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2010年05月26日19:24

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なかなかおうちに帰れない

授業が終わって、その別れ際に彼は、
「今日メールできなくてごめん。バタバタしてて」
と謝った。わたしが事務連絡のお知らせを送ったことに対して。いや別にその日のうちに会うのだから、さみしい他には何の問題もない。
「怒ってるだろ」
男は優しく言って、わたしの耳の上を軽くコンと叩いた。わりと痛かった。
「いーえ、お気遣いいただいてすみません、でも待っていました」
彼は目を細め、ぽっぴんHの顔を見つめる。わたしは余裕のあるふうにほほえんで、そして逃げるように車を降りた。そう、わたしは先生のスカイラインに乗っていたのである。


その姿が完全に見えなくなるまで、ぽっぴんHは道の脇に立ち、最後に深く頭を下げた。あとから知ることになるのだが、わたし達は大学院デスクの助手さんに見られていた。教員の出勤・退勤時間を厳密にチェックする正門の守衛さんにも、もちろん二人は目撃された。


帰途で、メールを受ける。
「忙しくなければ食事にでも誘ったところだが」
ふーん。なんてわたしの思う通りに動く人なの。やっぱり「夜ごはん」で連れ出そうとするのね。講義のあと、彼には仕事が残っていて、こちらにもヘボ用などがあった。でも、二人で出かけるのは授業(半年間の講座)が終わってからにしようねと言っていたのはあっちだし、どういう風の吹き回し?


もう、授業のときはわざと離れたうしろの席に座るようにした。これまた後からわかったが、「視界の中に入りながら遠くの方にいる」ことは、男の人に「小さくてかわいい、いとおしい」と思わせる効果があるのだとか。本当か。


わたしは授業の終わる2分前から片づけに着手して待ち、終了の瞬間に教室を飛び出す。がら空きのエレベーターはすぐに来て、他の院生の集まる前にひとりで滑り込むと、あっちゅう間に1階に降りられる。先生はどんなに頑張っても追いつけない。どうだ。


するとメールが3通。
院生1:え、どこにいるの
先生:もう外ですか?
院生2:来週って何曜日に来るの


ひたすら逃走するイメージ。別に急ぐ必要もないのに。結局、違う授業に出ていた女子院生と会ってしまい、話したいと言われたため立ち止まる。そこへ先生が来ちゃった。見つかった。そして何か言ってる。こうなったら、友達は後回しか。
「あなた、あとで電話します、電車に乗らないで待っていて下さい!」
女の子は行ってしまった。わたしと先生だけが残された。

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