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2008年09月22日16:58

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ナイロン100℃公演 シャープさんフラットさん〜ホワイトチーム〜

ナイロン100℃、32回目公演。“シャープさんフラットさん”のホワイトチームを見てきました。

今回のナイロンの芝居は、ホワイトチーム、ブラックチームという2チームに分かれて、演者を変えて(大倉孝二氏と、三宅弘城氏のみ、どちらも出ます。但し、役柄が違います)行う・・というお芝居です。ブラックチームとホワイトチームでは、結末も違うようです。

※以下、“シャープさんフラットさん”ホワイトチームの感想を書きます。これからお芝居を見に行かれる方や、DVDでご覧になる方は読まない方が宜しいかと存じます。あと、ブラックチームの役者に対してのネタばれになっている部分もあると思うので、これからブラックチームをご覧になる方も、読まれない方が良いと存じます。

では、ネタばれOKの方のみいらっしゃいまし〜。

ナイロン100℃公演『シャープさんフラットさん』ホワイトチーム

会場・本多劇場

辻煙(田中正明):三宅弘城 赤坂弥生:松永玲子 園田春奈/煙の母親:村岡希美 園田研々:廣川三憲 日田美果:新谷真弓 不二山キリ:安澤千草 小柱力(ちから):藤田秀世 北(サナトリウム職員):吉増裕士 砂川(サナトリウム職員):皆戸麻衣 塩見実子:杉山薫 熊林(サナトリウム職員):眼鏡太郎 サニー関口・他:大倉孝二 成瀬南:佐藤江梨子 音波究ニ:清水宏 小骨(音波の息子):六角慎司 塔島邦人/煙の父親:河原雅彦

※ちょこっと粗筋
とある、サナトリウム。バブル絶頂期の90年頭。喜劇作家・辻煙は、劇団や、彼女、その他全てを投げ捨て、このサナトリウムにやって来る。
彼は、幼少期に見た、バスター・キートンの面白さに憧れた。彼には幼少期のトラウマがある。母親が浮気をしていたのだ。母親と何処の者とも知らぬ男は酒を飲み、バカな話で大笑いする。それを見ていたからか、彼はくだらないコトには笑えなくなっていた。笑いに対して厳しい人間になっていた。
子供の頃、酔った母親が自分の飼っていたインコを握り潰し殺した。彼は、その場面をシュールコント仕立てで考え(妄想し)、自分の中で折り合いをつけた。

月日は流れ、彼は喜劇作家“辻煙”となった。彼は所属していた劇団から逃げ、このサナトリウムにいる。ある時、劇団仲間の小柱が、劇団の女優であり、煙の彼女である美果を連れてやってくる。小柱は、劇団の芝居の演出を、元劇団員の塔島に任せたと告げる。塔島は劇団を放り出して逃げ出した人物。「そんな奴には、俺の脚本は演出させない!」と怒る辻だが、小柱は「アンタにそれを言う資格はない!」とツッパねる。

このサナトリウムには、他にも入所者がいる。
元コメディアンの園田研々。園田の妻、春奈は、心を病んで、ここに隣接している病院に入院している。「研々はとても才能のあるコメディアンだ」と言う春奈。この研々と仲が良く、お笑い好きな男、音波究ニ。音波はどうやら、会社経営者のようだが、会社は倒産しかけているようだ。その息子の、小骨も、たまにサナトリウムに見舞いに来ているらしい。

ある日、女性2人が入所してくる。そのうち一人の赤坂弥生は、研々の元相方。“コンコン”として4ヶ月間コンビを組み、漫才をしていた。どうやら彼女は、元ストリッパーだったようだ。付き人らしい人物、不二山と一緒に入所するらしい。

サナトリウムのスタッフである、成瀬はどうやら、辻のコトが好きらしい。

辻に会いに来た美果は、サナトリウムから飛び降り自殺をする。奇跡的に一命は取り留めるも、足を骨折。隣の病院に入院するコトになる。
研々は、どいうやら末期ガンらしく、余命いくばくもない様子。しかし、それを心を病んでいる妻に伝えるコトは出来ず、隠し通す。

この人物達の人間関係が、徐々に狂い始める・・・そんな物語り。

今回の芝居は、ケラ氏の半自叙伝的作品だそうです。

だからでしょうか・・・。正直、私には痛すぎる作品でした。見ていて途中辛くなってしまった。勿論、ケラ氏の作品なので、笑いの部分もあるのですが、もう、途中、痛くて、痛くて・・・。

主人公の煙は喜劇作家。“笑いを作る”為に、色々なモノが壊れてしまった(自分で、壊したのかも知れないが)。色々なモノを犠牲にした。
彼女である美果が言った「アンタの笑いは分からないし、くだらない。」という一言にキレ、階段から美果を突き落として、美果の顔に一生消えないアザを作ってしまったり。

辻が、自分が書いた台本に真っ赤に修正を入れられて(塔島が演出するにあたり、直したモノ)、癇癪を起こして、台本をグチャグチャに破くシーンとか、本当に痛い。
自分が作る笑いが伝わらない・・否定される・・という悲しさ。悔しさ。

そうなんだ。“笑いを作る”って、本当に辛く苦しい作業なんだよ。発狂しそうにもなる、精神を病みそうにもなる。自分が面白いと思って作ったって、相手が理解してくれるとは限らない。「何が面白いの?」と言われたら、それまでだ。

音波の息子小骨が、辻に向かって言う台詞に、こんな台詞がある。「アンタ、ボケ老人使って、笑い取ってたろう。アレ、不快だったぜ。俺の隣に座った奴も、不快だって言ってたよ。」
コレって・・・。どう考えても、ケラ氏の代表作のお芝居“カラフルメリィでオハヨ”のコトだよね。私は“カラフルメリィ〜”大好きなんだケド。
そうだよね。そういう感想を持つ人だっているよね・・というか、実際いました。mixiの日記で“ボケ老人のボケを延々見せる、最悪な芝居”と、書いていた方がいらっしゃった。

