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2016年03月20日23:05

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今週の科学ニュース-3月20日

　皆様、こんばんは。巷はだいぶ暖かくなってきました。まだ寒い日もあるとのことですので、皆様もお気をつけください。暑さ寒さも彼岸までと言う言葉がありますから、そろそろ寒くなることもなくなるはずですが。

・ハチにしか見えない新種のガ　沖縄で発見(九州大学他)
　九州大学の大学院の1年生の学生が沖縄で新種の蛾(スカシバガの一種)を発見し、論文の形で発表しました。その姿形たるや、素人が見れば、間違いなく蜂だと思うに違いなく、実に見事な擬態です。おそらく、以前より目撃されていたが見逃されていたものと思われます。発見者の屋冝氏は、飛び方が違うことから蜂ではないことを看破したとのことです。確かに、アシナガバチは足をだらりと垂らしてふらふらと上下に揺れながら飛ぶ(私も見たことがあります)のですが、この新種のスカシバガは足を後ろに伸ばしてまっすぐ飛んでいたそうです。しかし、よく気がついたものです。おめでとうと申し上げたいと思います。
九州大学のプレスリリースはこちら。
ZooKeys誌の該当論文はこちら。

・ティラノサウルス耳進化で大型化？　聴覚高まり狩り上達(英エジンバラ大学)
　Tyrannosaurus Rexは、発掘された範囲では最大級の肉食恐竜で、恐竜が登場するSFでは必ずと言って良いほど登場する恐竜界のスーパースターです。しかし、白亜紀初期の小型の肉食恐竜から白亜紀末期に全盛を迎えたティラノサウルスが巨大化した過程はわかっていませんでした。今回は、この小型肉食恐竜とティラノサウルスの間にあたる種類の肉食恐竜の化石が発掘されたもので、これを調べたところ、脳と聴覚がその前の先祖より発達していたことがわかったとのことです。研究者たちは、このことから、まず聴覚などの感覚器が発達して、狩りの効率が良くなり、その結果、体が巨大化したという説を提唱しています。また、それにつれて骨の密度も低下していったとのことです。これは、巨大化しても体重はそれほど増えないことを意味していますが、強度の低下も招いたはずで、意外とティラノサウルスはどつきあいになったら打たれ弱かったかもしれません。
University of EdinburghのNewsHPはこちら。
米科学アカデミー紀要の該当論文のAbstractはこちら。

・記憶戻す実験成功…アルツハイマー病のマウスで(理化学研究所)
　理化学研究所は、総合的に科学の研究を行う研究所でもありますが、プレスリリースの形で発表される理化学研究所の研究成果を見ますと、その半分は医学生物学関連で有り、さらに医学生物学関連の研究成果のほとんどがノーベル賞医学生理学賞を受賞した利根川進先生の率いる脳科学総合研究センターが発信しているものです。利根川先生の、「結果を出し続ける」研究管理手腕には目を見張るものがあります。(理化学研究所はSTAP細胞の件で世紀の大失敗をしているものまた事実ではありますが。)今回は、アルツハイマー症のネズミを用いて、忘れていた記憶を取り戻させることに成功させています。このことは、「記憶が戻った」ことも重要ですが、一種の痴呆症のように見えるアルツハイマー症の患者では、記憶は脳内に保存されており、記憶を取り出すことができなくなっているだけである可能性があることを示したことの方が重要な知見となっています。つまり、アルツハイマー症を大きく改善することができる方法がどこかにある可能性があることを示している結果となっています。まだマウスでの結果だけですがね。
理化学研究所のプレスリリースはこちらとこちら。
Nature誌の該当論文のAbstractはこちら。

・冥王星に「氷火山」存在した　ＮＡＳＡ探査機データ解析(NASA)
　NASAは宇宙探査機New Horizonsが昨年冥王星に接近したときに地球に送ってきたデータを5本の論文にまとめてScience誌で発表しました。朝日新聞はそのうちの地形に関することにしか関心を示さなかったのですが、5本の論文は、それぞれ、冥王星と衛星カロンの地形について、冥王星の地表を染めている物質の組成について、冥王星の大気について、冥王星の四つの小さな衛星(Styx,Nix,Kerberos,Hydra)について、冥王星の周りの環境(太陽風や宇宙塵など)について報告しています。要点はNASAのHPにも掲載されていますが、なかなか興味深いものがあります。
NASAの該当HPはこちら。
Science誌の該当号の目次(真ん中よりやや下のResearch Articlesを参照)

・謎の古代生物タリーモンスターの正体がついに判明(米エール大学他)
　私自身は、タリーモンスターなる古代生物を知らなかったのですが、3億年前(石炭紀)の川を泳いでいたと考えられる生物で、学名は、Tullimonstrum gregariumです。どうも、石炭紀に生きていただけ合って、炭鉱では結構見つかる化石らしく、ナショジオの記事によると、数千個の化石が全世界で発掘されているようです。にもかかわらず、実はこのタリーモンスターの分類は確たるものがなく、軟体動物か節足動物と思われていたようです。エール大学などの研究チームは、これらのタリーモンスターの化石を詳細に調べた結果、軟体動物なんてとんでもなく、(原始的特徴を持つ現生動物の)ヤツメウナギに近い脊椎動物であることがわかったと発表しました。想像図を見ても、どの辺が脊椎動物？という感じもあると思います。(当然ですが、)タリーモンスターの生態についてはまだほとんどわかっていないので、その解明が今後の課題となるそうです。
Yale UniversityのNewsHPはこちら。
Nature誌の該当論文のAbstractはこちら。

　では、今週はこの辺で。

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