mixiユーザー(id:7410632)

2021年06月06日17:32

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5月の。

5月に観たのは『ジョーカー』『インセプション』の2本。

●『ジョーカー』
荒んだ街ゴッサムシティ。精神の病と母親の介護を抱えつつ、派遣ピエロの仕事をして懸命に生きて居るアーサー。日常の軋轢はアーサーの精神の内圧を次第に高め、解雇された夜に電車内で絡んで来た酔っ払いのエリートビジネスマンたちに遂に爆発して仕舞う。
閉店する楽器屋の店頭のピエロ。ストリートのガキどもに絡まれ看板を壊され袋にされ、歪んだ顔で高らかに苦しそうに笑うピエロ。冒頭5分で「あーこりゃジョーカーになるわ」て思わせるのは見事。
突然笑い出して仕舞う精神の病。自分を路傍のゴミの如く扱う社会。暮らしを覆う閉塞感。しかしエリートを3人も殺した殺人ピエロは貧困層によりヒーロー扱いされ、街にはピエロの扮装が溢れて行く。初めて自分が社会に存在して居る、ヒトとして認めて貰って居る。そんな感覚を抱く、抱いて仕舞う。
狂気は相対的なモノであり、その判断は各自の主観による。自分と社会に齟齬があるトキ、おかしいのは自分か?社会か?その問いの果てに「自分がおかしい」と思うコトを止めて仕舞うアーサー。
彼が主観的な正気を保つ道はそれしかなかった。かくしてダークなチャップリン誕生。この流れには説得力はある。こう云う「あの有名キャラはこうやって生まれたんですよ」的映画は割とよく創られて居るけど、其処に宿敵バットマン誕生の萌芽をも絡めたのはまぁ善と悪は表裏一体、てコトなのね。多分。
母とトーマスの云い分の食い違い。真実は何処にあるのか。トーマスが陥れたのか、母が狂って居るのか。TVショーで特別に扱われると云う『夢想』。では黒人のシングルマザーとの関わりは?何処までが実際にあったコトなのか?ジョーカーは、この映画では何処までが現実だったのか?全ては主観。
笑いの発作を抑えられないアーサーはけたたましく笑う。絞り出すように。ピエロの顔をして。可笑しくもないのに。それに比べるとジョーカーは遥かに穏やかに、幸せそうに見えるのだよね。自分が自分として居るコトが出来る場所。それが社会の中に存在しない人間はじゃあどうしたらいいのかね。的な。
アーサーが渋るのにも関わらず銃を渡しておきながら保身のために嘘をつき、酒を差し入れつつ口裏を合わせに来た元同僚ランドルを殺し、同行して来た小人症の男ゲイリーを「優しかったのは君だけだ」と頭にキスをして帰すシィンが印象に残る。アレが『アーサー』の最後のヒトカケラだったのだよな。

●『インセプション』
ターゲットの夢に潜り込み情報を盗み出すハッカーたちは、失敗した仕事のターゲットだった男から逆に依頼を受ける。それは情報を盗み出す『抜き取り』ではなく、虚偽の情報を定着させる『植え付け』。桁違いに難しいそのミッションのため仲間を集め……。
元ターゲットであるサイトーからの依頼は『競合会社の次期社長に会社を潰させるコト』。ターゲットの深層意識に『父親に対する新たな認識』を植え付けるために、彼らは三層構造の夢を設計する。夢の中で夢を見て、その中で更に夢を見る入れ子構造。階層を降りるごとに時間の進み方が遅くなる。普段は夢の中で死ねば目覚めるが、深く眠るために薬で昏睡する今回は死ねば夢の最下層、奈落に落ちる。
コブの妻モルは、夢の中に現れてはコブの妨害をする。現実の彼女はもう死んで居て、夢のモルはコブが創り出した存在。彼女の存在はコブが抱える『瑕』。コブの持ち歩く『トーテム』、今居るのが夢か現実か判断するアイテム、は妻が使って居た小さな独楽。夢の中では決して止まらずに回り続ける。
ええと。割とサクサク進む映画でね、ビジュアル的に愉しい仕掛けが散りばめられて居て観て居て飽きないですよ。今は誰の夢の中だっけ?とか考え出すと少し混乱するかもだけど。『他人と夢を共有する』『他人の夢に入り込む』『他人をデザインされた夢に誘い込む』て云うハイテク機器を駆使するクセに、目覚めるには『睡眠中の体を物理的に落下させる』て云う超ローテクなのは少し面白かった。
三層目の更に下、夢の最下層、深層心理の奥に残る『かつて妻と2人で創った夢の街』の廃墟で、己が罪と後悔に向き合うコトになるコブ。この辺の流れと描写はカナリ好み。其処から彼を引き出す役目のキャラの名がアリアドネてのはちょと出来すぎだろとも思ったけどね。まぁいいのでは。判りやすくて。
割と好きなタイプの映画だったな。ちょと『ザ・セル』を思い出した。流行りモノで云えば少し鬼滅の無限列車編にも似てるかも。少しね。『トワイライトゾーン』にもあったな。死んで仕舞った夫をココロの中、夢の中の釘と鎖だったかで頑丈に封印されたドアの奥に閉じ込めて出すまいと、行かせるまいとするお婆ちゃんの話。あぁアトそうだ、岡嶋二人の『クラインの壺』も思い出した。まぁ、そんなん。
ラスト、コブは独楽を回す。独楽は回り続け、ふらつく……?て辺りでぷっつりと映画は終わる。コブが今居るのは夢なのか現実なのか。リドルストーリーにも思えるけどこの場合は多分、コブはもう独楽を確認する必要がなくなったのだと、『囚われる』コトを止めたのだと、そう云うコトなのかもね。

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月間賞と云えるアレではないけど、どちらも面白かったけど、今の気分では『ジョーカー』かな。
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