前述通り、私は、“カラフルメリィ〜”が大好きです。というか、この芝居がなければ、私は演劇好きにならなかった。
でも、前述の日記の主の言ってるコトや、小骨の言う“ボケ老人を使って笑いを取った”と言うコトも理解は出来るのです。だって確かに“ボケ老人を使って笑いを取った”と言う部分だけ見れば、彼の言ってるコトも間違ってないもの。正しいもの。だって、それが、そのお芝居の“笑い”と“ボケで死に行く”という重要な要素なのだから。

辻は、小骨に向かってこう言う。「笑っていけないモノなんてない!」
コレ、ケラさんのお笑いに対しての決意表明のように見えてね・・・。本当に痛かった。

ケラ氏もインタビューで似たようなコト言っていたのだモノ。「どんなコトでも笑いにするという覚悟は必要だなって思います。」って。

辻の笑いを唯一理解してくれる理解者として、コメディアン研々の元相方の赤坂が出てくる。彼女は彼の笑いを理解してくれる。それどころか、乗って、コントまでやってくれる。
美果のアザを見て、赤坂が言う、一言が好きだ。
「あのアザ。あそこにだけあるから目立つのよね。全身、あのアザになってしまえば、それが常なんだから、目立ちはしないわ。」そして彼女はケラケラと笑う。それを見て、安堵ともとれる表情を見せ、一緒に笑う辻。辻が美果につけた、一生消えないアザなのに。いや、だからこそ、彼は笑いたいのだろう。

ある見方からすれば、この2人は、何かが壊れている。狂気に近いかも知れない。でも、笑いって、狂気じゃないか!狂ってる人間。そして、自分が狂っているコトを、キチンと理解して、立場が分かっている人間。そういう人達が、笑いを作るのだよ。

この場面も好きだ。余命いくばくもない、研々に、妻の春奈が言う。「私は、お笑いのコトは良く分かりません。コンコンさんのように、詳しくはありません。でも、アナタが、凄く面白いコトは分かります!」
それを、2階のベランダから見ていた、辻が言う一言。「良いなぁ〜、分かってもらえる人がいてぇ〜!!」
本当にね。コレ、笑い以外でも、表現者だったら誰でも思うよね。「あぁ、分かってくれる人が欲しい」と。表現してるのだから、誰かに自分のやっているコトを理解して欲しいと。

辻は、父親の葬儀の時も笑っていたらしい。頭の中でコントにしていた。その死んだ父親が、芝居の中にチョクチョク出てきます。シュールなコントをやったりしてね(笑)。それは、辻の頭の中の父。想像の父。

私はこのお芝居を見て、途中、“ケラ氏が血みどろになって、転げ回りながら、笑いを作っている”場面が思い浮かび、それが辛くて辛くて仕方なかったです。

「そんな辛い思いまでして、何で、お笑いなんか作るんだよ!」と言いたくなってしまう。でも、そう言っても、ケラ氏も、そして辻もこんな風に言うんだろうね。「だって、笑いが好きだから」って。「笑いの為に色々捨てた。だから、最後まで笑いとちゃんと付き合わなくちゃ、これまでの人生、全て無になってしまうでしょ」と。

終盤の場面。辻が考えた喜劇芝居の“役”が出てきて、辻に謝る場面がある。“役者”が出てくるのではない。“役”が出てくるのだ。辻が書いた役が。8流のシェフや、溶けたお巡りさん(だっけ?)、三休(サンキュー)という小坊主、面白い口調なのに、その口調では舞台で喋らない王様・・・などなど。
そして、この役達は、辻に謝る。「お客を笑わせられなくて、ごめんなさい。」と。笑える、笑える場面だけど、凄く痛くて、悲しくて(だって、自分が書いた役に謝罪されるんだよ!「笑い取れなくてゴメン」て)、もう、この複雑な感情は何なのだ・・・。
辻は、謝る役達を「君達は良くやったよ。最高だったじゃないか!」と誉める。それは、まるで、辻が自分自身に労いの言葉をかけているようにも見える。「俺は頑張ったじゃないか。頑張って笑いを作ったじゃないか」と。

前述もしましたが、私はこの芝居は、ケラ氏の笑いに対しての決意表明にも見えます。
そして、お笑い好きの私は、こんな感覚にも陥りました。
自分の喉元にナイフを突き立てられて「ねぇ。アンタはどれくらい真剣に笑いと向き合ってくれてる?ちゃんと笑いを見てくれる?」と。

あと。私が見落としたのかも知れないのだが・・・。赤坂&不二山が、このサナトリウムに入所した理由が、あまり良く分からないんだよな・・・。研々を追って来たのでしょうか?でも、さほど、研々に執着があるワケでもないんだよな。赤坂さん。

ブラックチームは10月に見に行きます。わざとそういう取り方をしました。少し離さないと、色々比べてしまうだろうなと思ったから。ストーリーはどのように変化しているのだろう?

そして、1番の楽しみは、“大して才能のないコメディアン、研々”を、住田隆氏がやるのです。そう、私が愛してやまない、ビシバシステムの住田隆氏が。ベタなネタを住田氏がやるのです。バナナマン設楽氏が憧れた、こんなコントを作りたいと思った、ビシバのネタ。全然ベタじゃないのにね(笑)。

しかも、住田氏は本当に芸人なワケだから、どう演じるのかな・・と。しかもケラ氏は住田氏用に、当て書きしてくれたらしい。
結構楽しみにしています。
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