葉月ちゃんはふしぎ　　　　issue 2

葉月ちゃんが説明したところによると、半年前に葉月ちゃんの机の上にある大きな水晶玉（それを葉月ちゃんはお祭りの屋台で買ったそう）を見つめていたら、急に水晶玉の色が黄金に変化し、ものすごい力で身体が水晶玉に引っ張られ、気がついたら中に入ってしまったとのこと。
それはどうも妖精の国らしくて、あちこちに小さな羽をつけた妖精さんたちがいて、でもみんな優しく葉月ちゃんを迎え入れてくれたそう。
その国の水飲み場で葉月ちゃんは妖精のケイくんと出会う。
彼は水飲み場で美味しそうに水を飲んでいて、その髪は黄金色で身体は透き通るように白く、ベージュのシャツに黒いスラックスを履いていたそうです。
その美しさに葉月ちゃんが言葉を失っていると、葉月ちゃんに気づいたケイくんはゆっくり微笑んで、
水飲む？
と聞いたそうです。
葉月ちゃんは耳まで赤くなったけど、黙って水を飲んでみるとびっくりするほど美味しくて、たちまちケイくんを好きになってしまったみたいです。

それからケイに会いたくて、一日置きに妖精の国に行くようになったの。小さな蛙公園のブランコに乗っていると、いつもどこからともなくケイは現れて。
二人で町を歩いたり、お店を見たり、パン屋さんでパンを食べたり、本当に楽しくて。
でもね、最近ケイにアマンダっていう緑色の髪の彼女がいることが分かって。ケイに聞いたら昔からのいいなずけで、25歳過ぎたら結婚するみたい。　　
私悲しくて悲しくて、それで分かったの、恋してるんだって。

私は気が動転してしまいました。葉月ちゃんは本当に変わった子でしたが、まさか妖精の男の子に恋してしまうなんて！

香奈子ちゃん、私どうしよう！
ど、どうって。妖精と人間は付き合ってもいいの？
わかんないよ。でも凄く好きなの。
それは分かったけど、でもケイくんには既にいいなずけがいるんだし。
そうだよね。諦めるしかないよね。それに私人間だし。
大丈夫？
うん。

葉月ちゃんは元気を失ってしまったかのようでした。
それにしても妖精の国が本当にあるなんて！そしてそこに行かれる葉月ちゃんは何か特別な力でも持っているようにも感じられました。

ケイくんは幾つなの？
13だよ。一つ下。
そうなんだ。
香奈子ちゃん、たがらケイとは友達ならいいよね、私。
でもそんなに頻繁に妖精の国に行って大丈夫？
分からない。一度香奈子ちゃんも一緒に行って！

葉月ちゃんの目は真剣でした。
困ったことになりました。