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2017年01月22日11:09

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極私的70年代のAEROSMITH論

るんるん…「DRAW THE LINE」/AEROSMITH



AEROSMITHのイメージというと、ベテラン、である。

僕がロックを聴き始めたのは1993年か1994年のあたり。

ちょうど、カート・コバーンが悲劇的な死を遂げて、OASISがすい星のごとく現れた時で、AEROSMITHは「GET A GRIP」を発表して大ヒットを飛ばしていた時だった。

他にはBON JOVIやMr.BIG、METALLICAといったHM/HR系のバンドが圧倒的人気だったし、WEEZERやPERAL JAMといったアメリカのオルタナティブ系や、BLURあたりのブリットポップ系も人気だったりで、これらのバンドに共通しているのはAEROSMITHよりも若手だということ。

AEROSMITHの大物感というのはほかのバンドよりも圧倒的で、貫禄が凄かったし、悪く言っちゃうと、オッサン感が漂っていたように思う。

僕はAEROSMITHというと、圧倒的に70年代の作品が好きだ。

70年代の彼らのアルバムには、若さだけでは語れない圧倒的なパワーがあることと、ある時点から彼らはやけに老け込んでしまっているように感じている。

1stアルバムは、その若さが前面に出たアルバムだと思う。

オープニングの“Make It”の勢いと哀愁溢れるギターリフからして素晴らしい。

後の彼らの大成功の生命線ともいえる大得意のバラードは本作収録の“Dream On”ですでに完成形を迎えていることから、このから早熟ともいえる才能に溢れているともいえるが、“Mama Kin”をはじめとするハードロックンロールの勢いは、まさにこの作品の特徴ではないか。

スティーヴン・タイラーがやけにのどに力を入れて歌っているあたり、青さを感じるが、それもこの作品限定の魅力といえる。

続く「GET YOUR WINGS」は1stとは違う、早くも貫禄と大物感をたっぷり漂わせる作品になり、このあたりでこのバンドが凡百のロックバンドとは全く違う存在であることが示されたように思う。

オープニングの“Same Old Song And Dance”の冒頭のリフからして、成熟感を感じさせる。
シンプルながら非常に印象的なリフが素晴らしい。

スティーヴン・タイラーのボーカルは現在まで継続されているあの独特の歌いまわしを、この時点ですでに披露しており、AEROSMITHというバンドのアイデンティティはこの作品で確立したのではないだろうか。

この後に発表された3rd「TOYS IN THE ATTIC」は、ご存知、問答無用の圧倒的名盤だ。

作風は「GET YOUR WINGS」で確立されたスタイルでさらに楽曲の質が上がっている朔風。

オープニングのアルバムタイトルトラックが強烈で、この攻撃的で硬質なギターリフは、このバンドがロックンロールバンドではなく、ハードロックバンドだということが如実に表されていると思う。

代表曲“Walk This Way”と“Sweet Emotion”が現在も愛され続け、彼らのライヴのセットリストから決して外れることがないのは、そのギターリフの完成度からで、このバンドの屋台骨はブラッド・ウィットフォードとジョー・ペリーのギターワークにあることは疑いようもない。

それと“You See Me Crying”の美しさも忘れてはいけない。

特にこの頃のスティーヴンのバラード作曲能力は特筆するものがあり、それを見事に表現するボーカル力も素晴らしい。

当時、湧き水のようにアイディアがあふれていたことがよくわかるのは、この後に発表した「ROCKS」がさらにとんでもない歴史的名盤だったという事実だ。

彼らの場合、オープニングソングに圧倒的に素晴らしい曲を持ってくるのがスタイルのようだが、このアルバムの“Back In The Saddle”はその最たるものだと思う。

徐々に盛り上がりをみせるイントロでゾクゾクするし、アドレナリン全開で炸裂するスティーヴンの叫びはいつ聴いても最高だ。

その後の収録曲は捨て曲なしどころか、全曲、名曲だといってしまっても言い過ぎではないし、スティーヴンお得意のバラード“Home Tonight”の美しさは筆舌にしがたい出来だ。

その勢いは、「DRAW THE LINE」でも如実に表されている。

ここまでくれば少しは作品の質も落ちそうなものだが、恐るべきことにこの頃の彼らはそんなことが微塵も感じられない。

お得意の甘い美しいバラードが封印された本作はエネルギーと攻撃性が前面に出た、非常に刺激的な作品。

オープニングのアルバムタイトルトラックのギターリフは、どんな頭の構造をしていたら思いつくのだろうと思ってしまうほどユニーク。

ドラマティックに展開する“Kings And Queens”の完成度も素晴らしい。

ラストにはスリーピー・ジョン・エステスがオリジナルで、THE KINKSのバージョンを参考にしたと思われる“Milk Cow Blues”のカバーが収録されているが、これがこのバンドのセンスの良さを証明する素晴らしい出来で聴きどころのひとつだ。

ただ、成功と栄光はいつまでも続かないもので、当時のAEROSMITHはドラッグ禍の真っただ中、人間関係も悪化し、看板であるスティーヴンとジョーの関係が最悪の状態まで落ち込む。

ついにはジョーの脱退という事態を招くのだが、そんな最悪の状況で発表されたのが「NIGHT IN THE RUTS」。

このアルバム、非常に評価が低いアルバムで、要は作品の質うんぬんよりも当時のバンド状況と後の大成功を対比させられる形で、評価されているような印象を受ける。

さて、実際、どんな作品かというと、ギターワークが前作までと打って変わり非常にシンプルになっているのが特徴的。

収録曲のうち3曲がカバー曲である。

これは、意地悪な言い方をすればギターリフをはじめとするアイディアを生み出せるような状況に、当時のAEROSMITHはなかったともいえる。

では、つまらない作品かといえばそんなことはない。

ここで聴けるのは小細工を取り除いた分、贅肉がそぎ落とされて鋭利で攻撃的で生々しい、圧倒的な音の塊である。

このシンプルな楽曲では、ヘビーなジョーイ・クレイマーとトム・ハミルトンのリズム隊がよりクローズアップされ、腹に響くような重低音が非常に気持ちいい。

そのうえでブラッドとジョーも情け容赦なく、爆音をかき鳴らしており、スティーヴンもエネルギッシュなボーカルを披露している。

ユニークさという点ではこれまでの作品より後退はしているかもしれないが、エネルギッシュという点では全く衰えていないことが聴けばよくわかる作品だと思う。

さらに特筆すべきはバラード“Mia”で、この曲も素晴らしい名曲である。

バラードの作曲能力についてはスティーヴン・タイラーという人は天才だといっても過言ではないのではないか。


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