mixiユーザー(id:429476)

2021年11月30日16:05

83 view

パ・ラパパンパン

Bumkamuraのシアターコクーンで『パ・ラパパンパン』を鑑賞。
フォト フォト

脚本は、今期朝ドラの『カムカムエヴリバディ』の藤本有紀さん。演出が松尾スズキ氏。私にとっては『ちかえもん』コンビ。『ちかえもん』とはNHKでやっていた近松門左衛門が主人公のドラマ。その脚本が藤本さんで、近松役が松尾氏だった。どうやら、この時に「今度一緒に何かお芝居やりたいね。」と企画が持ち上がったらしい。4年越しに実現。

今回(てか、良く考えたら『ちかえもん』もそうだったが)はミステリ。でも、謎解き本格ミステリというより、ファンタジーミステリ寄りだと思う。ちょっとSF設定もあったし。人が死んだりはするも、クリスマスキャロルを題材にしたからか、今の時期に合っていて、何処か温かみのある話だった。私にはちょっとサクサクし過ぎてるな…というのはあったけれど、これは大人計画の舞台じゃないしね。

観ていて、「藤本さんは東京03が好きなのかな?」と思った(笑)。
松尾氏演出なので、笑える演出部分も多く、ユニゾンでボケるところ等は初期の大人計画の芝居を想起させたりした。

グッズはなかったけど、パンフレットを売ってました。グッズ作らなかったのかな?宣伝イラストがヒグチユウコさんだったのだが。

早見あかりさんが、10投身くらいある美女で、「お人形さんのような美女ってこういう人を言うんだな。」と思った。でも、笑いは“ウレロ”で鍛えたモノね。てまりとのメンチの切り合いは、顔芸満載で面白かった。

開演前に、松尾氏の面白舞台観賞中の注意事項があった。2回あったのだが、1回目「お車の移動をお願いします。…お願いしますって、何処に移動すれば良いんでしょう?」と言っていたが、2回目は「お車の移動をお願いします。渋谷の立体駐車場…今、頭の中にそう浮かびました。」とちょっと変えたりしていた。でも、最後「パ・ラパパンパン」は言えずに必ず噛む。「パ・パランパパパン…パン祭り。」(笑)

※以下、もう少し詳しく『パ・ラパパンパン』の感想を書きます。ネタバレの部分がありますので、まだ、公演は続いていますし、ネタバレNGの方はここから先は読まない方が良いかと。ミステリだしね。

パ・ラパパンパン
会場:Bunkamura シアターコクーン
脚本:藤本有紀 演出:松尾スズキ
出演:来栖てまり/松たか子 浅見鏡太郎/神木隆之介 フレッド/大東駿介 ディック・ウィルキンス/皆川猿時 モンナ/早見あかり 刑事/小松和重 探偵/菅原永二 ボブ・クラチット/村杉蝉之介 エマ/宍戸美和公 ジミー/少路勇介 ティム・クラチット/川嶋由莉 牧師/片岡正二郎 裏木戸蒼/オクイシュージ イザベル・ウィルキンス/筒井真理子 ベス・クラチット/坂井真紀 エベニーザ・スクルージ/小日向文世 

さっくり粗筋
ダメダメな小説家来栖てまり。彼女を見出した編集長裏木戸も既に見放し気味だ。新人編集者の浅見は、裏木戸に言われ、彼女に渡すクリスマスプレゼントのワインを持ち、原稿を取りに行く。彼女はティーン向けの小説はやめて、ミステリを書きたいと言って来たのだ。
しかし、てまりは、ほぼやる気0。自分の案だと言って、クリスティのオリエント急行殺人事件の話しをする始末。浅見「てまりさんはクリスティも読んでないんですか?!」
てまりは浅見に「編集者なんだから、何かアイディアを寄越しなさいよ。それがアナタの仕事でしょう〜。」と意に介さない。

そんな折。彼女の頭の中に、パ・ラパパンパンという曲が思い浮かぶ。子供の時に歌ったクリスマスソング。彼女はそれに導かれるように「そうだ!クリスマスキャロルを題材にしたミステリにすれば良いのよ!」と書き始める。

強欲無慈悲の金貸しスクルージがクリスマスの夜に殺害される。彼は死ぬ前に、教会の慈善パーティに参加しており、そこでプレゼント回しが行われる。スクルージに当ったのは“ひなげしのリース”。一見美しいが、ひなげしの花言葉は「永延の別れ。」果たしてこれは予告殺人なのか?
このプレゼント回し、実はてまりの思い出が投影されている。子供の頃のクリスマス会。プレゼントで当たったのは「地獄の言葉」。同級生がいたずらで入れた物なのだが、隣りの友人には、可愛いネックレスが当たった。「何故私に?って。分かってるのよいたずらって。でも、何故私?って、一つズレていたら、私があのネックレスだったのに…。」ネックレスは玩具の銀メッキ。でも、彼女はその思い出…銀メッキのネックレスにずっと捕らわれているのだと。

