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2016年11月15日23:10

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「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」 「太陽のめざめ」

「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」 ’15 (英)

監督:マイケル・グランデージ 脚本:ジョン・ローガン
原作:A・スコット・バーグ
m:コリン・ファース,ジュード・ロウ,ガイ・ピアース,ドミニク・ウェスト
f :ニコール・キッドマン,ローラ・リニー

作家トマス・ウルフと編集者マックス・パーキンズの物語。
マックス・パーキンズを知らなかったが
映画に登場するフィッツジェラルドやヘミングウェイ以外にも
多数の有名作家を担当した
出版社チャールズ・スクリブナーズ・サンズの名編集者だったようだ。
パーキンズは無名のトマス・ウルフを見出し
膨大な量の原稿から二人で(・・・)処女作「天使よ故郷を見よ」を掬い上げ
彼をベストセラー作家にした。
編集者と作家が“作品”を仕上げて行く過程は
「アマデウス」ラストのモーツァルトとサリエリの共同作業のようで
文学のミューズに魅入られた者たちが創作の恍惚に酔うごとく
30万語から6万語を削り落として行ったのだ。
この二人の親密を三角関係にするのがウルフの愛人アリーンで
舞台美術家で年上の既婚婦人である彼女のキレッキレの存在感と言ったら!
ウルフの才能を最初に認めた彼女は芸術が解かる女であり
だからこそパーキンズに激しく嫉妬する。
その身も蓋もなくあからさまで痛ましい
だからいっそ潔く雄々しく哀しい在りように戦慄する。
もちろん女は敗れ
ウルフは作家として幸福に飛翔して行くのだが、
パーキンズはそれによる“蜜月の終り”に佇む。
通勤で坐る蒸気機関車の座席で次の原稿を読み始めるように。静かに。
コリン・ファースはパーキンズを
全く帽子を取らない男として演じていて
仕事中も家庭でも食事中さえ帽子を被った男の奇妙さが
溢れ出る言葉の奔流を書き流し続けるウルフの天才や
出版社に乗り込んでピストル自殺を試みるアリーンのエキセントリックに
対峙するための武器のようだ。
ウルフもパーキンズも作品を朗読するのだが
字幕を読んで理解するその内容よりも
ジュード・ロウの、コリン・ファースの、
喋る英語をじっと聴いていたい…と思わせる。
ウルフの紡ぎ出した言葉の力はホンモノなのだ。
ウルフは未読。読みたい!





「太陽のめざめ」 ’15 (仏)

監督:エマニュエル・ベルコ
m:ロッド・パラド,ブノワ・マジメル
f :カトリーヌ・ドヌーヴ,サラ・フォレスティエ

不良少年マロニーの再生への道程が描かれるのだが
エマニュエル・ベルコは
幼く痛ましくキリキリと尖ってむき出しの心臓の鼓動のような
マロニーの存在と不安を
ひたすら愚直に見つめ続ける。
幼いマロニーの保護から関わる判事がカトリーヌ・ドヌーヴなのだが、
彼女や保護司や厚生施設の教師や
彼に関わる多くの大人たちの思いに反して
マロニーは常に躓き 裏切り続ける。
何か事件が起こりそれをきっかけに事態が動き
感動的な展開を見せる…という映画ではないのだ。
マロニーのヒリヒリした未熟が間違い続け
それをじっと辛抱し続ける大人たちがいて
映画はそこに寄り添っている。
そこが正しい。
ロッド・パラドという俳優の発見!!

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