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2016年10月01日18:03

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世界報道写真展2016

2年の時を経てリニューアルオープンした東京都写真美術館で開催中の『世界報道写真展2016』に行きました。
フォト フォト
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チケットは、毎度お馴染み、新聞屋さんからの貰い物。新聞屋さん、いつもいつも有難う。

世界報道写真展2016公式HP↓
http://www.asahi.com/event/wpph/

受付位置や、ロッカーの場所や、ミュージアムショップの場所は変わったけど、展示室自体は、そんなにメチャクチャ変わった・・という印象はなかったな。ただ、綺麗!外観はそのままで、建物もそのままなのに、新しく作ったみたいに綺麗!新しい建物の匂いがした。トイレも綺麗。

世界報道写真展。去年は行けなかったのですが。見ていて辛くなる写真もあるんですよ。やはり、血まみれで死んでる子供の写真とかは、「ウッ」って思うしね。でも、同時に、ちゃんと見なくちゃ・・と思う。見て分かっておかなければと。正直、見たところで、私はどうにも出来ないよ。せいぜいが、ユニセフに募金するとかさ、そんなコトしか出来ない。戦地に行って、子供たち助けられるワケでもないし。でも、見て、知って、「何故、こんなコトが起きたのだろう?」と考えるコトって、大事なんじゃないかな?と思う。
知ってると知らないとじゃ違う気がするし、考えると考えないでは違う気がする。

日本にいたら分からない。今、地球上で、こんなにも人が死んでいるコト。戦争してるコト。色んな民族の風習や、自然の恐ろしさ。

報道写真って、不思議でね。勿論、そこにあるのは、真実なのだけど、それは、やはりあくまで、カメラマンの目を通した真実だと私は思っているの。カメラマンが、何処をどう切り取って、どう載せるか。同じ戦場だって、違うカメラマンが撮影すれば違う風景に写る。そして、報道写真と謂えども、写真・・作品としての美醜があるの。血が出た死体の写真だから、醜いってコトじゃないよ。寧ろ、そういう写真を「美しい」と感じる瞬間があるんだ。その時の自分の戸惑いな。「これを美しいと思って良いのか、どうなのか・・」という自問自答。おそらく、報道写真は、その感情も含めて、作品なんだと思ってる。

今回は2016年2月、オランダアムステルダムで選考して(いつもそうだよね?)、59回目の世界報道写真展。128ヶ国、82951点の応募の中から、賞が選ばれた。
写真を選ぶ基準としては、正確性、公正性、世界への洞察を如何に説得力を持って視覚的に表現しているか。応募者の倫理規範の遵守と撮影者自身が実際に目にした光景を記録したものかどうか?信憑性。などが考慮される。審査員団は、毎年変更されるんだそうな。

まず、「あ〜・・」って思ったのが、アブド・ドゥマニーのシリアの内戦。政府軍がドゥマ周辺地域を包囲し、供給を制限。医療サービスが著しく悪化している。頭に布を巻いた8歳くらいの少女。首が血だらけである。でも、こちらを見つめる目には力があって、虚無的ではない。「私が何をした?」と問われているようにも思えた。
もう1枚。血まみれの子供の遺体を膝に乗せ、悲しげな表情の男。子供は、8月24日の空襲で亡くなった娘だそうな。こういう写真はやるせないし、刺さる。

ポール・ハンセン トルコからギリシャのレスボス島にボートで到着する難民。夜中に小舟で来るので転覆や沈没もある。たとえ助かっても低体温症になるコトも。暗闇にボート。1人の男にピンスポットのように光が当たり、他はシルエットだ。空の星・・あれは金星かな?写真として美しいと思った。

マリオ・クルーズ セネガル。イスラム教の教義を教える全寮制学校ダーラ。5歳〜15歳までの子供がいる。宗教教育とアラビア語教育を行う機関なのだが、殆どは劣悪な環境の下、9時間に及ぶ物乞いや、児童買春の犠牲になる子供も多い。物乞いも、集めた物は、教師(マラブー)に提出せねばらなず、自分の物にはならない。こんな状況下なので、多くの子供が脱走してしまう。
足を鎖に繋がれた子供の姿。逃げないように、鎖に繋いでいるのだろう。右手にアラビア語の教科書。コーランなのかも。これも胸が痛む姿だった。町で物乞いする子供の写真もあった。最早、学校じゃないよ・・・。

セルゲイ・ポノマレフ セルビアとの国境から入国しようとする人々目がけてハンガリー警察が催涙ガスを放つ。子供を抱え必死に走る顔面血だらけの男性の姿。クロアチアとの国境付近のスロベニアの町ドボバ郊外。難民キャンプを目指して歩く人々。殉教者の行列のようにも見えた。
ギリシャに到着した難民の多くはバルカン半島の国々を経由するが、ハンガリーでは、セルビアとクロアチアの国境を相次いで封鎖したらしい。

