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2019年06月30日07:10

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蟻の街の子供たち 北原怜子(きたはらさとこ)−53

聖母文庫 聖母の騎士社刊

聖ペテロの祝日に

 蟻の街に教会ができたことを、一番お喜びになったのはゼノ様でした。ゼノ様は、この喜びを土井大司教様にお知らせして、ぜひ「蟻の街」の人々を祝福して頂きたいとお思いになりました。
 なぜかと申しますと、昨年の十一月、「蟻の街」に教会が建つというニュースが新聞に載った時、カトリック関係の方で、一番喜んで下さったのは、土井大司教様でした。
 あの新聞が出た時、一部の人々は、一労働修道士にすぎないゼノ様が、教会を建てるなんて、僭上(せんじょう)の沙汰だと大変非難なさったのだそうです。さすがのゼノ様も、これにはすっかりしょげてしまいました。そして、急いで土井大司教様のところへお詫びにおいでになりました。と言っても本来ならば、大司教様に対して一労働修道士が直接拝謁をお願いすることすら失礼なのだそうですが、大司教様は、特にゼノ様を御居間にお招きになり、
「蟻の街に教会ができたらすぐ知らせて下さい。ぜひ私も見せてもらいましょう。指導の神父様も、その筋を通じてお世話してあげましょう」
 との御言葉をたまわりました。
 ところが、それから半年近くたっても、なかなか建たないので、ゼノ様は「蟻の街の天使」のように立場が窮しておしまいになりました。それが突然、ふって湧いたように蟻の街に十字架が上がったので、ゼノ様は二重三重のお喜びでした。
「大司教様、蟻ノ街ニ見エルカモ知レマセン。ミナサン、ソノツモリデ、立派ナイイ子ニナリマショウ」
 さあ、それを聞いた時の子供たちの喜びようといったらありません。一日も早く来て頂くようにお願いしようと、一人一人が精一杯の知恵をしぼってお手紙を書き始めました。

土井大司教様             「蟻の会」子供一同

 司教様お元気ですか。お体が弱いとか、心配しています。僕は蟻の会に来てからもう一年にもなります。初めは気の落ち着かないゴミゴミした所の様に感じましたが、去年のクリスマスに、ゼノ様や、カトリックの先生がいらっしゃってからは、明るい蟻の会になりました。イエズス様のお話や、お祈りを聞いたばかりの時は、アーメン、ソーメン、ヒヤラーメンといって、北原先生を泣かせましたが、今日この頃では、北原先生のお家の祭壇にあるお祈りをしないと、他の事が手につかない位になりました。北原先生がいらっしゃってからは、地獄がどんなに恐ろしい所かが分かりました。今迄知らず知らずしていたいたずらや、悪い事を、この頃はしない様につとめています。学校の勉強も、北原先生が見て下さる様になってうんとできる様になり、試験も生まれてはじめて百点を取りました。北原先生は体が弱く、いつも青い顔をしていますが、僕たちがいってもいやな顔を見せず、夜遅く迄色々と教えて下さいました。三月の二十五日のご復活祭は、北原先生のお力添えで、高円寺のメルセス会で、一日中遊んだり、ご馳走になったり、お土産を頂いて楽しい一日を送りました。北原先生は、何時も天主様のお陰ですよ、感謝して沢山お祈りしましょうね、とおっしゃいます。
 本当に全能の天主様ですね。其の全能の天主様が、こん度僕たちの居る蟻の会に、教会を建てて下さいました。一日も早く父母と共にお祈りしたいと望んでいた時なので、なんともいえない喜びが胸に湧いて来ます。高円寺で見た様な立派なものはいりませんが、僕たちの一番楽しい所を作りに来て下さい。
 お体が弱いとか、とても心配です。僕達は一日も早く司教様の様な立派な人になりたいと思っています。ぜひ来て下さいね。
 お話を聞いただけで優しいお父様が好きになりましたが、こん度はお会いする事ができ、僕たちの魂のお父様になって下さるのですね。
 もうお側から離れませんよ。必ず必ず来て下さる事を信じてお父様のおいで下さる日を指折り数えて待っています。ぜひ来て下さいね。お願いします。
                            守男

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