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2016年10月11日16:17

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【創作】超攻鬼装オーガイン  第四話:特機、出撃!【その2】

【創作まとめ】
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【前回】
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seen2-2

私が会議室に戻ると、すぐにプレゼンは再開された。
岡田教授がなんと言ってこようが、シャドールの対抗戦力となり得るのはオーガインのみ、この事実がある限り早々負けることはないはずよ。

「前半の説明に対して、何かご質問はございますでしょうか」

前半のプレゼンで大まかな説明は完了しているので、あとは質疑応答と決議をとるだけだ。
私の言葉に呼応するように一人の男が手を挙げる、予想通り岡田教授である。

「小鳥遊女史の説明にあったオーガインだが、これはシャドールの研究員と思われる園咲顕将が手掛けたものだということでよろしいでしょうか」
「はい」
「対シャドールの戦力をシャドール製のオーガインに任せるというのはいささか問題ではないでしょうか」

この辺は想定の範囲内の質問ね。
てっきりもっと重箱の隅をつつく様な質問をしてくると思っていただけに拍子抜けだわ。
だが想定内の質問とはいえ、簡単な質問ではない。

「質問の意図はごもっともだと思います。ですが現状では警察の装備では対抗できず、オーガインに頼るしか手はありません。また、先日警察の技術者立ち合いでオーガインの検査をさせていただきました。その際、シャドールへのデータ送信機能などのスパイ要素は見つかりませんでした」

スクリーンにはその時のデータが表示される。

「オーガイン・・・・・・石動雷馬のスパイ容疑に関しましても、彼は元々は警察の人間ですし、誘拐及び改造された経緯に関しましても被害者に当たります。また、彼をシャドールに売った人間は元捜査一課課長の山田敏郎だということも判明しています。よって彼とシャドールの繋がりは現在はありません」

オーガインの出自を考えれば疑われるのも仕方ない。
だが石動雷馬として考えれば、彼の潔白は証明できるはずよ。

「そうではない。むしろ小鳥遊女史、私は貴女とシャドールの繋がりを懸念しているのだよ」

岡田教授の発言に会場がざわつく。

「小鳥遊女史、貴女はかつて園咲顕将を師事していた。そして石動警部の話によると、彼のメンテナンス役として園崎顕将に指名されたそうじゃないか。それは今でも園咲顕将と繋がっているということじゃないのかね?」

どうやっても私が岡田教授を捨て、園咲顕将についていったという過去は消せない。
その過去がある限り、私と園咲顕将との繋がりを疑われるのも仕方ない。
だがその程度の質問も想定内よ。

「その件に関しましては、園咲顕将が学会を追放される4年前まで、私が一緒に研究をしていたということを言われているんですよね?」
「ああそうだ」
「彼が学会を追放された原因は、人体を機械兵器に改造する研究にあります。つまりその時点でオーガインの基礎理論は完成しており、そのデータを私が拝見したということです。その経験があったからこそ、彼はオーガインのメンテナンスを私に託したのではないでしょうか」
「だからと言ってキミが園崎と繋がっていない証拠にはなるまい」

岡田教授の意見はもっともである。
園咲顕将との関係をどんなに説明しても、彼との繋がりがないという証拠にはならない。
実際は今も繋がっているわけだし、そんな証拠が出てくるわけがないわけなのだが。
それでも私と園崎顕将との関係、そしてシャドールとの関係を認めるわけにはいかないわ。

「その件に関しましては自分から説明させていただきます」

私と岡田教授との会話に石動君が割って入る。

「小鳥遊桜子さんと園咲顕将、ひいてはシャドールの関係性を疑われているということですが、それはあり得ません」
「なぜそう言い切れるんだね?」
「自分はシャドールの研究所を脱出してから、この小鳥遊さんと行動を共にしていました。その際、彼女は自分を捕獲しようとするシャドールの構成員との戦闘に何度も巻き込まれています。最初は家族を誘拐され、その際に構成員と顔を合わせていましたが面識は無いようで、本気で殺されそうになっていました」

コマンダー・オベロンこと小部さんは私のことを本当に知らなかったわけだしね。
あの時は新人コマンダーで融通の利かなさに手こずったわけだけど、今となってはそれが私の疑惑を晴らしてくれそうね。
ホント何がどうなるかわからないものだわ。