ツァン・レイ 中国東北部に立ち込めるスモッグの雲の写真。空は青いのに、その下は霧がかかったような靄。その下に高層ビルや団地のような建物群が整然と並ぶ。一種異様な光景に見えた。高層ビルには光がさすも、きっと靄の下には、この光は届いていないだろう。近未来SFの終末の風景みたいだった・・・。

マグナス・ウェンマン 新たな居住地に向けた旅路の途中、眠れるところを見つけて睡眠をとる難民の子供たちと、内容説明にあった。
横になり、こちらを見る少女。口元がすこし、ホッとし緩やかにも見える。レバノンの難民キャンプでの子供だそうな。この子は、アレッポの自宅が夜に襲撃された。もう1枚。ボルゴジェの森の中で布団を敷いて眠る少女。バグダッドの出身のマラーという少女らしい。トルコからゴムボートで2度に渡り海を渡ろうと試み、はるばるセルビアに到着するも、ハンガリーとの国境が閉鎖されたと知る。つまり、もう、彼女は、行く場所がなくなってしまったのだろう・・・。6枚連作の子供の寝姿は、これも、写真として美しく、綺麗だと思った。そして、この子達の未来も思う。

ケビン・フレイヤー 中国山西省北部。石炭火力発電所の近隣。
三輪の車を押す男。後ろには何本もの煙突。そこからは煙が。中国の全死亡者数の17%は大気汚染に起因しているらしい。中国は、世界の二酸化炭素の三分の一を排出している。

ロベルト・シュミット ネパールを襲ったマグニチュード7.8の地震により引き起こされた巨大な雪崩。救助のヘリコプターが到着したのは、雪崩発生から18時間後。写真は一面の雪煙。雪崩はエベレストのベースキャンプをなぎ倒し、轟音を上げて落下する岩と雪とデブリ(氷塊)の壁となる。この雪煙の写真、よく撮ったな・・・って思った。

ロハン・ケリー この写真、私、凄く好きだった。シドニーのボンダイビーチに接近する巨大なシェルフ雲。ビーチに寝転がっている人もいる。ぱっと見リゾート写真のようだが、その上に、青灰の空があり、奥に行くほどまっ黒くなる。緑の海とのコントラストも凄い。この雲の感じ何処かで・・・「あ〜!天地創造の絵画の雲ってこんな感じだ!」と。この時。突風、ゴルフボール大の雹も観測されたらしい。

セルジオ・タピロ 飛び散る岩、稲妻、溶岩流を伴って噴火するコリマ山。コリマ山はメキシコで最も活発な火山の一つ。火山噴火の稲妻は、マグマ上昇流に含まれる、岩の破片、灰、氷片が衝突し、帯電して稲妻が起きるらしい。噴火したコリマ山。赤い溶岩、黒煙。そこから突如出る稲妻。何か、綺麗で緊張感があり、CGみたい・・・って思ってしまった。

ジョン・J・キム これも写真として好きだった作品。アメリカ。警官による人種差別的暴力に対するデモ行進で、巡査部長を睨みつける少年の写真。17歳のラクアン・マクドナルドが警官により殺害された。彼はナイフ一本持っていただけだが、警官は命の危機を感じたと主張。16発もの発砲を行い、射殺した。この事件を受け、警察における黒人への過度な暴力が問題になり、デモが多く行われる。睨み合う黒人の少年と警官。でも、警官の方も黒人なのが、何とも言えない気分になる。後ろには摩天楼。モノクロで写真として恰好良い!と思ってしまった。
黒人の犯罪も多いのは事実だろうが、白人・黒人の人種差別問題の根の深さも思わせる。

ダニエル・オチョア・デ・オルサ この写真も好きだった。綺麗なの。スペイン・マドリード郊外で行われるラス・マヤの祭典。ラス・マヤの祭典は異教徒の儀式に由来するらしい。花冠をつけ、白い衣装を着た少女たちの組写真。周りには花々。色彩がカラフルで、象徴主義の絵みたい・・とも思った。少女たちは、神妙な面持ち。左の写真の少女は白ではなく、花柄のブラウスに黒いスカートだったのは何故だろう?花冠は、紫色の花冠をしていた。

小原一真 チェルノブイリ原子力発電所事故の5か月後、南に100キロ離れたキエフでマリヤという女の子が生まれた。彼女は放射線障害の一つである慢性甲状腺炎に苦しめられながら成長した。2015年4月、小原氏はプリピャチで彼のアシスタントが見つけた1990年代のカラーフィルムを使って撮影を開始した・・と内容解説にあった。
マリヤの横顔。ぼんやりとソフトフォーカスがかかったようなモノクロの写真。ザックリとした砂目地の写真。幻想的に見え、美しいと思った。人物の集合写真は人物像が皆、亡霊っぽく写っている。1990年以前のカラーフィルムネガを現像する為の適切な化学薬品は、最早入手できないので、試行錯誤しながら現像方法を考案したらしい。
前述したように、写真自体は幻想的で美しく、しかし、マリヤや、プリピャチに住んでいた人々(プリチャピは、チェルノブイリ事故で閉鎖され、無人の町に)を思うと、コレを「綺麗」と言って良いのか一瞬戸惑う。でも、その戸惑いも含めての作品なのだろう・・・と思う。