容疑者は教会の慈善パーティーに出ていた全員。慈善事業化だが、欲深い面も持つ実業家のディック。その妻イザベル。スクルージの甥のフレッド。その妻モンナ。スクルージから借金をしているエマとジミー、そして牧師。スクルージの秘書ボブ。その妻ベス。2人の子である病気持ちの子供ティム。

てまりは物語を書き進めるが、登場人物は何処か勝手に役を演じているようにも見える。
てまりは、クリスマスキャロルでは重要な人物である、スクルージの仕事仲間の幽霊を冒頭で叩き切る。「ミステリに幽霊なんて不確定な存在はいらないのよ。」

刑事が色々調べに来る。スクルージが殺された日、彼の家の前にルンペンがいた。このルンペンの証言で、当夜、彼の家には3人の訪問者があったと分かる。ただ、闇夜で暗くいずれも顔は見ていない。ノックの音で3人と分かった。このルンペン実は探偵。
探偵としては優秀らしく、色々謎を暴いていく。

スクルージは昔は優しい男だった。妹…フレッドの母親…が死んでからこんな冷徹な人間になった。妹は絵描きで、美しい絵を描き良く売れていた。彼女は死の間際、緑の絵を描いていたが、母が描いたその絵を観たいとフレッドが言っても、スクルージは一向に見せてくれない。モンナはスクルージと仲良くしたいし、その絵をフレッドに見せてやりたいと思っているらしい。この妹、謎のドリンクを飲んで若さを保っていたという。いつまでも若く美しかった。しかし、彼女は急に亡くなってしまう。そこにも謎があるのか…。

刑事は結果、遺産目当ての殺人としてフレッドを連行する。

てまりはここまで書いて一息。浅見「ええ!こんなに早く決着が付くんですか?」てまりが書いたミステリは、ミステリとしては穴だらけ。謎のドリンクの説明もないし、ひなげしのリースの謎も解けていない。そもそも、スクルージは毒殺なのだが、何処で毒を盛られたのかの説明もない。スクルージの家に来た3人って誰?呆れる浅見。でも、てまりはその原稿を編集部に送信してしまう。そんな折、浅見に編集長からの電話。「まだ、てまり先生の家にいるのか?ワイン渡して適当にあしらって帰って来いって言っただろ?」浅見は仕方なく社に戻る。

一仕事終えたてまりは、アンティークショップで買った銀のグラスでワインを飲む。飲んだ途端、意識が混濁、てまりは倒れる。帰社中の浅見に電話が来る。「え?てまりさん!!どうしたんですか!!」「アナタ…ワインに毒を…。」てまりは病院に担ぎ込まれる。浅見は思う。「毒はワインに。ワインを渡したのは編集長。編集長…まさか…。」自分が見出したてまりが一向にまともな小説を書かず業を煮やし殺害した?

と、夢…なのだろうか?てまりは何故か、物語の中、クリスマスキャロル殺人事件の中にいた。19世紀のロンドン。てまりを見た人は一応に彼女を「スクルージの妹」と思うらしい(ドレスが緑色なのは、彼女が描いていた緑の絵の象徴かな)。と、彼女は気付く。「違う!犯人はフレッドじゃない!」てまりはルンペン探偵と出会い、彼と2人で本当の謎を解く。
果たして犯人は、何故スクルージは殺害されたのか?動機は何?そしててまりは無事、助かるのか?

そんな話。ようは、2つの物語が交差する構成、クリスマスキャロル殺人事件には、てまりの柵(銀メッキのネックレス)も投影されている。
冒頭、てまりが叩き斬る幽霊は銀の鎖を持っているし、この後も幽霊は斬ったはずなのに度々出てくる。「彼女は、そのネックレスの思い出にとらわれ過ぎだ。」と看破する編集長と幽霊はどちらもオクイシュージ氏が演じる趣向。これで幽霊=柵と分かる仕掛け。

笑いどころも沢山。てまりがデビューした年を「東京03がキングオブコントで優勝した年よ!」と言うし、、てまりは嫌なコトを忘れる為、東京03のコントをスマホ観る(本当に、角田氏や飯塚氏の声が聴こえてきた・笑)。編集長は「東京03は、優勝した後も慢心せず、面白いコントを作り続けているのに…。てまり君!彼女は何だ!!!」と激怒したり。藤本さん、東京03お好きですか?(笑)

ディックの皆川猿時氏による猿時劇場も開幕(笑)。ようは皆川さんのギャグ連発ね。取り調べのシーン。皆には殺害する動機やチャンスがちょっとずつある。ディックの取り調べで刑事役の小松氏が笑ってしまい「あ〜、面白いな!ずっと観ていられる!」と言っていたが、これ、アドリブかな?笑っちゃったのは素だと思う。他の役者…あかりちゃんや少路さん、大東さんも笑いそうになっていた(大東さんは後ろ向いて笑いをごまかした)。その中、顔を崩さないイザベル役の筒井さんは流石だと思う。