「さらに先日の警察署内での戦闘でも、彼女は何度も構成員やトカゲ男に狙われ殺されそうになっていました。岡田さんがおっしゃるように、彼女がシャドールと何らかの関係にあるとうれば、もっと要領よく動いていたのではないでしょうか。少なくとも命の危険の無い範囲で動いたはずです」

この辺に関しても、私がオーガインのサポートすることをシャドール側に知られてはいけないという秘密の立場がうまく作用しているわ。
毎回出たとこ勝負だった割にはなんとかなるものね。

「それに彼女がシャドール側の人間なら、我々に協力するよりもシャドール側に手を貸し、オーガインの回収を優先したはずです。実際に彼女の手助けが無ければ、先日の戦闘は我々が敗北していた可能性が高いわけですし」
「うう・・・・・・」

石動君の言葉に便乗して、氷室さんも援護射撃をしてくれる。
二人の力説に言葉を詰まらせる岡田教授は苦虫を噛み潰したような顔をしている。

「な、ならばオーガインを解体して、我々の手で対シャドール兵器を開発すればいいのでは」
「解体ってどこまでを言っているのでしょうか?」
「解体は解体だ! ネジ一本に至るまで全て解体し、その上で我々の手でオーガインを超える兵器を造ればいいんだ! そうだ、装備技術顧問として、私が全面的に協力しよう!」

私たちとシャドールの繋がりを否定された岡田教授は怒鳴るようにまくしたてる。
仮に岡田教授が言うように、オーガインを全て解体して研究したとしても、彼にそれを超える兵器を造れるとは思えない。
園咲顕将の技術力はそれほどまでに一線を画しているのだ。

「岡田教授、キミは何を口走っているのか理解しているのかね?」

それまで一言も喋らなかった男が岡田教授を諫める。

「失礼、私は宗像俊蔵(むなかたとしぞう)、警視庁副総監をしており、今回の件の責任者だ」

眼光鋭い初老の男が立ち上がり、おそらく私のために自己紹介をしてくれる。
このプレゼンの最終権限を任せられている男である。

「岡田教授、オーガインこと石動警部はシャドールに体を改造されてはいるが、生きている人間だ。軽々しく解体するなどと言うんじゃない」
「し、失礼しました」
「代わりの兵器、もしくは装備を開発するにしても、その間にシャドールの襲撃があればどう対応するつもりなのかね?」
「それは・・・・・・現状の警察の装備でなんとか撃退し・・・・・・」
「その警察装備では対応が難しいということで、今日の提案があるんじゃないか。それともキミは通用しない装備で警察官に特攻しろと言うのかね? 仮に撃退できたとしても、一体何人の犠牲者が出るのか、そこまで考えた上での発言かね?」

宗像副総監の発するオーラに気圧された岡田教授は言葉を失う。
この人もオーガインとなった石動君を兵器としてではなく、人間として見てくれている。
それだけで嬉しく感じると同時に、警察にも鋭い審美眼をもった人物がいることに畏怖を感じずにはいられなかった。
今は頼もしい存在ではあるが、もしこの人と敵対することになると、手強い相手になることは間違いないだろう。

「小鳥遊さん、貴女の提案を受け入れるにあたって、こちらからも二つ提案がある」
「なんでしょうか」
「一つは警察の部隊ということで、シャドール関連の事件以外でも出動してもらうこともあるということ」

宗像副総監の言い分ももっともね。
特殊部隊を結成したとしても、それは警察という組織の一部隊でしかない。
当然、シャドール関連以外の事件には関わらないという我儘は通用しない。

「もう一つはオーガインの装備開発をする際、あの岡田教授にも協力を仰ぐことだ。今回は少しばかりヒートアップし過ぎたようだが、彼はこれまで警察装備の技術顧問としてよくやってくれている。装備開発に彼を外すような真似はできない」

本音を言うと、岡田教授との協力はしたくない。
何故なら絶対に難癖をつけてくるに違いないもの。
だが宗像副総監の目は有無を言わせない眼光を放っている。
ここで拒否して全てが頓挫することだけは避けなければならない。

