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2018年09月29日23:29

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過去からの手紙

            過去からの手紙
                                 zefaro
新庄昭恵63歳、独身、子供1人、十分過ぎるお金も有る。
部屋の調度品も満足している。
だが心が満たされない。
寂しい一人暮らし。
友達も居ないし、近所付き合いも無い。
「ピンポン〜」
「どなた?」
「昭夫ですけど」
「あら本家のお坊ちゃん、今開けるね」
「いらっしゃい、どうしたの?」
「これ、今日届いたんだけど、自分で自分に手紙を出したの?」
受け取ると、確かに差出人は、自分だ。
「ありがとう、お茶でも飲んで行かない?」
「いや、これから行くところが有るから、またの機会に」
「そう残念ね」
早速封を切る。
「未来の自分に、こんにちは、元気に暮らして居ますか?」
思い出した、確かタイムカプセルサービスとかで未来の自分に手紙を書こうと言うのに応募したんだっけ、すっかり忘れていた。
「友達は、大勢居ますか?幸せに暮らして居ますか?」
「私は、今も、どうも嫌味が得意らしくて友達に時々嫌な顔をされます、どうか未来の私には、嫌味を言う事もなく友達に好かれた生活をして居て欲しいと願っています」
「それから近所付き合いもしっかりやっていますか?どうも面倒臭がり屋なので心配です」
「夫婦円満で仲良く暮らして居ますか?私は、これから玉の輿に乗ろうと思います、知っていると思いますが、とっても好きな人を振って結婚します」
「後悔していませんか?」
結婚は、失敗だった、確かにお金の不自由は、しないけど、浮気ばかりで私の気持ちを踏みにじるばかりだったわ。
あの時、本当に好きな人と結婚して居たなら。
今更言っても仕方ないわね。
「通学路の旗振りでも社会に役立つ事をしてくださいね」
「それから無駄遣いは、しないで旅行を楽しんでください」
「今からでも遅く無いので人に好かれる様な言動をして皆に好かれる暮らしをしてください」
「では、何時までも元気でいたください」
まっ、何を言っているの、本当に、こんな事を書いたかしら?
もう、だったら今の私から若い私に手紙を書くわ。
「私は、貴女の未来でこの手紙を書いています」
「もしこの手紙が届くなら、結婚は、本当に好きな人としてください、今の私は、後悔ばかりしています」
「それから、もう少し言葉に気を付けましょうね、どうしても貴女はトゲのある言い方になっています」
「それから、もう少し他人を信用しましょう、そう悪い人ばかりじゃありません」
「それから料理を頑張って出来る様にしましょう、体の為にもね」
いざ手紙を書くと、なかなか出ないものねぇ〜
無駄ね、いくら書いても実際届く訳無いもの、燃やしてしまいましょう。
台所でライターで手紙に火をつける、オレンジ色に燃え上がり消えた。
あたりが真っ暗になって、寒気がして体が震え上がった。
不思議な事に過去の自分に手紙が伝わった。
急にパッと明るくなった。

「昭恵、お茶入れてくれないか?」
「あら珈琲じゃなくて良いの?」
「お茶で良いんだ、お前が入れてくれるお茶は、格別だから」
「はい、お茶」
「ありがとう、陽子が今日来るって言っていたけど何時頃かな?」
「さぁ?あの子ルーズだから解らないわね」
「昨日買って来たお菓子を出してくれないか、君に食べさせたくて買ったんだ」
「ねぇ、来週玲子と能登の方に旅行に行っても良い?」
「いいね旅行、楽しんで来ると良い」

END

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