1968年に登場したジャガーXJサルーンは、1986年にXJ40系にフルモデルチェンジされましたが、姉妹車(バッジ・エンジニアリング)ディムラー・ダブルシックスは旧型のシリーズIIIの生産が継続され、ジャガー・ジャパンが積極的に輸入しました。この旧型は古き良き大英帝国の香りを残す高級サルーンとして人気が高かったからです。
ボクも恋したひとりで、いよいよ生産が終了する1992年に購入することを真剣に考えたものです。何とかお金を工面して濃紺のボディにベージュの内装の一台を一生乗ろうかと。
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結局は夢で終わりましたけどね。バブルが破裂した後のことで意外と冷静に諦められました(単に借金がキライだったからですけどね。今もです)。
その後何年も経って、かなりくたびれた1975年頃の同型車(ジャガー版)を知人から￥50,000(！)で買いました。走行距離はかなりのもので(失念しましたが20万キロメートルは軽く超えていたように思います)くたびれ、塗装はひび割れていて✕でした。結局別の知人が￥55,000で売ってくれと言うので手離しました。差額の￥5,000は回らない寿司に替わりました。赤字でした(笑)。
日本ではこのメイク"DAIMLER"を「ダイムラー」と表現しますが、それはドイツ語読みでイギリス車のコイツには適当ではありません。英語読みでは「ディムラー」です(「デイムラー」と言う人もいます)。本稿0268で書きましたが、イギリスのディムラーのルーツはドイツのダイムラーですからゴチャゴチャになっているのでしょうね。
1886年に世界初の4輪ガソリン車を発明したGottlieb Wilhelm Daimler(ゴットリーブ・ダイムラー)は、ドイツで汎用ガソリンエンジンを市販していました。このエンジンはイギリスのFrederick Richard Simms(フレデリック・シムズ)が1893年にロンドンに設立したDaimler Motor Syndicate(ディムラー・モーター・シンジケート)という会社でライセンス生産され、それがディムラー車の端緒になりました。
シムズからこの会社を買収したHarry John Lawson(ハリー・ローソン)が、1896年にコベントリーにDaimler Motor Company Ltd.(ディムラー自動車株式会社)を興し、このエンジンを使ったクルマ生産を開始したのです。車名は"DAIMLER"とされました。
ディムラーは、1900年にイギリス初の王室御料車になるという栄誉を享受し(エドワード7世がイギリス王族として初めて運転したクルマがディムラーだった由)、高級車を標榜しました。
しかし同社は経営難に陥り1910年にBirmingham Small Arms Company(BSA)社に買収されます。BSAと言えばFF(フロントエンジン・フロントドライブ)の廉価な3輪車が想起されますので「あのBSAにディムラーが!?」と驚きますけど、小銃やバイク生産で潤っていたのです。
その後1960年にジャガーに買収されますが、親会社になったジャガーは1989年にアメリカのフォードに、2008年にインドのタタ・モーターズに買収されています(孫会社になったディムラーはブランド名のみ残っている状態)。
さて、ロールスロイスは1925年にファントムというモデルを発表しました。水冷直列6気筒OHV7668ccエンジンを搭載していたファントムは全てに優秀。なかんずく静粛性は特筆すべきで、車内では時計のチッチッという音しか聞こえなかったとか。
既に親会社はBSAになっていたものの高級車を生産し続けていたディムラーは、ファントムに対抗すべく(イギリス初の王室御料車というプライドもあったのでしょう)、1926年に7136ccのV12スリーブバルブ・エンジン搭載車を発表します。
この12気筒エンジンは、2列(ダブル)に直列6気筒(シックス)を並べているので"Double Six(ダブルシックス)"と呼ばれ、ディムラー車の代名詞となりました。
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スリーブバルブは通常のポペットバルブ(ラッパまたはキノコ状の吸気・排気弁)と違って打刻音がしないので極めて静かでした(詳細は本稿0149参照)。しかしバルブの開閉機構はすこぶる複雑で生産性が極めて低く、1940年以降は世界的に使われておりません。
ディムラー・ダブルシックスも1936年まではスリーブバルブ(7.1/3.7/5.3/6.5リットル)でしたが、1937年以降はバルブ機構を変更しています。技術の塊であるスリーブバルブ・エンジンのV12は生産性が低すぎたんです。
だから例えば冒頭のクルマのエンジンは5344ccのOHC(オーバー・ヘッド・カムシャフト)でした。
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ところで、ディムラーといえば「フルーテッドグリル」を思い起こします。1905年に採用された縦筋の入った(fluted)ラジエターグリルで、ディムラーのアイデンティティとなりました。以降ほとんどのディムラー車に受け継がれています。
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本稿0167で採りあげたスポーツカーSP250"DART"も例外ではありません。
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