「わかりました」

私は宗像副総監の目をじっと見据え頷く。
岡田教授の件は追々対策を考えればいいだろう。

「岡田教授もこれでいいかな?」
「・・・・・・はい」

絶対に納得してないな、アレ。

「ではここに対シャドール特殊部隊『特別強襲機動部隊』の結成を認可します」

会場からは特別強襲機動隊の結成を祝う拍手が溢れる。
こうして、私のプレゼンは幕を閉じた。


seen3-1

研究所を出た私は特別強襲機動隊・・・・・・通称『特機』の詰め所へと向かう。
オーガインのメンテナンスを担当する民間協力者ということもあり、午前中はフューチャーアイズ(シャドール)に出勤し、午後からは特機へ出向することになっている。
ただこれはあくまでも基本的な勤務形態ということで、業務内容によっては片方に重きを置くこともある。まぁケースバイケースってことね。
そういった事情もあり、特機の詰め所はフューチャーアイズから歩いて行き来できる距離にあるわけだが、まさか警察も対シャドール部隊とシャドール本部が徒歩10分の距離にあるとは思わないでしょうね。
余談ではあるがプレゼンの後、石動君は警察の指示で詰め所から徒歩5分の場所に引っ越すことになったので、今はもう私の家で寝泊まりすることはなくなっている。
これは有事の際、すぐに詰め所へ集結して出動可能にするための配慮であり、特機に配属されている警察所属の人間は全員この条件下で暮らしている。
例外として民間協力である私と岡田教授は今まで通りの自宅から通っている。
こう考えると警察関係の仕事って休日も、本当の意味での自由もなく大変よね。
そんな感じで考え事をしていると、詰め所へ到着する。
まあ特殊部隊の詰め所といっても、始動したばかりの部隊なわけで、廃工場を借りただけのみすぼらしい限りである。

「おはようございまーす」
「相変わらず遅い出勤だな」

私の挨拶に対して嫌味たっぷりに返してきたのは岡田教授である。
相変わらず私への嫌悪感を隠そうとしない態度ね。
こんな調子じゃこの先上手くやっていく自信が無いわ。

「私と同じ午後出勤のはずなのに、今日も朝から出勤されてるなんてよっぽど暇なんですね」

やられたまんまでは癪なので、私も嫌味たっぷりに返してやる。

「私は君と違って警察関係者として意識が高いんだよ。これだからただの企業人は嫌だね」
「で、その割には朝から出勤して何もやってないんですね、穀潰し教授は」
「誰が穀潰し教授だ!?」

私は無言で岡田教授を指さす。
ホントこの人、私に対して難癖をつけてくることしかしない、マジで邪魔なんですけど。
宗像副総監の指名が無ければあらゆる手段を講じてでも排除するのに。

「人に向かって指をさすんじゃない」
「早く来たならオーガインのメンテナンスデータのまとめくらいしてくれててもいいじゃないですか」
「バカを言うな、あれは君の仕事だろう。何で私が君の助手みたいな真似をしなくちゃいけないんだ」

園咲顕将が技術の粋を集めて作成されたオーガイン、岡田教授の技術ではどうせ理解できないと思うけどね。
園咲顕将の技術に関しては、科学者の間で100年先の未来技術と言われている。
これには比喩などではなく、ちゃんとした理由が存在しているわけだが、その辺は長くなるのでまたの機会に語ることにするわ。
そんな訳で岡田教授ではオーガインのシステムを把握することは出来ないわけよ。

「そんなことより、他のメンバーは会議室ですか?」
「ふん、私の知ったことか」

いやお前もこれから始めるミーティングに出席するだろ。
岡田教授は終始こんな感じで、まともに会話も出来ない状況が続いていた。
いい歳したおっさんがみっともないわ。
私は上着をハンガーにかけ、会議室へ向かう。
工場の事務所から二階へ上がると、休憩室兼会議室になっている。

「あ、桜子ちゃん今日もごくろうさま!」
「おはようございます、ボス」

私をちゃん付けで呼ぶ女性は相田つぐみ(あいだ)、若干二十八歳でこの特機の隊長を務める女性である。
所謂ボスと呼ばれる存在ね。
警察の部署内で一番偉い人をボスと呼ぶのは、太陽に向かって吠えてる時代からの決まり事らしい。
それにしてもホントどういう経歴を辿ればその年齢で特殊部隊の隊長になれるのか謎だわ。

