謝るくらいならば、最初から言うなよ

橋下氏「風俗業活用」発言撤回
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=2&from=diary&id=2441939

　橋下市長は天性のポピュリストであり、マスコミや一般大衆を味方に引きつける才能は大したものだと常日頃より思っていたので、今回の「舌禍事件」も、すべて彼にとっては想定内のことと思っていたら、そういう訳ではなかったようだ。どうも、ここまで国際的な大問題になるとは想定していなかったようで、発言を撤回して陳謝することになった模様である。

　僕としては橋下市長のことを見損なっていたようで、大いに失望してしまった。ちょっと大騒動になったくらいで謝るのであれば、最初から余計なことは言わないでもらいたい。

　前にも本件については日記に書いたが、僕は彼の言っていることは必ずしも見当外れだとは思わない。

　でもこれも日記に書いたとおり、大人の世界では、「正しいことを言えば許される」というものではない。むしろ、正しくても、敢えて言わない方が賢明と思われるようなことは数多く存在するし、むしろ口に出して言うといろいろと具合の良くないことも少なくない。

　特に「臍から下の話題」、つまりはセックスとか性に関する話題については、TPOを見誤ると、とても厄介なことになる。今回の橋下市長の事件などはその典型であろう。

　でも、一旦口に出したからには、ぶれずにこの問題についての議論を国際的に惹き起すくらいの覚悟で頑張ってもらいたかった。

　いわゆる慰安婦問題は、たしかに旧日本軍の将兵が戦地で売買春行為を行なっていたのは間違いのない事実なんだろうし、軍の中枢部だって、そういうものを一種の「必要悪」として黙認していたのは確かであろう。生命の危機に晒されている戦地の将兵の戦意や軍紀を保つためには、食欲とともに性欲も満たしてやる必要があり、こういうものは「兵站」「ロジスティックス」の一環くらいに考えられていたのは容易に想像がつく。

　だが同じようなことは、古代ローマ軍だって、太平洋戦争後の進駐軍だって、ベトナム戦争時の米軍だって、みんな言えることであって、旧日本軍と日本人だけが悪く言われる筋合いはない。韓国や中国などは意図的に日本をバッシングするような世論操作のために欧米でもロビー活動を行なっているようだし、米議会などはそれにまんまと乗せられているようだが、日本人に言わせれば「冗談じゃない」という話である。僕はてっきり橋下市長は、今回の一連の発言によって、国際的にこの問題について注目を集めた上で、改めて徹底的な議論を巻き起こしていくつもりだとばかり思っていた。冒頭に失望したとか、見損なったとか書いたのは、そういう理由からである。

　人間は口が滑って言い過ぎることもあるし、それで他人との間で摩擦を起こすこともある。でも考えが首尾一貫していて、ぶれない人というのは、彼の意見に同調するか反対するかは別としても、一応は尊敬に値するし、意見を傾聴する気にさせてくれるものである。ところが、時と場合によって、あるいは他人の顔色によって、コロコロと意見を変えるような変節漢の意見など誰が聞く気になれようか。

　そんなポリシーのない人間は、人間として屑であり、人として信用することができない。一人の人間として信用することのできない人物を政治家として支持することなど到底不可能である。

　以上のようなことを考えると、今回のしょうもない事件の顛末は橋下市長の政治生命に甚大な影響を及ぼすものと思われるし、僕の私見によれば、「政治家としての橋下はこれで終わった」と思う。

　繰り返すが、大騒ぎになったからといって、謝ったり、意見を撤回するくらいならば、最初から余計なことなど言わないでもらいたい。逆に何かを発言する以上は、徹底的にぶれずに主張しつくしてもらいたい。