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2021年05月23日02:28

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ヤングマガジン月例賞第491回入選作「やすお 」(吉田博嗣)を読んで

「やすお」掲載のコミックDAYSサイト(無料)
https://comic-days.com/episode/3269632237330766632

このマンガ、一読して思い当たるフシがいくつもあって胸に刺さった。

私はこれまで正社員になったことが一度しかなく(それも一週間ほどで終わった)、ずっと期間雇用やら契約社員やら、アルバイトといったものを繰り返してきたのだが、このマンガで描かれるやすおと愛子の間で行われるやりとりをこれまでに何度も目撃してきた。
職場のおばちゃん、あるいはおねいさんはさすがに実際に手を出すことはなかったけれど、(この男、自分よりできないな、自分より下だな)と思ったら容赦なく愛子のような態度を見せた。手を出すことはない、と書いたけど、場合によってはそれ以上にキツい言葉の暴力は遠慮なく浴びせた。だからこの作品で描かれている愛子がやすおに行う暴力はその比喩ではないかと思えた。

若いころは私もやすおのような扱いを受けたこともあったが、最近は無駄に齢をくったので、あからさまに言われることはなくなった。コンプライアンスも以前よりうるさくなったし。それでもやっぱり、仕事のできないおとなしい新人男性が「やすお」のように扱われている光景をときどき目にする。おばちゃんの方が見下した態度をとる(時には無視も)のに対して、できない新人は真面目に「すみませんでした」「ありがとうございました」と言うだけなのもマンガと一緒だ。

こういうことを書くと怒る人もいるかもしれないが、これは女性が社会的に高い地位に立つと、しばしば見られる現象ではないかと、私は思っている。当然といえば当然ではないか。彼女たちは男社会の中で長年お茶くみだのコピー取りだのと虐げられてきたのだから、その優位な立場にいた男種のヒヨっこが自分より仕事のできない「無能」であるとなれば、当然許せなく思うことであろう。ましてや格差・競争社会であればなおさらである。「無能男」を蹴落とさなければ自分の地位や立場も危うくなる。社会に出た女性にはそういう危機意識が、男社会で胡坐をかいてきた男性以上に持っていることは間違いない。ちなみに同性である若い新人女性に対しても無能であれば、彼女たちは同様の扱いを行ったことも目撃しているので、念のため。

この作品はSFという形を借りながらも、たった数ページで、現在の非正規雇用社会の生きづらさ(男女ともに)の正体の一つを巧みに表現している。ヤングマガジン月例賞入選を貰ったり、ネットで話題に上がったりするのも納得である。

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