mixiユーザー(id:9890441)

2013年09月16日18:59

13 view

呉越同舟

「アリス・・・。わたし、あなたを許してなんかないからね」

マクターは揺れるグラスを眺めながら、ぽつりつぶやいた。

「・・・ユウセイの事、好きだったんだ」

立ち去ろうとしていたアリスは振りかえって、やっと言葉を振りしぼった。

「別にそんなんじゃないわ。ただ、友達にはなれると思ってた。

           初めての・・・。

 はっきり、言い切れる。あなたがつらいと思っている人生よりも、
 わたしの人生がはるかに苦しみに満ちているって」

アリスは居たたまれない空気に堪えかねて、そのまま、船室を後にした。
ドアは開けっぱなしになっていて、船の揺れに合わせ傾いた。


何を言っているのだろう?
恋敵に自分の思っている事を告白して何になる?
余計、惨めになるだけじゃない。
苦しい。苦しいって言えば、優しくしてくれる?譲ってくれる?

そんな訳は無い。

憎い敵だって真剣に生きているんだ。
相手の命を奪ったって譲れないくらいの想いだってある。
わたしにはそれが・・・足りているのだろうか?

沢山、殺した。

でも、わたし自身が切望して奪った訳じゃない。
何度もそれを放棄しようとさえしたのに、
命を絶ったとしても、無理矢理に生かされてきた。
父が語る理想の為の都合の良い道具として。

好意を寄せてくれる人も居た。

でも、それって同情だった。
わたしはどこか諦めきれなくてそれを拒んだ。
何を贅沢言っているんだろう。


マクターは泣いていた。

彼女が泣くのは何度目だろうか?
数え切れないくらい彼女はこれまで涙を流していた。
それを慰めてくれるものももう居ない。

「なんの為に生きているんだろう」

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2013年09月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     

最近の日記

もっと見る