1981年初来日、2003年、そして今年。３度目のキング・クリムゾン（以下 KC）ライヴ。
予習のつもりで聴いてみた『ラディカル・アクション』の印象が、あまり良いものでなかった（筋肉をつけすぎて、敏捷性を失ったアスリートみたい‥）ので、過剰な期待はするまいと足を運んだグランキューブ。
しかし、何というオーディエンスの年齢層の高さ‥
歌舞伎や、ひょっとすると大衆演劇よりも上？
男女比も8.5：1.5くらいでは？
よって、白髪だらけだろうが、ハゲていようが、シワだらけでも何も臆することはない！
8人編成。3ドラムはステージ前列に、下手からパット・マステロット、ジェレミー・ステイシー、ギャビン・ハリソン。結構高い後段に、同じくメル・コリンズ、トニー・レヴィン、ビル・リーフリン、ジャッコ・ジャクセクス、そしてフリップ先生。
あまり見たことのない配置だが、後にこのメリットが判明する。
ほぼ定刻に開演。約70分の前半と、20分程のインターバルを挟んでの後半80分強。
まさか、オーディエンスが年寄りだらけなので、こうしたわけでもあるまいが、中入りではトイレが大混雑。やっぱりそうだったのか、と妙な納得の仕方をした。
以下、ウェブ上にアップされたセットリスト。（←エライ時代になったもんだ）
第1部
01. Larks' Tongues In Aspic Part ��
02. Neurotica
03. Suitable Grounds for the Blues
04. Lizard
Bolero, Dawn Song, Last Skirmish, Prince Rupert's Lament
05. Discipline
06. Indiscipline
07. Epitaph
08. Larks' Tongues in Aspic Part IV
09. Islands
第2部
10. The ConstruKction Of Light
11. Peace - An End
12. Easy Money
13. Moonchild
14. Cadenzas
15. The Court of the Crimson King
16. Radical Action (To Unseat The Hold Of Monkey Mind)
17. Meltdown
18. Radical Action II
19. Larks' Tongues In Aspic Part �� (Level Five)
---encore---
20. Starless
全公演、まったく違うセットリストだということだが、これも商売人・フリップ先生の付加価値戦略か。
通しての感想は「思てたよりエエやないか」という感じ。
予習CDでは希薄だった「タイトさ」や「速度感」の度合いがはっきり増していて、この２年間のバンドとしての熟成を実証した。
何より嬉しかったのは「Lizard」「Epitaph」「Moonchild」「Peace 」「 The Court of the Crimson King」の KCクラシック（？）をしっかりセルフカバーしてくれたこと。加えて「Islands」を演ってくれたのは望外の収穫だった。
ただ、メタル・クリムゾンのトリオ期のナンバー（「Starless」に顕著）では、オクテット（ダブル・クァルテットと称してるらしいが）のサウンドはやはり過剰だと感じるし、如何な手練８人組の同調性をもってしても、しなやかさには欠ける。どれほど「軽快感」を演出しても、慣性質量の大きいGTカーが、ライトウェイト・スポーツカーの運動性には敵わないのと似ているように思う。
結局、この物量投入型KCの意図するところは何か、という？を抱えたまま帰路につくことになった。
ここ１週間ほど、過去のライヴ音源を聴いている。ほとんどのヴァージョンからは、どの道スタジオの再現はできないのだから、思い切りワイルドに振ってしまおうという風な「開き直り」が感じられ、一種パンキッシュ（？）なバンドのもう一面を構成している。
比して１２月9日の印象に「開き直り」は感じられない。むしろスタジオ・ヴァージョンにいかに忠実にライヴで聴かせるか、に力点が置かれているのは明確。オクテットは、このKCの財産でもあるが、同時に足かせでもある「過去の名曲」をクォリティ高く演ってのけるためのインフラ投資なのかもしれない。などと深読みしたくなるのも、実はフリップ先生の術中に嵌っているだけ？
プレイヤーで一番印象深かったのは、トニー・レヴィン。初来日時の記憶と全く変わらない、不気味なほどの年齢不詳ぶり。今回もスティック、エレクトリック・コントラバス、エレキベースを自在に使い分け、殊にスティックのプレイはもう１基のキーボード的な八面六臂の怪演。バンドサウンドに一層の厚みを与えていた。さらに唸らされたのは、スティックの「立ち上がりの遅い特性」を熟知しているのか、クラシック・ナンバーでは専らエレキベースでリズムのエッジを立たせるプレイに徹するという職人ぶり。
もう一つは、アンコール後のメンバーの上機嫌ぶり。メル・コリンズだけかと思ったら、フリップ先生までもが自前のカメラで、スタンディング・オベイションの客席を撮りまくり。
大阪のオーディエンスの「ノリ」と「行儀」の良さがお気に入りだったのか？
拾い忘れそうになったが、ステージレイアウトのメリットについて‥
パーカッションの生音が、アコースティック、エレクトリックを問わず、他の楽器に干渉するのを防ぎ、クリアにPAに乗せられるのだろう。
過去のライヴとは格段のバランスの良さで、この分野の目覚ましい進歩が感じられた。細かいことなら、メルとフリップ先生、ビルの前にはアクリルの衝立まで置いて、この狙いを徹底させていた。
そして残った疑問。３台は使われていたはずのメロトロンだが、終演後ステージににじり寄って目を凝らして探してみたが、私の知っている「あのメロトロン」の姿はなかった。
まさか「メモトロン」ではあるまい、とは思ったが確証はない。
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