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2020年03月13日22:35

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2月に見た映画 寸評(4)

●『アントラム 史上最も呪われた映画』(マイケル・ライシーニ、デヴィッド・アミト)
「警告! この映画を観たら死にます」という大胆な宣伝コピー。この手のネタに弱いワタシは「え〜、おれ、死ぬのかなあ」なんて思いながらも、映画館へ足を運んだ。/本編は最初、ドキュメンタリーの体裁から始まる。『アントラム』という1979年に作られたオカルト映画があって、それを上映すると映画館が火事になったり、関わった人が数日後謎の死をとげたりしたという。そのあらましを(実際の?)ニュース記事、再現映像および関係者へのインタビューという形でレポートする。そして長年行方不明になっていたこの映画の35ミリが、ある日ネットオークションに出されていることを知って作り手は落札する。手に入れたフィルムにはところどころ誰かが後から編集した形跡があるという。そしてなぜか当然のように、このフィルムを今から皆さんに見てもらうことにする、という流れになって、黒い画面に白文字で「警告」と出る。「この作品を見て貴方に何らかの支障が出ても本作は一切の責任をもちません」云々、といった仰々しい内容の文章が出た後、ご丁寧にもカウントダウンまで始まる。映画館を出るのなら今のうちですよ、というウィリアム・キャッスルが使った古いギミックである。もうワタシ大喜びである(笑)。もちろん誰も劇場から出ない。みんな死ぬ気マンマンだ。/で、結果からいうと、もうちょっと上手にダマしてほしいなあ、と(笑)。一応、登場人物の服装とか、フィルムの質感とか、当時の低予算オカルト映画の雰囲気はよく出ている。しかし、なんで冒頭のスタッフ・キャストのテロップがロシア語なの? セリフは英語なのに。ちょっと狙いすぎ。それならいっそのこと無国籍な映画にして、もっと得体のしれない映画にした方がよかったかも。ストーリーの方も一見わからんようでいて、伏線や山場などがちゃんと考えられてあり、オチまであったりして、わりとしっかりと作られたホラー映画だなあ、と思う。もっとなにかとんでもないものが映っているとか、古いフィルムなので場面が飛んでるとか、話がわからなくなって混乱させられるとか、そういうことをやっているのかと期待したのに。一番やりそうだな、と予想していたのは、主演の少女が本編で本当に虐待されて、殺された? みたいな(『スナッフ』的な)演出だが、そういう禍々しい仕掛けもなかった。/映画が終わると、またドキュメントに戻り、実は本編の何百か所にもわたって悪魔のマーク?がサブミリナル的に入っていると知らされるが、その程度では驚かないナァ…。結局、一番盛り上がったのはカウントダウンの件りぐらいで、本編ははっきり言って肩透かしでした。でもこの手の映画はあんまり本気を出して本物そっくりに作ると、洒落のわからない奴がマジで怖がったりするので、この程度のリアルさに止めておこう、とかいった配慮があったのかもしれない。とりあえず、私はまだ生きています。
<2/13(木) シネ・リーブル梅田、劇場2にて鑑賞>

●『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』(フェリックス・チョン)
【ネタバレあり】久しぶりにチョウ・ユンファが香港ノワール系の作品に出てる、というので気になって見に行った(私が最後に彼を見たのは2015年の『香港、華麗なるオフィス・ライフ』というミュージカル・ラブコメ)。今回は完璧な偽札を作る犯罪チームのリーダーという役どころだが、やっぱりこういう暗黒社会に生きる男を演じさせればバッチリ似合うんよね。おまけに東南アジアのゴールデン・トライアングルで麻薬王みたいなのと対決する場面では自動小銃の二丁構え(!)をやってくれたりして、全盛期のユンファを知るファンに対して明らかにサービスする内容になっている。これは完全復活か? と途中まで喜んで見ていたのだが、後半はそれを全てご破算にするストーリー展開に(泣)。それはないでしょう。チラシにさりげなく題名が書いてあるからバラすけど、これ、まんま『ユージュアル・サスペクツ』だよね。FAXの場面までご丁寧にあるし…(あと『ファイト・クラブ』も入っている?)。パクリ文化という、かつての香港映画の悪しき伝統まで再現しなくてもいいと思うんだけど。それとも偽札の話なので、映画自体も有名ハリウッド映画の贋作にしたとでも言うのだろうか。ただ63歳になったチョウ・ユンファであっても、まだまだこの手の映画で活躍することはできるという証明にはなった。今後も彼の活躍に期待したい。
<2/15(土) シネ・リーブル梅田 劇場4にて鑑賞>

●『カイジ ファイナルゲーム』(佐藤東弥)
【ネタバレあり】別に「カイジ」ファンというわけではないのだが、前2作を見ているので一応付き合いで見た。9年ぶりの新作で、完結編(?)。原作者・福本伸行自らがオリジナル脚本を書くというフレコミ(徳永友一と共同)。事前にネットで悪い評判が伝わってきていたのだが、それでも私が見たときですでにひと月以上ロングランで、お客さんもけっこう入っていた。たぶんネットで怒っているのはカイジの濃いファンで、一般の薄いお客さんはフツーに楽しんで見ているような気もする。/と言いつつ、原作者が考えたゲームというのは確かにいまいちだった。メインゲームである「最後の審判〜人間秤〜」の会場は、TVのバラエティ番組のセットみたいだし、さんざん引っ張った結末も大時計に引っかかっていたコインがコロコロと…ってそんな偶然あり? しかもダメ押しで二回も(笑)。だいたいその前は時計の時間をズラしていた、という一応合理的なトリックだったのに、その後が偶然で勝利、って、アカンでしょ。もし吉田鋼太郎の秤が右側だったらどうなるの? 「ドリームジャンプ」は見たまんまのトリックなのに、だらだらとその説明をするのが辛かった。最後の「ゴールドジャンケン」も、まさかこんな理由で? っていうオチでやはり肩透かし。確かに一作目などは心理戦の要素が強かったのに、今回はほとんどが「カイジたちは事前にこんな準備をしてました!」的なトリックを明かすことで勝利するパターン。けど、正直それほどこのシリーズに思い入れのない私としては、だいたいいつもこんなノリじゃなかったっけ? と思って見ていたので、本作だけが特別ヒドいとは思わなかった(褒めてないな)。/むしろそんな真面目なツッコミより、藤原竜也をはじめ、敵役の吉田綱太郎、福士蒼汰の大げさな演技を積極的に楽しむべきだろう。何よりこのシリーズの楽しみは、それまで冷静だった悪役が、最後は極端なまでに自己崩壊して、地団駄踏んで悔しがる様を大笑いして見ることだと思っている(笑)。バカバカしいとは思いながらも、弱者を足蹴にして成り上がった権力者たちを、ギャンブルでコテンパンにやっつけるカイジというアンチヒーローの存在は決して悪くない。いつまで経っても景気回復が見えず、東京オリンピック後の先行きも不安に思われる現在(本作は東京オリンピック終了後、経済破綻した日本という設定)、9年ぶりにこのシリーズが復活し、それなりのヒットを飛ばしているというのには、やはりそれなりの理由があるように思われるのだ。
<2/15(土) TOHOシネマズ梅田 スクリーン5にて鑑賞>
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