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2019年02月22日16:41

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神通大滿陀羅尼

北野恵宝師のところの光明聖典という経本に神通大滿陀羅尼がありました。
経本からそのまま抜き書きすると以下の通りの陀羅尼です。

オンバザラ。クロタ。マカハラ。カナカ。フンシフン
ビキツビ。マナセ。ウジボ。クロタ。 ウン、ウンハタ、ハタハタ、ソワカ

中学生の時か高校生になった時か、記憶は靄がかかったように曖昧になってしまいましたが、非常に力のある陀羅尼と教わって唱えていました。

失くしたものを探す時に唱えると不思議に失せ物が見つかると聞いていたので、何かが見つからないといつも唱えていましたが、本当によく見つかったので、見つからないと逆になんで見つからないんだろうと戸惑いを感じたものでした。

古い経本にはクロタはクロダになっていたようでした。最後のところは読点の区切りとは違って、「ウン、ウン、ハーターハーターハーターソワカー」というリズムで唱えていました。

ある信者の方が「ここではすぐに教えてくれるが、他所ではなかなか教えてもらえなかった」と言っていたのが印象に残っていますが、この陀羅尼がどういうものか、何度か調べようとしましたがさっぱり分かりませんでした。

先日、北野恵宝師のことを思い出していて、ふともう一度神通大滿陀羅尼のことを調べてみようと検索してみると、こんどはあっけなく検索結果の中に探していたものが現れてきました。

その経典は漢訳仏典のデータベースに大正新脩大正藏經所収のものとして電子テキスト化されていました。
電子テキストのPDFはこちら。
http://buddhism.lib.ntu.edu.tw/BDLM/sutra/chi_pdf/sutra10/T21n1228.pdf

国会図書館のデジタルコレクションに原本もありました。
穢跡金剛説神通大滿陀羅尼法術靈要門經1卷と穢跡金剛法禁百變法門經1卷が収められています。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2537721

穢跡金剛説神通大滿陀羅尼法術靈要門經の方に探していた陀羅尼がありました。
また穢跡金剛法禁百變法門經の方には同じ陀羅尼の少し文字の多いヴァージョンがあり、こちらには道教風の符呪が沢山入っていて、見ているととても面白いです。

私ははマカハラからシヴァ神を連想していました。
「大いなる」のマハーとシヴァを意味するハラの音写かと思っていたのです。

けれども所説の経典が見つかってみると、神通大滿陀羅尼は穢跡金剛の陀羅尼で、穢跡金剛は烏枢沙摩明王の別名、よくトイレの穢れ避けに貼られているお札の烏枢沙摩明王の陀羅尼と分かり意外でした。

烏枢沙摩明王がなぜトイレの穢れを除くのか、その謂れを知らなかったのですが、ウィキペディアを見ると、この経典にその由来が記されていたので引用します。
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『穢跡金剛霊要門』では、釈尊が涅槃に入ろうとした時、諸大衆諸天鬼神が集まり悲嘆している中、蠡髻梵王のみが天女との遊びにふけっていた。そこで大衆が神仙を使って彼を呼んだが、慢心を起こした蠡髻梵王は汚物で城壁を作っていたので近づくことが出来なかった。そこで釈尊は神力を使って不壞金剛を出現させた。金剛は汚物をたちまちに大地と変えて蠡髻梵王を引き連れてきた。そこで大衆は大力士と讃えた。
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こちらに漢字で音写された陀羅尼から還梵されています。
https://www.dharanipitaka.net/MVidyadharendra/HuiJiJGShuoShenTongDaYuanMan.pdf

バザラはvajra ヴァジュラで金剛、クロタはkrodha クローダハで忿怒、マカハラはmahā-bala マハーバラ 大いなる力、ウジボがucchuṣma ウッチュシュマ で燃え上がる炎の形容詞、梵音の音写で烏枢沙摩、火神アグニの別名です。
ucchuṣmaはud- śuṣmaに分解され、ud- は「上に」śuṣmaは炎のたてるパチッパチッとかシュッという音の形容とありましたが、śuṣmaだけでみると無秩序に動揺する様子で水の流れの形容にも使うようです。「音を立て燃え上がる」くらいの意味でしょう。
(追記:śuṣmaは動詞のśuṣからの派生語なので、動詞の方から調べると、乾く、萎える、乾かす、焦がすなどの意味を持つので、śuṣmaに「上に」の意のud-を付けて「燃え上がり焦がす者」でしょうか?糞尿の城壁を焦がし燃やし尽くしてて地に変じた説話にも合う名前になります。)

烏枢沙摩明王のフルネームがvajra-krodha-mahā-bala-ucchuṣmaなので、神通大滿陀羅尼は烏枢沙摩明王を勧請する陀羅尼のようです。
もっとも穢れたものをも浄化する火の化身の陀羅尼で、修行者を障碍する穢れを破る浄化の真言だと判りました。

失せ物が見つかるのも、思い出すことを妨げる、何らかのトラブルを引き起こしている穢れを浄化するからかもしれません。
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