てまりは2時間サスペンスが好きで、物語にも度々その演出がある。タイトルが火サス風だったり。てまり「薄幸そうな登場人物は殆ど中山忍なのよ…。」フレッドが捕まり一旦物語が終わると火サス風EDロールが流れる。ほぼ配役が中山忍(すげえ笑った)。

可愛い少年ティムは、何故か変な声を出して喋ると「可愛いなぁ。」と言われ、かなり失礼なコトを言っても許されてしまう。浅見「何ですかこの子は?変な声を出すと許されるんですか?」
このティムにも秘密がある。探偵は10年前にもクラチット一家に他の街で会っていて、「その時も、今と変わらずティムは可愛い子だった。」と。物語の中にいるてまりはこの言葉に違和感を覚える。「今と変わらず」…ティムは年を取らないのではないか?
実はティムは心臓を動かす代わりに年を取らない薬をディックに貰っていた。その代り、ティムは、ディックの慈善事業の広告塔になっていたのだ。
この薬、どうやら出所は、スクルージ…その亡くなった妹らしい。

結論から言うと、ティムの薬の元や、妹が飲んでいたドリンクは緑色の絵具を溶かした物。昔の緑にはヒ素が使われており、これは肌を美しく保つ、若返りの効果があった為、服用する人もいたらしい。浅見(も何故か物語の中に入れる)は言う。「そんなモノ飲んでたら、早死にするに決まってる。」だから妹は早く死んだ。
スクルージは緑の絵を見せたくなくて、暖炉で燃やしてしまった。絵にはその緑の絵具。結果、スクルージはヒ素の煙を大量に浴び中毒で死んだ。

そして、現実のてまり。ワインを飲んだグラスはワイングラスではなく、妹が筆洗いとして使用していたカップ。そこには緑の絵具がたっぷり浸みこんでいた。(これ、なるほど!と思った。)でも、クリスマスキャロル殺人事件はてまりの創作のはず。何で現実に?(この説明ってあったかな?)

夜のスクルージ家に行った人物。1番目はイザベル。イザベルは元々スクルージと恋人同士だった。しかし彼は、妹の死により冷徹な人間に。堪らずイザベルはディックと結婚するも、ディックも慈善家は仮面と分かる。その話をしに行ったのだ。ひなげしのリースは、ベスが別れの合図としてティムに渡るよう仕組んだモノだが、プレゼント回しをで曲を弾くイザベルは「永延の別れ」をスクルージに告げようと、そのリースがスクルージの手に渡った時に曲を止めた。
2番目はベス。ディックにティムの薬はもうないと言われたが、イザベルに「スクルージさんなら持っているかも。」と言われ、貰いに来たのだ。しかし冷たくあしらわれる。
3番目はモンナ。「クリスマスプレゼントとして、緑の絵をフレッドに見せて欲しい。」と頼みに来た。スクルージは冷徹に追い払い、その後、その絵を暖炉に投げ捨てる…。
この場面は本来シリアスなのだが、ベスとモンナは、何とかスクルージの家に入ろうと、扉に体を捻じ込む。この仕草が面白い(笑)。あかりさんはポールダンサーのように、扉の枠に手を巻いていた(笑)。

幽霊な編集長がもっと重要な役なのかな?と思ったら、そうでもなくて、ちょっと勿体ないなとは思った。柵の象徴なのは良いアイディアだけどね。

洗濯屋エマと掃除屋ジミーの借金コンビが実は付き合っていたり、なのに、牧師とエマも良い関係だったり。牧師は盲目なのだが、「目が見えないから、外見の容姿にとらわれず、エマが好きになった。」と言うも、ジミーが「俺は、目が見えてるのに、コレ…コレが好きなんだぞ!」って、良く考えたらかなり酷いコトを言う(今ならルッキズムで叩かれそう・笑)。結果2人とも「枯れた女が好きなんだ。」と。
牧師もちょくちょく笑いを取る。何故か室内なのに川が流れていて(てまりがそう設定したんだろうね)、良く川に落ちていた。

あかりさんが本当に良かった。てまりが事情を訊きにフレッドのところに行ったら、モンナは浮気相手と勘違い。メンチの切り合いになるのだが、あかりさんのは最早顔芸だった。いかに変顔をするかに命かけてた。途中完全に猪木(笑)。ウレロでも猪木やってたな。

笑い多目なので、殺人があってもギスギスはせず、何処か温かみがあり、見やすい舞台だった。ミステリとしては、もっと捻っても良かったのかもだけど、前述通り、これはファンタジーミステリだと思うし(ちかえもんもファンタジーミステリなのよ)。

この時期に合った、良い舞台だと思いました。時期的に、笑えるモノが見たいっていう人も多いだろうしね。松尾氏の毒は抑え目。こういう舞台も良いかなと。
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する