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2019年09月20日00:51

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三つ子次男の「虐待死」に映る多胎児家庭の辛労

三つ子次男の「虐待死」に映る多胎児家庭の辛労
9/19(木) 6:40配信東洋経済オンライン
三つ子次男の「虐待死」に映る多胎児家庭の辛労
(写真:Mavarick / PIXTA)
 東京都目黒区の船戸結愛ちゃんの虐待死事件で9月17日、母親の優里被告に懲役8年(求刑懲役11年)とする判決が下されたが、9月24日に予定される控訴審判決にも注目が集まっている。2018年に愛知県豊田市で発生した、三つ子育児の母親による0歳児の次男への暴行死事件の判決である。

【写真】三つ子次男暴行死事件が発生したマンション

 2018年1月11日19時ごろ、愛知県豊田市に住む三つ子の母(当時29歳)が、自宅で生後11カ月の次男が泣きやまないことに腹を立て、床に2回たたきつけた。次男は病院に運ばれたが、同26日に脳損傷により亡くなった。母は殺人未遂容疑で逮捕された。

 今年3月、名古屋地方裁判所岡崎支部で裁判員裁判の一審判決が出され、母は傷害致死罪で懲役3年6カ月を言い渡された。執行猶予はついておらず、母は控訴した。

■健診で見られた虐待の兆候

『週刊東洋経済』では9月17日発売号で「子どもの命を守る」を特集。児童虐待や保育園事故、不慮の事故など、子どもの命を襲う危険について網羅的に検証している。その中で目黒区の虐待事件に加え、三つ子事件についてもレポートしている。

 豊田市の事件では、母は2017年に不妊治療の末、三つ子を出産した。妊娠期には夫婦そろって市が主催する育児教室に通い、夫は半年間の育児休暇を取得するなど、育児に向き合おうとする様子がうかがえた。

 しかし、三つ子の育児の負担は過酷だった。母は三つ子に対して毎日24回以上ミルクをあげており、1日1時間も眠れない日が続いた。そうした母を継続的に支えることができる人は、周囲にはいなかった。夫はおむつ替えに失敗したり、子どもをうまくあやせなかったりしたため、次第に頼ることができなくなったという。実家の両親も祖父母の介護に追われ、子の育児支援にまで手が回らなかった。

 事件を防げたかもしれない場面もあった。2017年5月、三つ子の母は豊田市が実施した3〜4カ月児健康診査の際、問診票の「子どもの口をふさいだ」という欄に印をつけたのだ。

 また、長男の背中にはあざが見つかっていた。いずれも担当の保健師や医師が母に事情を聞いたものの、虐待と断定できる根拠はなく、行政が家庭に介入することはなかった。

 また健診の少し前に、豊田市の子ども家庭課の保健師が乳児を対象とした全戸訪問で三つ子家庭を訪れている。母が保健師に育児の不安を伝えると、保健師は一時的に子どもを預かる「ファミリー・サポート・センター」を紹介。しかし母は登録こそしたものの、実際の利用には至らなかった。一家はエレベーターのないアパートの4階の部屋に住んでおり、3人の子どもを抱えて階段を下り、事前の面談に行くことはなかった。結局育児の悩みは解消されず、母は次第に孤立していった


豊田市の子ども家庭課課長は、「異変に気づき子どもを助けられていたら」と声を詰まらす。三つ子の母が行政のサービスを利用できず、育児で孤立していたことを、課長は事件後に知った。「ごく普通のお母さんに見えた」と言う。

 悲劇を防ぐことはできなかったのか。今回の事件の経緯をたどると、双子や三つ子などを持つ家庭が抱えるリスクが浮かび上がる。

■多胎児家庭に高いとされる虐待のリスク

 一般的に、多胎児の家庭では虐待に発展するリスクが通常の単胎家庭より高いといわれる。日本多胎支援協会の調査によると、多胎家庭では虐待死の発生頻度が単胎家庭に比べ、4倍以上にもなるという。

 その原因の一つには、育児負担の重さがあると考えられている。三つ子など多胎の育児では、昼夜を問わず子が交互に泣き続けるなどして親に負担がのしかかる。愛知県で多胎家庭を支援する一般社団法人「あいち多胎ネット」の日野紗里亜理事長は、自身も三つ子を育てている。「子どもが1歳頃になるまでは、ただ泣きわめいて私を困らせる存在としか思えませんでした。しかしつらくても、誰にも言うことが許されないような気がしていました」。

 ヘルパーによる訪問や、家庭への研修などを通して多胎家庭を支えるNPO法人「ぎふ多胎ネット」の糸魚川誠子理事長も多胎家庭支援の現状をこう語る。「子育て中の母親は眠る時間もなく、心身がギリギリの状況です。ご家庭によっては毎日訪問し、様子を見るケースもあります」。

 なお、双子や三つ子といった多胎児が生まれる可能性は、体外受精などの不妊治療によって高まることが、厚生労働省の調査研究などで指摘されている。多胎児の出生割合は体外受精が本格化し始めた1980年代後半以降に急増し、現在は当時の約2倍にまで増加している。

 2500グラム以下の子が生まれる割合は、単胎児では約8%のところ、多胎児では実に70%以上に上るとされ、低体重で生まれる割合も高い。その分健康上のリスクも大きくなりがちだ。

 このような多胎児を抱える家庭への支援は十分だろうか。豊田市は事件が発生するまで、多胎家庭に特有のリスクを認識していなかった。「市の対応は母への支援とはならず、母が抱いていた多胎に対する不安は解消されていなかった」。三つ子事件を受けて発足した豊田市の外部検証委員会はそう報告する。

■大半の自治体が特化した支援を行っていない

 前出の厚労省調査からも、大半の自治体が多胎児に特化した支援を行っておらず、地域の多胎サークルなどがその役割を担っている現状が明らかになっている。

 豊田の三つ子の母に対しては、執行猶予付きの判決を求める署名活動が行われている。9月17日現在で、3万6000筆を超える署名が集まった。同じように子育てをする母親などが、この母は残る2人の子を育てながら罪を償うべきと支援している。子どもを死なせた罪をどう償うべきか。控訴審の判決は9月24日に言い渡される。

『週刊東洋経済』9月21日号(9月17日発売)の特集は「子どもの命を守る」です。

辻 麻梨子 :東洋経済 記者
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