土方便化身土文類六」を�猜�便化身土�瓩閥菠未気譴討�た。武内義範先生は金子大栄師の論説に従ってそのような二大部門に区別された。
その上で�狆�土真実�瓩鉢猜�便化身土�瓩箸蓮∧�便化身土は浄土真実へと到達するための方便、つまり予備的前段階であるとあり、そのような�狆�土真実�瓩鉢猜�便化身土�瓩箸隆愀犬蓮△悄鴫爾痢慙斥�学』と『精神現象学』の関係に類似していると、武内義範先生は指摘される。ヘーゲルの『精神現象学は論理学の予備的前段階であり、予備学であるとヘーゲルは説いている。そのような親鸞の『教行信証』における�狆�土真実�瓩鉢猜�便化身土�瓩箸�ヘーゲルの「論理学」と「精神現象学」との関係に類似していると論じられるのである。そしてこの�狆�土真実�瓩鉢猜�便化身土�瓩箸隆愀犬蓮⊇‐莖惻圓�指摘してきたように、ただ単に方便化身土が浄土真実の予備的前段階にと止まらず、両者は表裏相即し相互に映じ合ってはじめてその意義を発露することができるのである。その意味からも「顕浄土方便化身土文類六」において親鸞が論述した�犹梓蠹焼��瓩力斥�的解明は、『教行信証』の論理的解明には大きな意味をもつのである。
武内義範先生の『教行信証の哲学』における�犹梓蠹焼��瓩瞭伴�性は、�犹梓蠹焼��瓩力斥�的構造と�狎義�末史観�瓩箸隆慙△撚鯡世靴茲Δ箸靴燭海箸任△襦��犹梓蠹焼��瓩箸蓮◆崑臾砧娘�経」のなかの�猝鐶砲了揚�願�瓩里Δ繊�第十九願、第二十願、第十八願の三願を、武内義範先生は、商況的精神の段階としてとらえ、そこに自力から他力への信仰的自覚の深まりとして把握されている。つまり第十九願、第二十願、第十八願は、それぞれ倫理的観想的段階・内在的宗教の段階・超越的宗教の段階として把握し、その向上の過程として叙述しているのが�犹梓蠹焼��瓩任△襪伐鮗瓩気譴襪里任△襦８世錣弌⊇ゞ掬�自覚の深まりの過程の叙述なのである。それでは�狎義�末史観�瓩箸惑＿燭覆詢鮖亡僂覆里世蹐Δ�。そしてその�狎義�末史観�瓩鉢犹梓蠹焼��瓩呂い�に関連するのであろうか。武内義範先生は次のように論理れている。
「罪障の自覚は光の有限性の自覚であるとともに、闇の無碍な性の自覚である。有限者の苦悩の底に、その根拠として無明を教えた原始仏教もまたこの無限性を指示している。この無限性が無限性として有限者から切り離され、有限性の根拠として、明らかに提示されるとともに、無明の業に内在的な―しかも輪廻によって無限化された―時間が、超越的な歴史の時間に翻されるに至ったものが、正像末の史観ではないだろうか。正像末の史観が、このような意味で根源的な罪障の根拠であるとすれば、明らかに罪障もそれの根拠もそれを自覚する主体の体験も離れて立証することができない。罪の自覚はそれぞれの個人に関する問題であり、自己自身について真摯な体験を積むことによって、初めて成立してくるものである。」
個人の宗教的自覚の深まりは、決してその人の体験抜きには深まらない。その人の体験は常に歴史的世界において行われている。我が身の事実徒は決してその時代から切り離されたところでは成立して来ないというのである。そこに今回、武内義範著『教行信証の哲学」を読み直して宗教と歴史という問題が単に一般的なレベルでの問題だけではなく、むしろ個人の体験レベルで大きな問題となるということに気づかされたように思える。そしてその個人の体験には�狄搬劉瓩量簑蠅�あり、�狄搬里量簑雖瓩廊犹爐量簑雖瓩板招襪垢襦��犹爐量簑雖瓩蓮⊃�仰的自覚の深まりにおいて大きな意味をもつことは言うまでもない。さらに宗教的自覚には�狒�遇�瓠⇔磴┐仗二造��爐茲�人�畛奸λ〜海暴舒�ったことという歴史的な出来事が宗教的自覚の不可リマにとって歴史的な出来事以上の意味をもってくる。そこに浄土教的史観という意味が大きな意味をもってくるのである。
今回、武内義範先生の『教行信証の哲学』を再読しようと考えたのは、浄土真宗における「聞」の意味を考えてみたいと考えたからである。親鸞において「聞」という言葉は浄土真宗における信にとって大きく意味をもつ。弥陀の名号、つまり弥陀からの呼び声を聞くということであり、呼応するということである。その時にその「聞」、弥陀の呼び声に呼応するという時、それはわたしたち衆生の気づきであり、自律によるものではないのかということ、さらにそもそもわたしたち衆生が自らの罪を自覚するということはすでに�犲�力�瓩任呂覆い里�ということであり、その場合、他力と自力はいかなる関係性をもつのかという問題意識であった。そのことについては、また後日、日記に書きたいと考えている。
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