「おはようございます。会社と特機の二足の草鞋は大変でしょうが、無理しないでくださいね」
「おはようございます、酒田さん。いつも気遣ってくださりありがとうございます」

続いて挨拶をしてくれたのは酒本俊之(さかもととしゆき)副隊長。
年齢は42歳と若干年長で、いつも温厚そうで話しやすい大人の男性ね。
細かい気配りも出来て、紳士という言葉を体現したような人である。
自分よりも若いボスを、紳士のさりげなさでいつもサポートしているわ。

「桜子師匠、おはようございます!」
「おはよう、ゆづきちゃん。今日も元気ね」

元気よく挨拶してくれたのは兎村ゆづき(とむら)整備長。
彼女は元々岡田教授の大学で機械工学を専攻していたが、卒業後に警察の技術班へ就職した経歴を持つのだけど、岡田教授の教え子とは思えないくらい素直ないい子なのよね。
当たり前の話ではあるのだけど、分からないことは分からないとハッキリ言い、積極的に学ぼうとする。
今は指揮車両(という名のただの装甲車)の整備を担当してもらっているが、オーガインのシステムにも興味津々で色々質問してきて、私を師匠と慕ってくれる。
岡田教授としては教え子のゆづきちゃんが、自分を見限った私に懐いているのも気に入らないのだろう。
私や岡田教授を含めた技術班の中では、唯一の警察所属ということもあり整備長の肩書を持っているが、実質的には一番下っ端でもある。
それでも誰かさんとは違って文句も言わずに素直に業務に当たってくれるので、とても接しやすいわ。

「オッス! 小鳥遊さんが来たってことは、そろそろミーティングを始めるんだな」
「おっす! 車田さん。待たせちゃったみたいですいませんね」

砕けた挨拶をしてきたのは車田誠一(くるまだせいいち)車両長。
呼んで字の如く指揮車両の運転を担当しており、ゆづきちゃんと二人で車両の整備も担当している。
運転の腕はピカイチで、昔はオフロードカーのレーシングドライバーをしていたらしい。
そのせいか、たまに指揮車両でドリフトをするのだが、あれは搭乗者全員が吹っ飛びそうになるので勘弁してほしいわ。

「会議を始めるには岡田教授を呼んでこないといけないわね。あ、小鳥遊さん、おはようございます」
「おはようございます、水無さん。また岡田教授がご迷惑かけてるみたいで」

岡田教授に悪態をついているのはオペレーターの水無音羽(みずなしおとは)。
彼女は指揮車両から各メンバーにボスの指示を伝える係ね。
ちなみに事務所内では事務員的な扱いを受けている。
真面目を体現したような眼鏡がトレードマークで、実際に何かと細かかったりする。

「桜子さん、おはようございます。岡田さんは別に居なくてもあまり変わらないんですけどね」
「小鳥遊さん、おはようございます。石動、それは事実かもしれないが言いすぎだろ」
「二人ともおはよう」

オーガインである石動君はともかく、シャドールと戦った貴重な人員という事で氷室さんも特機所属となった。
実際の話、この特機を設立する際、警察上層部とのパイプ役として二人には頑張ってもらったものね。
ここにきて氷室さんだけのけ者には出来ないわ。
相田つぐみ、酒本俊之、兎村ゆづき、車田誠一、水無音羽、、石動雷馬、氷室忠司、岡田純一郎、そして私こと小鳥遊桜子の九人が特機のメンバーである。
石動君と氷室さんの実動組二人を7人でサポートする形になるわけなのだが、まあ実質は一人(岡田教授)役立たずなので、八人体制と言っても過言ではない。

「ふん、そういうことは私に聴こえないように言うんだな。私がその気になれば、こんな部隊すぐに解散させられるんだ。その辺を肝に銘じておきたまえ」

私の後ろから岡田教授が悪態をつきながら現れる。
あ、一応ミーティングには出席するのね、どうせ邪魔しかしないんだろうけど。
全員が集まったことを確認し、会議が始まる。


【その3へ続く】
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