クリスチャン・ポプスト セネガル相撲の様子を撮ったもの。セネガル相撲の起源は戦士階級が行っていた戦いの準備らしい。力士は運気を上げたり不運を払う為、様々な儀式を行う。鳩を手に乗せる、スーパースターのオマール・サコー。幸運を掴む為に、鳩を放つんだそうな。(日本の仏教行事関連の亀逃がしや、小鳥逃がしみたい) 沢山の壺が並ぶ中に男の姿。運を呼び込むべく、力士の家の祭壇で捧げものの準備をしている姿らしい。街頭テレビに群がる人々。皆、試合を見ている。相撲をとる力士。ちょっとプロレスっぽいかな?とも思った。こういう写真は楽しいね。民族や風習が分かるし。

ウォーレン・リチャードソン 今回の世界報道写真展の大賞がこの写真。セルビアとハンガリーの国境を越えようとするシリア難民の男性と子供。国境の有刺鉄線付きフェンスが出来上がる前に、ハンガリー側へ渡ろうとする姿。有刺鉄線の隙間から赤ちゃんを渡している男。バレないように、フラッシュ撮影なしで写真は撮られた。ハンガリーは難民への態度を硬化させ、公式ルート以外の越境を阻止すべく、7月にセルビア国境沿いに高さ4m.のフェンス建設を始めた。難民は14日のフェンス完成前に通り抜ける道を見つけようとしていた。国境警察にコショウスプレーで攻撃されながらも探し続けたそうな。男の必死な感じが写真からも伝わる。赤ちゃんを受け取ってるのは、先にハンガリー側に行けた仲間なのかな?

そういえば、折角セルビアまで来たのに、国境閉鎖されててハンガリーに行けず、路頭に迷って森の中に寝てた子供の写真や、殉教者の列のようになった写真がさっきもあったね。

これさ。ハンガリー側の気持ちも分からないではないじゃん。心情的には「通してやれよ」とも思うも、沢山難民が押し寄せて来て「もう、キャパオーバーです!」ってなるわけで。でも、難民側は、命かかってるから必死じゃん。行けなかったら死ぬかもしれない。もう、これがやるせなくてね・・・。せめて、赤ちゃんだけでも、どうにかならないものか・・・。

チェン・ジー 中国東北部天津港の運送会社コンテナ置き場で起きた爆発の跡地に残る巨大な穴の写真。これ、凄く不思議な写真に見えた。倉庫は危険な化学物質の保管先として登録されていたが、公共建造物は少なくとも1キロ以上離れた場所に建てるよう定めた安全基準は守られていなかった(ようは、基準違反)。1万7000人の住民と8000台の車両が被害を受け、170人が死亡。これ、空撮なのかな?コンテナ置き場の様子を上から撮影した物なんだ。中央にブラックホールの如く、ぽっかりあいた黒い穴。そのまわりに瓦礫と化したコンテナの数々と建物。茶、緑のコンテナもあり、パッと見、何か抽象画みたいなんだ。
中国は、こういう事故多いよね・・・。

ディビッド・グッテンフェルダー 北朝鮮。金正日の喪服期間に開催された、本来、金の70歳の誕生日を祝うはずだったコンサートでのビデオ上映の様子。号泣する男。オーケストラ演奏の様子。
平壌の様子。これが北朝鮮だと思うからかな?建物が何か冷たく見えたんだ。
マスゲームをする人々の姿。敬礼する子供を描く為に、色のついたプラカードを持つ人々。
平壌の交差点に立つ交通巡査。車が少ないの!周りは雪景色。人も少なくて、ちょっと廃墟のように見えてしまった。
公園で踊る人々。子供も楽しそうに踊っている。
彼は、北朝鮮を長期取材しているらしい。北朝鮮は、メディアを厳しく規制していて、海外報道機関は殆ど取材を制限されてきたが、ディビッド氏は、取材が認められており、2008年〜2015年まで、約40回、北朝鮮を訪問しているそうな。

こんな感じでした。動物の写真などもあるので、心が重くなったら、それを見ると良いんじゃなかろか?カメレオンの写真の決定的瞬間とか凄かったし。スポーツの写真もあるし。

あと、ショートフィルムの上映もあった。朝日新聞のカメラマンが撮影してきたやつ。熊本地震、シリアから(ドイツを目指す家族)、チェルノブイリ30年、60秒動画で振り返る2015年などがあった。

鑑賞者の顔をふっと見たら、皆一様に、辛そうな表情をしていたり、神妙な顔をしていたり・・・。私もそんな顔をして観ていたのかな?

お土産は、その日、マリア・テレサの映画もやってたらしく、その関係でメダイヨを売ってて、ピンバッチのメダイヨを買ってしまった。鳩の形のやつ。

世界報道写真展は、10月23日までやっています。
報道写真に興味がある方、世界で今何が起きているか知りたい方、写真に興味のある人も、行くと良いかな・・と思います。
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