＜水仙＞
水仙(narcissus)は阿利襪(olive)色に空を染む 火をつけぬ煙草くわへる汝(なれ)と
＜木蓮＞
はなびらのよろめきひらくmagnolia 訣(わか)れのあさを迎へる夜に
＜花韮＞
花韮は知られずに咲く紫に 娼家の跡の子らの遊び場
＜更紗菊＞
射干玉(ぬばたま)のliquid(リキッド)のeye line(ライン)凛とひき更紗(さらさ)の袖を揺らし汝(な)は撃つ
＜紅梅＞
聖堂の紅梅坂に凪ぐ風にコートを腕(かいな)にいだき見あげる
＜花弁雪＞
白妙(しろたへ)の花弁雪がごと桜染む聖堂の死ぬる風には
＜ポピー＞
温む風にポピーは揺らく うしなはれた愛の記憶をいだく四月に
＜桜蘂＞
桜蘂(さくらしべ)ふるみちの汝(なれ)黒漆に薫るスカーフ春の夜のそら
＜桜＞
春雨のきざしに桜(はな)の色彩(いろ)は染む そよそよと揺(ゆ)る汝(なれ)の御髪(みぐし)も
＜花束＞
前髪と花束は春のあめに濡れ 風車の舞はぬわたつみのあさに
＜躑躅＞
踊り子の舞台のやうに躑躅咲く わたつみの辺のサナトリウムも
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