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2022年03月08日21:27

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【天文】【翻訳】「カルドウェル天体」の冒頭文

★3年前に買った初めての分厚い洋書、「カルドウェル天体」。
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これまで辞書的に必要な部分だけ拾い読みしていたんですが、こないだふと冒頭の序文的な第1章を読んでみたら、いたく感動してしまったので、ちょっと日本語に書き落としてみました。長いけど、ちょっとお付き合いくださいまし。〔 〕はワイが勝手につけた補足です。


1980年代のある春の宵、私はマサチューセッツ州ケンブリッジの三軒の黄色い家で作られる「スカイ&テレスコープ」〔天文雑誌〕で遅くまで働いていた。私のオフィスはその建物のひとつの2階にあって、私の机は南向きの窓に面していた。他の皆は帰ってしまい、日も暮れて、星たちは輝き始めたばかりだった。私は黄昏時の微妙な明暗が大好きで、知らず知らずのうちに窓の外を眺め、釘付けになっていた。電話が鳴ったのはそんな時だった。
いつもなら私は時間外の電話は取らないのだが、この時は取った。受話器の向こうでは微かな、少し張り詰めた年配の男性の声がこう尋ねていた。「どうか家の窓の外で輝いている黄色い星の名前を教えてくださいませんか?」私は最初イタズラではないかと思ったが、その男性の声音はそうではないことを物語っていた。そこには病気の子供が安らぎを求めるような、切羽詰まったものがあった。「私は子供の頃にあの星を見た覚えがあります」彼は説明した。「けれど私はこれまでその名前まで調べる気にはならなかった」彼は息を整えるために少し間を取った。「お分かりでしょうが、私は死のうとしています」
私の背筋に電撃が走った。一瞬、私はどう反応していいか分からなかった。私は何か思いやりのあることを言いたかったが、そのかわりに私は彼がどちらを見ているかを尋ねた。東の低いところだと彼は答えた。見なくても、彼の星は分かった。それでも、私はそれを確認しなければならなかった。そうするのが当然だった。私は彼に電話を繋いだままにしておくように頼み、階下まで走って外に飛び出した。空気は涼しく穏やかで、甘い香りがした。東には新緑に満たされた木立が見えた。なんて皮肉なんだ、と思いながら、私はその上にある彼の星を探した。そして私はその星を実際に見て、初めてその重大さに気がついたのだ。
私は電話まで戻り、興奮と厳かさが両方混じった声で言った。「それはアルクトゥルスです」私はいったん言葉を切り、それから付け加えた。「またはホクレアともいって、ハワイでは喜びの星、そして大いなる故郷への旅を導く星です」電話の向こうですすり泣きが聞こえ、囁きが続いた。「ありがとう」電話は切れた。私がその男性の名前を知ることはなかった。
私はあの電話を忘れない。それは私に、星が人間にとっていかに大切なものか、それらが苦しみの時、どんなに慰めになるのかを分からせてくれた。しかしなぜ…と私は思う…この男性はその星の名前を調べたり、夜空への興味を追求する気にならなかったのだろう。天には私たちの目を喜ばせ、心を暖めるものがそれこそいくらでもある。もともと私たちは好奇心旺盛な種だ。バラの匂いを嗅ぐと、私たちはその香りにくらくらして、すぐに「このバラはなんて品種?」と尋ね、その名を知ることになる-例えば「レディX」とか。庭で赤い羽根がちらっと見えた時も同じだ。私たちは「あの鳥は何だろう」と思い、「あれはショウジョウコウカンチョウ」と教えられる。きれいな緑色の宝石を手に取ると、私たちの心はこう疑う「エメラルドかな?」そして私たちは答えを探す。しかし、夜空を見上げて「ああ」といったきりそのままにしている人々は世界に何百万人いることだろう。多くの人にとって空は圧倒的で、心に受け入れがたく、あまりに底知れないものなのだ。
それがあなたが夜空について学ぶことに興味を持った時、その趣味が孤独なものになりがちな理由なのだろう。あなたは多くの「裏庭」天文学者、一つの空の下で孤立した恋人たちの一人になるだろう。しかしあなたは本当に一人きりなのではない。私たちには友がいて、仲間がいる。それは永遠に忠実なる星たち、そしてさらに多くの、あらゆる星団や銀河たちだ(それにしても星団とは何かと思ったら、宇宙を旅する星の一家だったとは!)。私たちの頭上には星の街灯りがある。手の届く範囲に天の全ての自然の驚異がある。そしてそのそれぞれが語るべき物語を持っている。その物語を「聞く」ために私たちがすべきことは見て、「耳を傾け」、読むことだけだ。それが私が「ディープスカイ・コンパニオン」シリーズ〔この本とそのシリーズ〕を書いた理由だ。あなたに、親しみ深い星の化粧板の向こうにある、新しい仲間たちのいくつかを紹介する助けとなるように。

★…ええなあ。なんていうか、マイナー趣味である天文オタクのマインドがガッツリ書いてある。そのうち全部訳してしまおうか。…何年もかかりそうだけど(笑)。
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