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2021年02月28日14:34

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映画の本来の姿

キネマ旬報オールタイムベストテン。
http://mycinemakan.fc2web.com/movie2/best100b.htm

なぜ、ここに選ばれているのか、理由がわかるものもあります。
日本の中世の伝統歌謡催馬楽をアレンジして、庶民の祭りの歌の歌詞の中に、人として生きることの道を鮮やかに示した、
『隠し砦の三悪人』
同じように、倫理や道徳を考えさせられる、『生きる』、『羅生門』、

人に生き方に一石を投じてくれるもの、考えさせるもの。
『太陽を盗んだ男』『七人の侍』『サード』『ゆきゆきて、神軍』

絵がきれいなもの
『麦秋』『東京物語』『影武者』『戦場のメリークリスマス』『泥の河』

美人女優や名優の目の演技など、写っているものが魅力的なもの
『愛のコリーダ』『青い山脈』(原節子バージョン)『無法松の一生』(阪妻バージョン)

…もう一つ、
映画として緻密なものがあると思います。
『復讐するは我にあり』
有名な、西口彰事件
http://yabusaka.moo.jp/nishiguchiakira.htm
を題材に、
強盗殺人を繰り返して、五人を殺した男を緒形拳が演じています。
ところが、一応、金を奪ってはいるものの、この男の動機がよくわかりません。「異常な殺人鬼だった」とすると、B級の犯罪映画としてはいいでしょうが、そこどまり。観賞し捨てられる消費の映画になります。要するに、我々は異常な殺人鬼になりえないからです。

そこで、西口が浜松に行き、陰でコールガールをあっせんする安宿に泊まり、そこの女将親子を殺して着物を奪うエピソードを脚色し

女将…小川真由美。旦那もち。旦那が旅館の名義を変えてくれない。若い男(火野正平)を引き込むが、その男もクズ。やさしい西口に惹かれる。
女将の母親…清川虹子。疎開のときにいじめた憎き相手を殺したという殺人の前科持ち。競艇狂い。娘の旦那の機嫌を取り、安定した生活をしようとしている。

という設定にしていて、その人間像への同情から、フ〜ッと、西口の犯罪に感情移入できる仕掛けが張り巡らされています。

小川真由美の濡れ場は、超一級です。あまりにもリアルであり、猥褻などという言葉を通り抜け突き抜けたものです。それは、私の散歩コースの雑司ヶ谷で起きた殺人の撮影に、鬼子母神の門前の実際の殺人現場のアパートが使われたことと同じです。町並みも部屋もリアルであり、殺人事件の恐怖だとか殺されて弁護士バッヂを奪われた老人への同情といった気持ちが起きる暇がないほどです。
リアルすぎるから、強く引き込まれるだけ。
いくら濡れ場がリアルでも、猥褻なことは思い浮かびません。

映像や脚本の見事さリアルさは、手段です。そこに我々はともすると、「目的」を設定してしまいますが、これこそ、近代人の病。
手段こそが、感動そのものです。うまい料理を食べる。元気が出て、それから何をしようが、その料理の味とは無関係です。そういう忘れがちな基本を思い出させてくれました。映画監督など玄人に評価が高いはずです。

この西口彰事件は、
逮捕のきっかけを作った古川泰龍が、死刑が確定した西口の子どもに学資を援助した、そもそも弁護士と称する訪問者が手配書の西口だと見破ったのは、いたいけもない古川の幼い娘だったなど面白い話がたくさんあるのですが、
緻密に計算のもと、思い切ってカットしてあります。


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